2023 Winter

解説の”まる”さん執筆レポート【GRAND FINALS直前】RAGE Shadowverse 2023 Autumn

新カードパックのリリース2日前という、まさに環境の大トリとして開催される今回のGRAND FINALS。
先日行われたRAGE SHADOWVERSE PRO TOUR(以下RSPT)では、プロ選手たちの熾烈な戦いの中、今環境のローテーションBO5というフォーマットの難しさも垣間見えました。
それを踏まえ、どのようなデッキ・プレイを携えて当日に臨むのか。ファイナリストたちの動静にも注目が集まります。

さて、RSPT本戦では主に財宝ロイヤル・マガチヨエルフ・結晶ビショップの3デッキが猛威をふるいました。
来たるGRAND FINALSでも環境の中心となることが予想されるデッキたちですが、その扱いは難しく、漫然と眺めていては勝負の潮目を見逃してしまうこともしばしば。
選手たちの激闘を余すことなく楽しむためにも、これら3デッキの特徴やプレイのポイントについて、一緒に確認していきましょう。

財宝ロイヤル

RSPT 3rd Season 本戦出場選手が満場一致で採用した財宝ロイヤルは、アディショナルカード《大海の征服者・ロジャー》の登場によって、その攻撃性を大きく引き上げたデッキです。
《空絶の簒奪・オクトリス》がいたころとは異なる使用感の今環境、デッキの強みはどこにあるのでしょうか。

RSPT 3rd Season 本戦 3位:レバンガ☆SAPPORO rikka選手の使用デッキ

継続的なコストの踏み倒し・バーンダメージの捻出をアシストしてくれる《大海の征服者・ロジャー》のリーダー付与効果は、 《空絶の残光》を失い火力不足に悩まされていた財宝ロイヤルにとっては、欠けていたピースを埋めてくれるものでした。
それまでは《出航の咎人・バルバロス》+《戦慄の海賊旗》の10点以外では手軽に出せる打点がなく、《潮流の砲手》によるOTKを目指すにしても概ね8ターン目での達成といったスピード感。
ここに《大海の征服者・ロジャー》が加わったことで、中盤で4 ~ 6 点のバーンダメージを与えつつ、7ターン目に《出航の咎人・バルバロス》+《潮流の砲手》で17点を見込む分割リーサルが可能となりました。
このデッキにおける1コストの圧縮は、そのまま《戦慄の海賊旗》のダメージにつながるため、リーサルターンの瞬間火力だけ切り取っても、リーダー付与効果の有無で5点はダメージ量が変わってきます。
こうしたバーストダメージの確かな威力からはこのデッキのコンボ色を見て取れますが、その実、序盤からしっかりとフォロワーを展開して戦うミッドレンジのあり方も損なわれていません。
「OTKの再現性」という観点でいえばほかの純コンボデッキに劣りますが、「序盤から積極的に相手の体力にプレッシャーをかけながら」後半戦にはOTKに迫るバーストダメージのコンボを構えられる点がこのデッキの魅力で、序中盤の立ち回りにおいて他のコンボデッキと差別化できているといえるでしょう。


GRAND FINALSでも活躍が見込まれる財宝ロイヤルですが、見どころとしては優先順位に関するバランス感覚が挙げられそうです。
このデッキにおいてはリーサルに向けて、「キーカードを探すためのドロー」「財宝カードを得るためのフォロワープレイ」「実際に財宝カードをプレイまたは融合する」「可能なら《戦慄の海賊旗》を手札に抱え込む」といったいくつかのタスクが存在しますが、すべてを満足に達成するのはコスト的にはかなりシビアだといえます。
というのも、今環境の財宝ロイヤルでは《大海の征服者・ロジャー》の効果上、積極的に財宝カードをプレイしたいという背景があり、融合する場合に比べてコストを消費しやすい傾向にあります。
加えてリーサルの目標も 6 ~ 7 ターンと早いゲーム展開を求められることが多いため、ゲームを通して自由に使えるPPはその分少なくなります。
例えば「《海原の斥候》での大量ドロー」「《大海の征服者・ロジャー》の効果ダメージを狙った財宝カードの連続プレイ」といったアクションは財宝ロイヤルとしてはごく当たり前のものですが、そこにコストを割きすぎてしまえば財宝カードの供給が間に合わず、カウント達成が結果的に遅れることもあるでしょう。
反対に、財宝カードの回収にばかり明け暮れていては実際にプレイするコストが不足してバーンダメージが不足したり、リーサルパーツを探しに行く時間を持てない可能性があったりします。
実戦ではここに相手のリーサルをケアする動きなども加わるわけで、やるべきことに対してPPの余裕はほとんどありません。
その意味ではゲームレンジが短いからこそ、限られたコストの中でいま最も優先順位が高いタスクが何なのかを見極める力が試されるデッキといえるでしょう。
観戦にあたっては上にあげたような様々なタスクの中から、選手が今目指しているのはどのタスクの達成なのかを意識してみると、効率的なプレイがより際立って見えてくるかもしれません。

マガチヨエルフ

直近のRSPTではトップ3選手全員が起用していたマガチヨエルフ。アディショナルカード《新芽の風・メイ》によって手札の枚数を保ちながら盤面処理を行うことが可能となり、完成にこぎつけたデッキタイプです。一方で、プロ選手たちも口を揃えて言うのがその難しさ。これまでの中でも屈指の思考量を求められるこのデッキを使いこなすには、どのような点に注意すべきでしょうか。

RSPT 3rd Season 本戦優勝:よしもとゲーミング だーよね選手の使用デッキ

まず、マガチヨエルフの最大の武器はリーサルの再現度と言っていいでしょう。
7ターン目には安定して《剪定の咎人・マガチヨ》による疾走付与が実現します。また、豊富なバウンスにより再利用が容易な《若芽の組員》を介したサーチでは、引き込むフォロワーの全てが最終的な打点となります。
結果として7ターン目までには必要な打点が手元に揃っている、あるいは若干の不足があったとしても《若芽の組員》でサーチしながらリーサルを取る、《円環の看守》から《豪風の襲来》を入手してダメージアップを図るなど、OTK達成のための手段には事欠きません。
《反転する翼》を活用すれば最速6ターン目のOTKも可能とあって、OTK特化のコンボデッキとして素晴らしい完成度を誇ります。

難点をあげるとすれば、シンプルな疾走によるリーサルのため、相手の守護に手を焼きやすいことでしょう。
複数枚の守護を突破してなお20を超える打点を叩き込むには、「盤面を使わずに相手の守護フォロワーを処理する」「《豪風の襲来》で合計打点そのものを引き上げる」のいずれかが求められます。
この守護突破をどのようにデザインするかが、マガチヨエルフの難しさの一端を担っていると言えるでしょう。
守護フォロワーを捌けるカードとしては《新芽の風・メイ》や《根深き手の異形》、《反転する翼》などがあがりますが、相手の守護のサイズ・枚数によって有効なカードや要求される手数は変わってきます。
一直線にリーサルを目指すだけではなく、4プレイを達成したターン数のカウントを重ねることで相手から守護フォロワーを引きずり出したうえで、盤面ロック気味に時間を稼ぐなどの搦手が真価を発揮する場面も多々存在します。
コンボデッキというとパーツを揃えることに注目がいきがちで、自らの手札・山札との戦いに重きがおかれやすい傾向にありますが、マガチヨエルフではコンボパーツの回収が安定しやすいからこそ、よりリーサルを通すための駆け引きの比重が大きくなっています。
ファイナリスト達が《新芽の風・メイ》をはじめとした処理札を温存する動きを見せた時、「リーサルの時に○○までなら守護を突破できるように準備し始めたな」とその狙いを意識できると、より奥行きのある試合観戦となるかもしれません。

結晶ビショップ

主要デッキの中では唯一アディショナルカードの影響を受けなかった結晶ビショップ。
デッキリストとしては40枚据え置きというレベルにまで集約されつつありますが、環境が変わった今、引き続き高いシェアを誇る理由はどこにあるのでしょうか。

RSPT 3rd Season 本戦準優勝:レバンガ☆SAPPORO Era53選手の使用デッキ

まずはアディショナルカード実装前後の環境の変化をおさらいしておきましょう。
以前は結晶ビショップを除けば、ゴーストネクロマンサーを筆頭に、進化ネメシスやマナリアウィッチ、連携ロイヤルの活躍が見られた環境でした。
速攻を是としたゴーストネクロマンサー以外は7ターン目のリーサルを過信できないデッキ群となっており、その中で7ターン目リーサルの再現度が比較的高い結晶ビショップは立ち位置がよかったと言えるでしょう。

アディショナルカードの実装以降、財宝ロイヤル・マガチヨエルフといった7ターン目のリーサルを標榜するデッキが数を増やしたことで、この優位性は小さくなっています。
しかし一方で、これらのデッキに押されてゴーストネクロマンサーのような攻撃的なデッキ、《選別の教員・ヴァイス》のような強力なメタカードを搭載した連携ロイヤルなどがシェアを落とし、全体としてはコンボ色の強い環境へと変化しています。
この変化は序盤の防御に不安を抱える結晶ビショップにとってはありがたいことで、さらには財宝ロイヤルもマガチヨエルフも疾走によるリーサルを目指すことから、複数面の守護を容易に展開できる結晶ビショップとしては与し易しと捉え、その勢力を維持する運びとなりました。
このように、結果的にワンシーズン通して絶大な人気を誇った結晶ビショップですが、デッキパワーの高さが信頼されたアディショナルカード実装前に対して、直近ではメタゲームに後押しされて立ち位置を保っている側面があります。
BO5という持ち込みの選択肢が広い舞台において、ゴーストネクロマンサーやフェアリーエルフ等の攻撃性の高いデッキとかち合う可能性まで考慮すると、選手によって持ち込みが分かれるかもしれないデッキだと言えそうです。

プレイ面においては、やはりマガチヨエルフとのマッチアップについて特筆すべきでしょう。
一見すると豊富な守護によって大幅に有利を取れそうですが、自らも「疾走」の二文字に首を絞められます。
《シャインクリスタリア・リリィ》による強力なデバフは《神託の旅立ち・ジャンヌ》と《廃滅のスカルフェイン》の共演から繰り出される26点バーストさえ18点まで軽減してくる上、バウンスで再利用することによって、結晶ビショップ側の盤面を実質ロックしてマガチヨエルフがロングゲームの主導権を握れることは、直近のRSPTでも記憶に新しいです。
これは守護というテキストと疾走というテキストがほぼセットになってしまう結晶ビショップ固有のジレンマで、相手のリーサルを防ぐために守護フォロワーを展開すると、もれなく《シャインクリスタリア・リリィ》の餌食となってしまう状況にあります。
早期に《廃滅のスカルフェイン》を得られれば疾走に頼らないダメージを見込むことができますが、到着が送れた際には《有翼の光輝・ガルラ》のような疾走を持たないフォロワーでプレッシャーをかけたり、佳境で盤面ロックを回避しながら守護を張っていける《神域の狼》・《エメラルドメイデン》を結晶ではなく本体として使用していくなど、他のマッチアップとは大きく異なるプレイが求められます。
今回のGRAND FINALSに結晶ビショップを持ち込むにあたっては必修といっていいこのマッチアップ。ファイナリスト達がどのようにプレイを仕上げてくるのか注目です。

予選時とは全くの別環境で問われる対応力

ここまで主だった勢力となりそうな3つのデッキを見てきましたが、今回意識したいのはそのうちの2つがアディショナルカード実装以降に登場したデッキであり、かつ非常にプレイ難度が高いデッキでもある点です。
アディショナルカード実装前の環境で見事厳しい予選を勝ち抜いたファイナリスト達ですが、GRAND FINALSで待ち受けているのは完全なる別環境と言っていいでしょう。
同時に、コンボ色が強くなってきた今環境では一周まわって再びゴーストネクロマンサー等の攻撃的なデッキにも目が向けられつつありますし、回復ビショップを意識した進化ネメシスの再台頭など、主要3デッキ以外でも環境の機微が見逃せません。
ともに予選を駆け抜けたデッキを続投するのか、はたまた新デッキを徹底して深掘ってくるのか。
どちらを選ぶにせよ、ファイナリスト達にとってアディショナルカードの実装以降、限られた時間の中で研究しなくてはならないことが急増したのは間違いないでしょう。

この激動の環境に適応し、見るものを沸かせてくれる新王者はいったい誰なのか。その頂を争うGRAND FINALSは9/24(日) 12:00より配信スタートです!

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