2024 Summer

解説の”まる”さん執筆レポート【予選大会開幕直前】RAGE Shadowverse 2022 Winter

今年のRAGEもいよいよ最後。
今回は再び舞台をオンラインに移しての戦いとなります。
オフラインならではの熱気・緊張感といったものから縁遠くなるのは寂しくもありますが、昨今の情勢や地理的条件から、オフライン大会への参加が困難なプレイヤーが加わり、まさに全国から猛者が集う激戦が予想されます。

今回は新パックのリリースから1次予選まで約1ヵ月の時間があり、比較的環境が固まった状態での開催となります。
現環境において明確に人気の高いデッキが存在する一方で、BO3ということで2デッキを選択する際に様々な組み合わせが考えられるのも事実です。
まずは予選に先立って今環境の勢力図を整理してみましょう。

CDB環境の特徴

これまでのShadowverseの中でも屈指のパワーカードたちを擁する「Renascent Chronicles / リナセント・クロニクル」がローテーション落ちしたことで、長く地続きだった競技環境が大きく様変わりしました。その主な変化は次の通りです。

帰ってきた地上戦?

《スケルトンレイダー》を筆頭に、相手のフォロワーを的にして効果を発揮するカードが一線を退いたことで、中盤以降もしっかりと盤面にフォロワーを展開しながら戦うデッキが増えています。
ゲーム後半は強力な全体除去カードが飛び交うため盤面だけで押し切ることは難しく、まだまだ疾走・バーンダメージ等飛び道具の必要性も高いですが、フォロワーをプレイすることのリスクが小さくなったことで、ゲーム後半の展開がより多彩になっています。

偏りのある回復

前環境では非常に多くのデッキで採用が見られた
《ジャーニーゴブリン》《干絶の飢餓・ギルネリーゼ》《天使の恩寵》
といったニュートラルの強力な回復カード群。

今環境では採用カードとの噛み合いの都合上、一部のデッキ以外からは姿を消しており、全体としては回復力が落ちた格好になります。
一方でフラム=グラスネクロマンサーに代表された大規模なバーストダメージも鳴りを潜め、決着の手段を分割リーサルに頼るデッキが増えてきた影響で、回復の価値はむしろ増していると言えるでしょう。
回復手段に富んだデッキも盤面への対応力や攻撃性能などどこかしら課題を抱えているため、一概に回復力の高いデッキが優秀といったことは全くありませんが、「回復カードを探す」「相手の回復までケアした分割リーサルを仕込む」など回復に関係するアクションが勝敗に深くかかわりやすい環境であることは意識しておきたいポイントです。

上記を踏まえ、今環境ではどんなデッキが活躍しているのか見ていきましょう。

アーティファクトネメシス

RAGE SHADOWVERSE PRO TOUR 4th Season 本戦4位 G×G所属 拓海選手のアーティファクトネメシス

今環境攻略の鍵を握るのはやはりこのデッキでしょう。
《人造の代弁者・ヴァーミディア》を手に入れ、一層の爆発力を手に入れたアーティファクトネメシスです。

長所
  • 《デウスエクスマキナ》着地後の可動域。盤面の展開・除去はもちろん、分割リーサルからOTK(ワンターンキル)まで、幅広い攻撃が可能。
  • 初動のアーティファクト展開による盤面奪取。序盤が鈍いデッキに対しては序盤戦で無視できないリードを取ることができる。
 短所
  • 《廻り出す運命》を引けていない際の出力低下が著しい。特にリソース面が深刻で、手札の選択肢が一気に狭まる。
  • 《デウスエクスマキナ》の着地タイミングでは、基本的に1面処理に留まるため、盤面を先んじて取られていると、体力を大きく失うリスクとなる。

今シーズンの競技環境に参戦するなら、避けては通れないアーティファクトネメシス。
そのインパクトは非常に大きく、仮に自身は使用しないと判断したとしても、《廻り出す運命》との向き合い方を考えるところからBO3のデッキ選択が始まります。
最速《デウスエクスマキナ》に対してもある程度対抗できるようなデッキを模索するのか、あるいは《デウスエクスマキナ》をプレイできていないアーティファクトネメシスに対して、堅実に勝ち切れるような構成とするのか。
他のデッキとの相性を考慮しながら「対アーティファクトネメシスで拾うべきパターン」を整理していく必要があるでしょう。

当然ながら、アーティファクトネメシスを使う場合も、実戦の前段階で考えることは多いです。例えば手札交換の基準。《廻り出す運命》一点狙いの手札交換を行った際、4ターン目までに《廻り出す運命》を引ける確率は平均で約60%です。最初に他のカードを1枚キープするごとに、約4%ずつドロー確率は低下します。つまり、キープするカードにはこの「失われる4%」に見合う働きが求められると言えるでしょう。それが「盤面で水をあけられてしまい、仮に引けても《デウスエクスマキナ》の安着が厳しい展開」を回避するようなものなのか、あるいは「《廻り出す運命》を引けなくとも押し切れるゲーム展開を作る」ためのものなのかは、相対するデッキによっても異なりますが、キーカードが明確だからこそ、手札交換の判断には一層の慎重さが求められます。

手札交換時のキープ枚数と、4ターン目までに《廻り出す運命》を引ける確率の関係(カードの効果によるドローは考慮しない)。
《勇気の少年・カシム》はプレイ時の手札交換により、キープによって失った4%をほぼ補填できるため、
初動を固定化してしまうリスクや、アーティファクトの種類を稼げないリスクと相談してキープの可否を決めていきたい。

また《デウスエクスマキナ》の着地後は、できることの増加に伴って膨大な選択肢を捌いていく宿命にあります。
「手札を流す / 流さない」「共鳴状態の調整手順」
「盤面処理にかかる手数」「《生命の量産》によるコピー先」
など、挙げればきりがありません。
ひとつひとつの判断はそこまで難しくなくとも、これらをターン中のドローやお互いの体力変化を加味しつつ並列でこなし続けるのは相応の負担で、ミスの温床とも言い換えられます。
RAGEという長丁場の舞台で最善手を取り続けたければ、機械的な打点パターンを暗記してしまう、相手のターン中に次のターンの動き出しやトップ受けを掘り下げておく癖をつける、など今のうちから準備できることも多いでしょう。

結晶ビショップ

RAGE SHADOWVERSE PRO TOUR 4th Season 本戦3位 よしもとゲーミング所属 ふぇぐ選手の結晶ビショップ

アーティファクトネメシスに迫る人気を見せているのが、アニメ「シャドウバースF」からの刺客、結晶ビショップです。

長所
  • 《ダイヤモンドマスター》《廃滅のスカルフェイン》を起点とする、中盤以降の群を抜いた盤面奪取力。
  • 豊富なドローソースと多彩な結晶カードによる高い対応力。
  • 攻撃面では分割リーサルからOTKまで幅広いパターンを保持。
短所
  • 後半戦ではコストの都合上結晶カードのプレイが難しく、結晶回数を稼ぐうえでの実質的な時間制限が存在する。
  • 序盤は盤面にほとんどフォロワーを出さないため、体力・盤面を失った状況からの挽回を前提とする必要がある。

盤面での戦いが以前より重要度を増している今環境、《ダイヤモンドマスター》と《ジュエルシュライン》の組み合わせにより、相手の体力を詰めながら盤面優位を取れる攻防一体のコンセプトが高い評価を得ている結晶ビショップ。
ドローや回復手段も豊富なため対応力が高く、明確に苦手とするマッチアップを持たない点もその人気の秘訣といえるでしょう。

問題があるとすれば、そのコンボ色の強さ。
デッキのほとんどのカードが他のカードとの組み合わせを前提に採用されているため、単体では十分なパフォーマンスを発揮することができません。
強い行動を取ろうとするたびに2~4枚のカードを同時に要求されるため、このデッキのドロー力をもってしても、安定してパーツを供給し続けることは困難です。
パーツの温存と投入のオンオフが激しく、ぎりぎり安全な体力水準や《ダイヤモンドマスター》なしでも捌ける盤面の見極め等、相手のデッキに対しても深い理解が必要となります。

今環境から追加となった新機軸のデッキのため、まだまだ研究が進んでいるデッキで、手札交換や序盤の結晶カードの優先順位にも個人差がある状況です。
出力が上がる条件として
「結晶5回」と「《廃滅のスカルフェイン》のアクセラレート4回」
がありますが、マッチアップごとにそれぞれいつまでに達成したい条件なのか、といった大局観もまだ共通見解は出来上がっていないと言っていいでしょう。
このように使い手の理解・判断を問う領域が多く残っている反面、トップの《廃滅のスカルフェイン》を受けるため場のカウントダウンを揃えておく、あるいは《カースメイデン》を利用して強引に揃える等のテクニックは、いわばリリース当初から連なるカウントダウンビショップの系譜です。
ビショップの基礎力を土台としつつ、新たなギミックに振り回されることなく上手く活用できるか。結晶ビショップの使用に当たっては、そんな温故知新のあり方を試されることでしょう。

連携ロイヤル

RAGE SHADOWVERSE PRO TOUR 4th Season 本戦準優勝 レバンガ☆SAPPORO所属 Ryu選手の連携ロイヤル

《忠義の剣士・エリカ》と《撲滅の兵団長》の2枚看板を失った連携ロイヤルですが、環境から安定したOTKが可能なデッキが減少したことを受け、回復とダメージカットを主軸とした防御的なデッキとして、装いを新たにしています。

長所
  • 1枚のカードで強力な盤面を形成できるため、連続して盤面を押し付けていくことができる。
  • 回復・除去・ダメージカットと防御的な効果を担うカードが多数採用されており、一度体力を削られてもリカバリーが利くため、特に分割リーサルに強い。
短所
  • 防御的なカードに寄せた弊害として連携を稼ぐ速度が遅く、序中盤の選択肢が狭い。
  • 手札から直接打点を出す手段に乏しく、能動的にリーサルを取る力が弱い。

冒頭で触れた通り、現在は盤面にフォロワーを並べることのデメリットが大幅に減じており、連携ロイヤルとしては比較的のびのびとフォロワーを展開できる状況です。
ゲーム後半はアーティファクトネメシスや結晶ビショップに盤面を一掃されることも少なくありませんが、持ち前の展開力で除去カードを「吐き出させる」ような我慢比べを狙うこともあるでしょう。
5~7ターン目にかけての《銃士の誓い》《モノクロのエンドゲーム》《ビクトリーブレイダー》の流れは健在で、そこまでドローの多くないこのデッキにとっては「手札の一対多交換」によって相手の選択肢を奪い、ロングゲームに引きずり込む貴重なタイミングといえます。

反面、シェアの高いデッキ群の中ではとりわけ攻撃力の低いデッキでもあります。
《ロストサムライ・カゲミツ》と《二刀流》によるバーストダメージも存在しますが、20点規模となると再現性はかなり低く、基本的には相手の処理漏れを狙うことになります。盤面のプレッシャーが弱ければ、攻撃力の低さに付け込んで、相手は盤面を無視して好きなアクションを取れるようになってしまいますので、「長所を活かす」「短所を埋める」の両面において、盤面を譲らないことがこのデッキの生命線と言えるでしょう。

デッキ基盤こそ以前の連携ロイヤルを引き継いでいますが、採用カードの大幅な入れ替えにより、コントロールデッキと呼んで差し支えないほどにゲームの運び方が変化しています。
相手取る側にしてみても、分割リーサルを試みて《千金武装の大参謀》を絡めた大量回復を貰ってプランが崩れる、OTKをぎりぎりまで引っ張ったところ《ルミナスヒーラー・リララ》にカットされて《干絶の飢餓・ギルネリーゼ》の直接召喚を許してしまうなど、前環境の連携ロイヤルとの戦いではありえなかった裏目がそこかしこに存在しているため注意が必要です。
総じて、使うにせよ使われるにせよ、従来の連携ロイヤルとは別物ととらえて、いちからプレイを詰めていきたいデッキといえるでしょう。

ラストワードネクロマンサー

RAGE SHADOWVERSE PRO TOUR 4th Season 本戦優勝 福岡ソフトバンクホークス ゲーミング所属 ヘイム選手のラストワードネクロマンサー

新カード《マスカレードゴースト》を絡めた盤面展開と多彩な疾走フォロワーで素早く相手の体力を削りきることを主眼に置いたデッキとして生まれ変わったのがラストワードネクロマンサーです。

長所
  • 《マスカレードゴースト》が場にいるターンは、《ジャイアントゴースト》を守りの要にできるため、相手盤面を無視して体力を詰めにいく選択肢が生まれる。
  • 盤面重視の環境に対して《デスキャットリーパー》《スケルトンレイダー》が有効。
短所
  • ラストワード5回達成前の出力が低いカードを抱えるため、序盤のラストワードの達成スピードがゲームスピードに直結しやすい。
  • 進化ギミックが少なく、《スケルトンレイダー》のコストは大きくは落ちない。

直近のRSPTでお披露目となったラストワードネクロマンサーは《マスカレードゴースト》を中心とした《ゴースト》ギミックとのハイブリッドで、盤面と相手の体力の両方に睨みを利かせながら、短期決戦を目指すデッキです。
回復が少ない環境にあって、《ゴースト》や《デスキャットリーパー》《番犬の右腕・ミミ》の細かい打点を積み重ねていくゲームプランが有効で、ある程度削ったのちは《スケルトンレイダー》でゲームを決めるといった展開を得意としています。
また、《マスカレードゴースト》がはまった際の6ターン目の盤面の強さは環境トップクラスで、相手が対処できなければそのままリーサルに持ち込めることさえあります。

とはいえ、《友魂の少女・ルナ》を失い安定した進化ギミックを搭載できなくなった現在のネクロマンサーでは、これまでの主力だった《スケルトンレイダー》が以前ほどの破壊力を有しません。
ゲーム後半の特大ダメージを狙えるカードではなくなっているため、いたずらにゲームを引き延ばしても勝ち筋が太くなるわけではないという点には注意が必要でしょう。
アグロに近しい性格のデッキとして、フェイスオアトレードの判断を丁寧に行いたいところです。

また、ラストワード5回を達成することで効果が変化するカード群の共通点として「突進または疾走を持つ」ことが挙げられます。
スタッツの変化ももちろん魅力のひとつですが、この突進付与によって相手の盤面をいなすことが、《ゴースト》等攻撃的なフォロワーに進化権を振るチャンスに繋がっていくため、積極的な攻勢を通すためにも、ラストワードの回数についてはゲーム序盤からしっかりと意識しなくてはいけません。
連携ロイヤルと同じく、名前こそ前からありますが実態は全くの新しいデッキ。
手札交換からマッチアップごとの大局観まで、しっかりと研究しないと扱いの難しいデッキではありますが、裏を返せば相手からの対策が行き届いていないデッキでもあります。
この情報面の優位を、RAGE当日までにどれだけ大きくできるかという視点も、デッキ選択の鍵となりそうです。

2022年に有終の美を

今回はRSPTのデッキを中心に説明してきましたが、アーティファクトネメシスを意識したデッキとしてテンポエルフや宴楽ヴァンパイアといった攻撃的なデッキも選択肢として挙がっており、2デッキ目の選択にはかなり個人差が出そうな環境です。
自らが使うデッキで悩むことはもちろん、対戦相手のデッキも予想以上にバリエーション豊かということがありえますので、様々なデッキに対して、どのように戦っていくかしっかりとプランを練っていきたい残り一週間。
既に戦いは始まっていると言っても過言ではありません。
まずはオンライン一次予選を突破し、次なるステージにコマを進めることを目指し、万端の準備を整えてください。
自慢のデッキと洗練されたプレイが織りなす熱いバトルを楽しみにしています。

1次予選大会 1日目

1次予選大会 2日目

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