最強チーム決定戦

解説の”まる”さん執筆レポート【GRAND FINALS直前】RAGE Shadowverse 2023 Winter

Shadowverse: Worlds Beyond のお披露目があり、俄かに湧きたったこの年の瀬。
RAGEとのかかわりも示され、先の展望が気になるところではありますが、まずは目前に控えた GRAND FINALS を全力で楽しみたいものです。

今環境はアディショナルカードの影響をあまり受けておらず、完全新規のデッキタイプもそれほど多くない競技環境です。
したがってデッキの特徴についてはことさらに丁寧に取り上げずとも分かるというかたも多いのではないでしょうか。
ただし、いずれのデッキも幅広い選択肢を持ったデッキです。ともするとどこに注目して観戦すべきか分からなくなってしまいそうなほどに、試合中の情報量が多くなることもあります。

そこで今回のレポートではデッキ全体の特徴というよりも、主にプレイ面を中心に見どころとなる可能性が高そうなゲームレンジ・場面をピックアップする観戦ガイドとしてお届けします。
ご紹介するのは先日のRAGE SHADOWVERSE PRO TOUR 23-24 5th Season 予選で活躍した4つのデッキたちです。
順にひとつずつ見ていきましょう。

秘術ウィッチ

RSPT 5th Season 予選Aグループ1位:NORTHEPTION Tabata選手の使用デッキ

《マルチプルウィザード》のカード能力変更を皮切りに不動の人気デッキとなった秘術ウィッチは、アディショナルカードの登場にも吞まれることなく、競技シーンでは堅調な使用率を誇っています。
その魅力はスタックを駆使した多彩な選択肢にあり、アグロめいた攻勢からダメージカットを重ねてのコントロールまで、状況に応じた選択を許してくれるこのデッキは腕に覚えのあるプレイヤーにとって格好の研究対象といえるでしょう。
その分プレイ難度も折り紙付きで、無計画にカードを切っていては、肝心な場面でスタックや打点が不足する憂き目を見ることになります。

今回のGRAND FINALSでもハイレベルなプレイの応酬が予想される秘術ウィッチの戦いをより面白く見届けるためには、どんな点を意識すればいいのでしょうか。

序盤

秘術ウィッチのデッキパワーはスタックの蓄積・消費を大前提としています。
手札が極端に速攻に傾いているなどでなければ、動き出しは多くのカードの真価を引き出せる、7スタックの消費を目指すところからとなるでしょう。
この7という数字や、一度仕込んでから消費するという二段階の工程でカウントを稼いでいくさまは財宝ロイヤルを思わせます。
実際、ゲーム後半のコストの踏み倒しやバーストダメージの目安など、共通項は少なくありませんが、序盤のゲームの進め方においては両者の違いを意識することも欠かせません。

ここでは両デッキの蓄積・消費の得意分野の違いに注目してみましょう。
秘術ウィッチは1PPで1スタックを生み出したり、2PP + 1EPで2スタックを生み出したりと、蓄積において特に秀でています。
《天空の掌握》に至ってはコストを踏み倒してスタックを捻出できるほどです。
一方で《結晶:セレブレイトゴーレム》を除いてはスタック単独で消費をすることはできず、原則として他のカードの効果としてスタックを消費していくため、スムーズなスタック消費はややハードルが高い傾向にあります。
蓄積を得意としているということができそうです。これに対して財宝ロイヤルでは、1PPあたり1枚の財宝を得られるカードがそう多くなく、財宝の獲得に関してはコストの踏み倒しもできません。
しかし、消費にかけては財宝カード単体でプレイすることができ、《大海の征服者・ロジャー》の効果や融合によってコストを踏み倒すこともできるため、ひとたび手元に財宝カードを供給さえしてしまえば、たちまちのうちに7カウントの達成が見えてきます。

こうした特徴の違いから浮かび上がってくるのは、ハードルの高い「消費」を念頭に置いた秘術ウィッチの序盤像です。
蓄積も消費も同じ7という数字を目指さなくてはいけない以上、苦手分野によりフォーカスする必要が出てきます。

財宝カードと異なり、スタックは消費するのに他のカードの力を借りる必要があるということは、その分手札やコストの消耗が激しいことを意味します。
すなわち、手札を補填する・コストパフォーマンスの高いスタック消費カードを探すといった行動の価値が相対的に高くなり、これらを満たしながらスタックの蓄積までこなしてみせる《マルチプルウィザード》や《アストロジカルソーサラー》の重要度が際立ちます。
一見して《エンペラーゴーレム》のアクセラレートから速攻をしかけられそうでも、我慢してドローを回している。
そんな序盤を目撃したら、今見えている手札で7スタックを使い切れるのか、あるいは使い切れるとして何コストかかるのか、そういった観点から俯瞰してみてください。
「このまま押してもドローが続かなくてスタックを使い切れなさそうだから、今のうちにドローしているのか」など、裏にある選手の狙いに思いをはせられると、序盤から見どころ満載の戦いを楽しむことができるでしょう。

財宝ロイヤル

RSPT 5th Season 予選Bグループ3位:福岡ソフトバンクホークスゲーミング ヘイム選手の使用デッキ

秘術ウィッチと並んで、こちらもアディショナルカードをものともしなかった押しも押されぬ人気デッキ。
採用カード枚数の細かなバランス変動はあれど、最近のRAGEレポートではすっかりお馴染みとなった財宝ロイヤルです。
基本的なゲームプランやリーサル計算はこれまでの環境を踏襲したままですが、同じ環境に似て非なる秘術ウィッチがいることで、やはり両者の比較を通してより観戦のポイントが明快になっています。

序盤

財宝ロイヤルが蓄積よりも消費を得意としているというのは前段で触れたとおりです。
そのため、財宝カードを供給できるカードをどれだけ初動でかき集められるか、というのは財宝ロイヤルの序盤の形勢判断における一つの指標となります。
低コストのドローソースが豊富なこと、そして進化可能ターンの訪れと同時に《大海の征服者・ロジャー》に進化を切りたいことを踏まえると、「序盤にドローを重ねる」というアクション自体は多くのゲーム展開で共通しますが、《大海の征服者・ロジャー》を引いてなおドローを優先するかといった判断には、やはり財宝カードの供給が足りそうかという観点が欠かせません。
盤面を押さえ、《大海の征服者・ロジャー》も引けて一見優勢と思えるところから一転、後半に財宝カードの生成が追いつかずまごついているうちに相手に先にリーサルをとられてしまうといった展開はしばしば目にしますが、そうしたリスクを踏まえ、序盤のドローにどの程度注力するのかという判断にはプレイヤーのバランス感覚が問われます。

特に財宝ロイヤルは現在の競技シーンにあっては、進化可能ターンまでの盤面が比較的強力なデッキといえるため、序盤にしっかりとダメージを稼いでおくことの恩恵も決して無視はできません。
進化可能ターンまでに《大海の征服者・ロジャー》を引けているかどうかだけではなく、もう一歩踏み込んで盤面の手を抜かないことを優先するのか、財宝供給を見据えたドローをさらに重ねるのかといった他の分岐点にもゲームの序盤から目を光らせておけると、その戦略がはまった際の後半の猛攻をより爽快に見ることができるのではないでしょうか。

中盤

このデッキの中盤戦についても、秘術ウィッチとの対比から見どころを洗い出してみましょう。
いずれのデッキも7ターン目には10点台後半のバーストダメージを狙えるデッキですが、OTKを叩き込むには安定しません。
かといってひと息に20点を削りきるのであれば8ターン目以降を待ちたいところで、十分な防御態勢が整っていないことには逆に相手の7~8ターン目のバーストダメージに喰われてしまうというジレンマが存在します。
そんな中、秘術ウィッチは《全天の掌握》や《アストロジカルソーサラー》といった強力なダメージカットを擁しており、現在の競技シーンにおいて長期戦への適性が高いデッキです。
そのため7スタックの消費を達成したゲーム中盤は、手札によるとはいえ必ずしも即座にリーサルを目指すわけではなく、ダメージカットを主軸にゲームを引き延ばしながらより確実なリーサルを模索するなど、まだ様子見が許される時間帯でもあります。

対する財宝ロイヤルは回復や守護といった防衛手段こそ一定量存在しますが、ダメージカットができないデッキであるため、財宝カウント7を達成してさほど時間をおかずに、あるいは達成前から7ターン目に集約するのか、8ターン目をもらいに行くのか重大な決断を突き付けられます。
財宝ロイヤルの回復・守護がギリギリ8ターン目まで命をつないでくれるかの瀬戸際のボリューム感だからこそ、手札読みや裏目のリカバリー等様々な可能性を考慮したうえで、プランを明確にしなくてはならない場面がゲーム半ばにして表れやすく、様々なデッキとのマッチアップにおいて大きな注目シーンとなるでしょう。

マガチヨエルフ

RSPT 5th Season 予選Bグループ2位:DetonatioN FocusMe ミル選手の使用デッキ

《豪風の襲来》のローテーション落ちによってバーストダメージの柔軟性や、手札枚数の維持しやすさといった特長を失ってしまったマガチヨエルフですが、アディショナルカード《ドゥルガー》の登場によって突破力を大きく向上させ、再びその姿を競技シーンに見せるようになりました。
手札を保つことにかけても、《繁栄の撒き手》で息継ぎをすることができるため、6~7ターンを目安としてOTKを狙うことができるデッキの立ち位置は健在です。
大筋のゲームプランは以前と大きく変わりませんが、主にローテーション落ちしたカードの影響で、使い手に決断を迫る場面は増えたといえるでしょう。
どんな時にプレイヤーは岐路に立たされるのか。注目したいポイントを見ていきましょう。

序盤

このデッキは通常、《若芽の組員》をバウンスにより再利用することで、八獄フォロワーの回収と《円環の看守》のコストカットを両立するのが序盤の王道展開です。
ただし、1ターンでの4プレイを目指すにあたって序盤はパスする場面も少なくないため、必然的に盤面をとられ、体力を失いやすい滑り出しとなります。いくら自身のリーサルターンが早くとも、守りがおろそかでは先に削りきられてしまうため、限られたコストの中でどれだけ八獄フォロワーの下拵えを急ぐか、あるいはフォロワーを展開してダメージカットを図るかといった優先順位の管理が重要となります。
今環境では《暗黒の御使い》によって盤面処理と回復の両立が図りやすくなったことから、序盤の被ダメージを必要経費として割り切りやすくなっていますが、盤面をあけてドレインをケアするなどの対応一手で体力維持が瓦解してしまうリスクが存在し、より丁寧な判断が求められる序盤戦になっています。

また、《若芽の組員》を早期に手札に加えられていない場合、本来軽率にプレイしたくないバウンスカードを《円環の看守》のコストカットのために強引に切るのかといった割り切りのプレイも早いうちから登場する可能性があります。
背景としてはやはり《豪風の襲来》のローテーション落ちが大きいでしょう。
バーストダメージの上限が明確になってしまったがゆえに、リーサル時に《反転する翼》や《新芽の風・メイ》など相手の守護フォロワーを突破するためのコストを確保することの価値が上がっており、翻って《円環の看守》のコストをなるべく早期から落とし始めたいケースも増えてきました。
特定のコンボパーツの遅れをただ座視していると、リーサルの遅れに直結してしまいやすくなったと言い換えられる今環境のマガチヨエルフ。
キーカードの到着を待つにあたってゲームスピードを落とさずに済むタイムリミットはシビアにも序盤にあると言え、トッププレイヤーによる見極めは是非見て学びたいものです。

中盤

自身の体力を守りながら1ターン4プレイを重ねるという基本方針は序盤と変わりませんが、やはり進化可能ターン以降、相手の攻撃も激しさを増すことがほとんどです。
となれば、マガチヨエルフとしてはしっかりと盤面除去を行いたいところですが、自らのリーサルも見えてくる時間帯にあって、どれだけ除去カードを手元に残すべきかというのは前環境から続く難しいテーマです。
こちらもやはり《豪風の襲来》のローテーション落ちにより、1枚の疾走フォロワーが足止めされるだけでバーストダメージが明確に低下する今環境だからこそ、よりぎりぎりの温存が求められるようになっています。
また、強力無比な《ドゥルガー》ですが対象を選択するタイプのカードであるため、潜伏フォロワーへの対処として《根深き手の異形》を温存するべくあえて《ドゥルガー》から処理に使用するなど、除去カードの中でも特徴の違いを意識した効果的な温存が重要な環境となっています。

加えて《聖緑の輝き・カーバンクル》もカードプールから姿を消した現在、持久戦の構えも困難となっており、様子見をすれば7ターン目以降どんどんバーストダメージを伸ばしてくる他のデッキ群にたちまち押し切られてしまうでしょう。
このようにゲームを引き延ばせないことも、体力のマージンをたっぷり取りながら中盤を過ごす余裕がない一因です。
ど派手なリーサルはもちろんマガチヨエルフの大きな魅力ですが、自身のリーサルを意識したゲーム中盤の時に繊細、時に大胆な盤面処理にもこのデッキの醍醐味が詰まっています。
処理の様子を見ながら「〇〇だけ割り切ったプレイだ」「あれ、実はこれだと相手は〇〇点しか出ない?」といった紙一重の攻防を察知できると、より緊張感のある戦いを味わえるでしょう。

回復ビショップ

RSPT 5th Season 予選Bグループ1位:レバンガ☆SAPPORO Era53選手の使用デッキ

秘術ウィッチの台頭を受けていったときは減少したかに見えた回復ビショップですが、《大翼の灯火》によって5ターン目の《エンペラーゴーレム》への対抗手段を確立し、再び競技環境内での立ち位置を確かなものとしました。
《祈願の聖遺物》や《タンザナイトコンヴィクター》といった明確なダメージソースをどこまで削るのか等、比較的デッキリストに個人差が出やすいデッキのため、採用カードの違いも是非観戦の楽しみにしていただきたいですが、プレイにおいては特に見ごたえを期待できるところとしてどんな場面があげられるでしょうか。

中盤

1コストが全体1点のバフに化けるこのデッキにおいて、《大翼の灯火》のPP回復効果は攻撃的に使用することが可能です。
加えて相手フォロワーの破壊効果も盤面のリードを広げるために有効で、《祈願の聖遺物》を採用しないケースであっても盤面の強度を保つことができるため、例えば《華麗なる修練・ルゥ》が手札にいない状況でも、しっかりと盤面でプレッシャーをかけることができます。
そのため、ゲーム終盤を待たずして盤面を取りきりにいくような選択肢が回復ビショップには存在します。
ただし、こうした回復ビショップの盤面攻勢を意識して、《漆黒の使徒》を起用しているデッキも増えつつあります。
中盤の盤面のリードを勝ちにつなげるまで育てるのであれば少なくない回復カードをつぎ込むことになるため、そこに《漆黒の使徒》が直撃すれば痛手は免れません。

ならばと《神託の旅立ち・ジャンヌ》まで手札を温存し、確実に疾走打点を稼ぐという選択肢も当然存在します。
特に《戒律の諜報員》に効果ダメージの無効化を付与するのは非常に強力で、通れば次のターンには手堅くリーサルにたどり着けるような布石となります。
しかし、こうしたゲームプランをとるには8ターン目までの到着が求められるため、今度は他デッキのOTKを阻む手段の乏しさに直面します。
回復量は多く、守護フォロワーもそれなりに存在するデッキとして、20点未満のバーストダメージであればやり過ごす算段も立ちやすいですが、回復ビショップには直接的なダメージカット手段が存在しません。
そのため自身の手札・体力をよく整理して、中盤に先んじて攻め始めてしまった方がいいのか、終盤まで防御的にふるまってから《神託の旅立ち・ジャンヌ》を起点とした逆襲に転じるべきなのかというゲームレンジ自体の選択を迫られることが時にあるデッキとして回復ビショップを見られると、攻め急いだ、あるいは守りを固めた判断材料がどこにあるのか探してみるなど、より様々な視点から多角的に戦いを楽しむことができるのではないでしょうか。

あるいは競技デッキの総集編か

冒頭に触れたとおり、今回の競技環境は比較的アディショナルカードの影響が小さく、過去培ってきた各デッキのノウハウを活かしやすいシーンとなっています。
それぞれのデッキに王道ともいうべきゲーム進行が存在し、定石として根付いているからこそ、キーカードの欠損に対するリカバリーや、大胆な割り切りといった王道からの派生部分にプレイヤーの個性が垣間見えるでしょう。

少なくとも今回ご紹介した4デッキの中には、分かりやすく特定のデッキだけをターゲットとした、いわゆるメタデッキの立ち位置につくものはありません。
いずれもはまればあらゆるマッチアップを制してしまえるようなパワーデッキの集まりとなっているため、過去数環境分の競技デッキが一堂に会したかのような環境であることも含め、真っ向勝負というべき試合が多く繰り広げられることが期待されます。

そんな贅沢な GRAND FINALS はいよいよ12月17日(日) 11時より配信開始です。
会場のベルサール秋葉原もそろそろお馴染みでしょうか。是非足を運んでいただき、今年最後の王者が決まる瞬間をその目で見届けてください。

すべての記事を見る