解説の”まる”さん執筆レポート【予選大会間近】RAGE Shadowverse 2023 Winter
今年のRAGEもいよいよ締めくくりです。
今環境ではカード能力変更こそありましたが、大勢には影響なく、かつ前環境から活躍を見せていたデッキが続投されていることもあって、通常よりも早くから環境の定着や練度の底上げが始まっている印象が強くあります。
そうは言っても、既存デッキでも採用カードの変化に伴う立ち回りのアップデートがあったり、新たなデッキの台頭があったりと新環境らしい推移ももちろん見受けられます。
本レポートでは、直近のJCG Shadowverse OpenやRAGE SHADOWVERSE PRO TOUR(以下RSPT)を手がかりに、RAGEでの活躍が予想されるデッキについて、その特徴を掘り下げていきます。
財宝ロイヤル
RSPT 4th Season 予選 よしもとゲーミング だーよね選手の財宝ロイヤル
直近のRSPTではローテーション選手 16 名が全会一致で採用した財宝ロイヤル。
細かいパーツの入れ替えこそありましたが、ダメージソース周りを中心に前環境の基盤が引き継がれており、そのデッキパワーは健在です。
疾走フォロワーや《戦慄の海賊旗》関連の採用カードがすべて据え置きのため、前環境で慣れ親しんだリーサルパターンをそのまま活かせるのも一つの強みだといえるでしょう。
一方で財宝カードの供給数が微減していることから、7 ターン目にOTKを決められる可能性はやや落ちており、8 ターン目を迎えるゲーム展開は増えつつあります。
前環境との共通点が多いからこそ、どのようなところが以前とは異なっているのか、ここで整理しておきましょう。ポイントは 3 つの「低下」です。
EP管理のハードル低下
新カード《極彩の美剣士》によって進化ポイントを確保しやすくなりました。
以前は《大海の征服者・ロジャー》の引き込みが遅れた際、中盤の主導権争いを譲らないために他のカードであっても進化を切るべきか頭を悩ませるシーンも珍しくありませんでした。
しかし今環境では、後半戦でも進化ポイントを回復できる見込みが高いため、中盤で比較的強気に進化を切りつつも、6ターン目以降でも《大海の征服者・ロジャー》進化の目を残すような立ち回りが容易になりました。
《大海の征服者・ロジャー》の進化有無はバーストダメージの大きさに直結するため、これは嬉しい変化です。
また、終盤で多少強引にでも進化ポイントを戻して、《荒波の副船長》から 0 コストの《戦慄の海賊旗》を加える動きも強力です。
こちらもバーストダメージ増加に繋がっており、進化ポイントを打点に繋げる立ち回りが一層重要になっていると言えるでしょう。
防御性能の低下
《ルミナスヒーラー・リララ》がローテーション落ちしたことはこのデッキにとっては大きな痛手でした。
回復 + 守護 + ダメージカット効果を持つこのカードはミラーマッチをはじめとして、後攻時に意識すべき「まずは相手のリーサル目安ターンをしのぐ」ことにかけて一級品の性能でした。
分かりやすい防御カードが採用できなくなったことで、後攻時の立ち回りにはより工夫が必要となっています。
とはいえ、新カード《気高き落涙》の防御性能も侮りがたく、単体ではそこまで強力ではない効果も、「《千金武装の大参謀》を守護裏で進化させる」「同じターンに2枚連続でプレイして大量回復」「攻撃力の低さと展開力を活かして盤面ロックを仕掛ける」など、組み合わせるカードやシチュエーション次第では試合の趨勢を左右する可能性を秘めています。
また、8 ターン目までゲームが伸びる展開が増えたことから、《千金武装の大参謀》を挟むコストの余裕が生まれやすく、4〜6点の回復として見込める機会も増えたと言えるでしょう。
ドロー性能の低下
《グレートシーフ》のローテーション落ちを受け、若干ながら手札の回転率が落ちています。
また、以前は1~2枚採用の傾向が強かった《千金武装の大参謀》も、7ターン目決着の頻度が落ちたことで相対的に活躍の場を増やし、採用枚数が2~3へと増加しています。このことによって、《愚直なる研磨・トニー》のサーチの安定性も低下しており、デッキ全体としては《大海の征服者・ロジャー》をはじめとしたキーカードへのアクセスが悪くなった側面があります。
翻って、サーチが空ぶったとしても捨て鉢にならず、前述のEP面での強みを活かしてゲーム後半になってから《大海の征服者・ロジャー》に進化を切る展開も念頭に置いて立ち回りたいといえます。
また、ドロー性能の低下に伴い相対的に序中盤の《海原の斥候》や《部隊の投入》の価値が上がっています。
一方で財宝カウントさえ足りてしまえばそれほど大量にドローをせずともリーサルが見えてくるという意味では、《荒波の副船長》の重要度も高まっており、最初の手札でどのようなカードを狙うべきかの見直しを含め、前環境よりやや落ちた安定感をいかにカバーするのかは事前に検討しておきたいテーマだと考えられます。
回復ビショップ
RSPT 4th Season 予選 横浜F・マリノス あぐのむ選手の回復ビショップ
財宝ロイヤル同様、既存カードのローテーション落ちが少なく、デッキ基盤の続投に伴い初期から環境を席巻しているデッキが回復ビショップです。
《白翼の慈愛・アイテール》から《華麗なる淑女・エルヴィーラ》や《神託の旅立ち・ジャンヌ》をサーチできる基本ギミックはそのままに、《ミュースの料理人》による多面除去兼 2 段階バフ、《タンザナイトコンヴィクター》を絡めたバーストダメージなど強みが増えた格好となります。
それでは、採用カードの変化を中心に、デッキのポイントを確認していきましょう。
コントロール適性がアップ
今環境ではトップシェアである財宝ロイヤルの7ターン目のOTK率が以前より低くなっているほか、同じく前環境で7ターン目のOTKを標榜していたマガチヨエルフや結晶ビショップについては鳴りを潜めています。
そのため、8ターン目までは体力を高く保ち、OTK未満のバーストダメージをしのげるようにしておく価値が相対的に高まっているといえます。
そこで白羽の矢が立ったのが《祈願の聖遺物》です。回復ビショップは回復回数こそ多くとも、個々の回復量が1~2と低水準にまとまっています。
《祈願の聖遺物》を併せることでフォロワー1枚当たりの回復量が2~3と二倍弱まで伸びるため、失った体力を補填しやすいのが特徴です。
このカードによって回復の回数自体も大きく伸びるため、プレイ時に瞬間的に盤面を弱くしてでも、のちの体力保持と盤面強化に投資するというコントロール然としたプレイ方針にマッチするカードとなっています。
必要十分なバーストダメージ設計
《タンザナイトコンヴィクター》の追加によって疾走打点が伸びたことはもちろん、《祈願の聖遺物》採用により一撃の重さも増した今環境の回復ビショップは、以前に比べてバーストダメージを出しやすくなっています。
再現率はそれほど高くありませんが、《戒律の諜報員》なしでも 7PPからOTKを実現できるレベルです。
そのため、8PPまではそれほど大きなダメージを捻出できなかった前環境とは異なり、手札で出せる瞬間最高打点を早い段階から意識しておくことが重要となります。
特に《祈願の聖遺物》設置時のダメージの伸びは大きく、1コスト2バフ相当の《優雅なる修練・ルゥ》や 2コスト3バフ相当の《ミュースの料理人》など、回復のコストパフォーマンスに秀でたカードをいつプレイするかについては、いずれも盤面処理にも長けているカードなだけに、攻めに回すか守りに回すかといった意味で慎重な判断が問われます。
また、ダメージ確保が容易になった分、《戒律の諜報員》周りのプレイにも若干の変化が生じています。
以前は《戒律の諜報員》に進化を切って 2 枚潜伏の体勢をとることで、次のターンにバーストダメージを出すことが多かったですが、《祈願の聖遺物》や《タンザナイトコンヴィクター》がある場合《戒律の諜報員》2 枚伏せは過剰打点となる可能性があります。
今環境では回復ビショップのメタカードとして《漆黒の使徒》が見え隠れする傾向にあるため、手札の打点が足りそうであればむやみに《戒律の諜報員》を前面に押し出すのではなく、1枚の進化置きでとどめたり、他のフォロワーの横に1枚だけ進化せずに添えておくなどしてリスクの分散が可能です。
《祈願の聖遺物》があれば 1 枚の《戒律の諜報員》でも十分すぎる脅威となるため、複数ターンに分けてプレイすることで限られた除去カードを相手に要求し続け、本来相手が取りたかったアクションを許さないことにも繋がります。
もちろん2枚潜伏が通った際の破壊力は健在なので、状況次第では狙っていきたい選択肢ですが、このように《戒律の諜報員》の活かし方にバリエーションを持たせることで、より対処されづらい攻め方を実現できるかもしれません。
進化ヴァンパイア
RSPT 4th Season 予選 福岡ソフトバンクホークスゲーミング Atom選手の進化ヴァンパイア
以前から存在していたものの、中々競技シーンには姿を見せなかった進化ヴァンパイア。
今環境でも初期に注目を集めて以降徐々にシェアを落としていき、またしても日陰に入るかと思われていたところ、先日のRSPTで唯一このデッキを使用したAtom選手が予選突破を決めたことで俄かに機運が高まってきました。
まずは5回の進化を
「このデッキの出力が上がるタイミングは進化カウントと密接な関係にあり、3・5・7 回と3つの数字を意識しておきたいです。
中でも5回の進化達成時には、《転輪の魔神》直接召喚や《宵闇の狩人・リアン&アルフィ》の融合変身解禁、《デモニックキャット・トバリ》による回復+バーンダメージ起動など、デッキの動きに一気に幅が出てきます。
《封印の凶狼・シグナ》を軸に盤面除去のアプローチが増える3カウント、バーストダメージが伸びる7カウントに比べると攻守のバランスよく選択肢が増えてくれるのが5カウントとなるため、5回の進化達成をひとつの起点として盤面の逆転や反転攻勢を仕掛けていきたいところです。
目安としては進化解禁の次のターン中までに5回の進化を達成できれば、相手のリーサルがちらつくまで1〜2ターンは貰えるため、自由度の高い動きが可能となります。
なお、序盤で《スマートゴブリン》の自動進化に成功した場合、5回の進化達成が1ターン早まるため、後攻5ターン目や先攻6ターン目に《転輪の魔神》と《幽闇の狩猟者・リアン&アルフィ》+αが並ぶゲーム展開を見込むことができます。
マッチアップによっては相手がこの盤面を大きく取りこぼすことがあるため、7ターン目までの決着を目指せるプランとして頭に入れておきましょう。
プランの見極めと削りが鍵
このデッキのゲームプランは大きく2つ存在します。
1つは上述した「早期の5回進化から盤面攻勢をかけ、先に自分のリーサルを通す」パターン。
もうひとつは「進化回数を稼いだあとは一度相手のリーサルをしのぎ、その後自分のリーサルを通しきる」パターンです。
端的にいえば相手のリーサル目安ターンよりも前で決めるか後で決めるかの違いで、いうまでもなく前者を通せる方が苦労は少ないのですが、前者のプランを成立させるには相手の中盤のアクションがある程度非力であること、あるいは《スマートゴブリン》の自動進化に成功することが必要となります。ハードルとしてはやはり高く、かといって進化ヴァンパイアに再現性のある早期OTKは存在しないため、多くの場合は後者、すなわち一度相手のリーサルをしのぐゲームプランで進行することになります。
その場合、継続的なダメージは豊富な回復でいなせるとして、課題になりやすいのが相手のOTK阻止です。
シェア上位の財宝ロイヤル、回復ビショップともにゲーム終盤にはOTKないしそれに近いバーストダメージを構えており、リーダーの体力上限を上げられない進化ヴァンパイアにとって、直撃すれば敗北必至のこれらの攻撃をいかにして食い止めるかが勝敗を左右します。
《幽闇の狩猟者・リアン&アルフィ》によって《出航の咎人・バルバロス》や《神託の旅立ち・ジャンヌ》等トップシェアデッキのキーカードを足止めできる可能性が少なからずあるため、自身の体力や相手のコンボパーツ温存状況を踏まえながらどの程度の回復を実現すべきか、《幽闇の狩猟者・リアン&アルフィ》を何枚並べるべきかなど適切な防御策を検討し、前もってドローを進めてそれらのカードを回収しておくことが極めて重要です。
また、先に述べた通りこのデッキには再現性の高いOTKは存在しません。
そのため、ただ相手のリーサルをやり過ごすだけでは結局勝ちきれずにジリ貧に陥ってしまいます。
一度相手のリーサルを耐えきりさえすれば返しのターンで勝てるような状況を作るには、防御的な動きと並行して相手の体力を削っておくことも欠かせません。
進化ヴァンパイアはダメージソース・回復・除去とどれをとっても豊富なデッキのため、こうした終盤戦の攻守両立も不可能ではありませんが、達成すべきタスクが多い以上、僅かな判断ミスが原因であと一歩攻めきれない・守りきれないといった展開が頻発します。
器用貧乏ではなく万能デッキとしての活躍を目指すのであれば、各マッチアップにおける攻め方、守り方の研究が大切になってきそうです。
カステルエルフ
JCG Shadowverse Open 27th Season Vol.10 ローテーション大会優勝 鮒選手のカステルエルフ
RSPTでこそ使用が見られませんでしたが、JCGで立て続けに優勝したカステルエルフもRAGEでの注目株のひとつです。
1コスト帯が山積みのコストカーブとは裏腹に、アグロのような動きはそれほどせず、《緑の顕現》によるOTKを目指すことを基調とします。
リーサルパターンは整理必須
このデッキのリーサルパターンはきわめて豊富です。
単純に1コストの疾走フォロワーと《緑の顕現》の組み合わせだけでも枚数に応じたバリエーションが多彩ですが、加えて《サルビアパンサー》や《アネモネタイガー》も打点としてカウントする場合や、《新芽の風・メイ》や《漆黒の使徒》で相手の守護を処理しながらリーサルをとる場合など、手札や盤面次第で最適なリーサルの形がさまざまに存在します。
複雑ですぐには覚えきれないという人は、まずは「5コスト・5枚」を基本形として押さえておくといいでしょう。
1コストの疾走フォロワー2〜4枚と《緑の顕現》1〜3枚の合計が5となるような組み合わせであれば、概ね20点を出せる計算となります。
《緑の顕現》1枚でOTKを目指す場合のみ、疾走フォロワー4体のうち最低2体は進化している必要がある点には注意が必要です。
また、疾走フォロワーをバウンスして使い回そうとすると、バウンス前後どちらか一方での攻撃時にしか《緑の顕現》のバフを受けられないことになり、打点が不足します。バウンスを前提として1枚の疾走フォロワーを複数枚分にカウントすることはできないことも覚えておきましょう。
ひとまずは実際に20点を詰める分のリソースとして「5コスト・5枚」の確保を目指したうえで、相手の守護フォロワー突破に必要なカードを整えることでOTKを通す。
そして慣れてきたら2コストの疾走フォロワーを絡めたリーサルパターンについても整理してみたり、カードの要求枚数を減らす上で効果的なリーサル前の体力の削り方を研究するなどして、臨機応変なリーサルに対応できるようしっかりと練習しておきたいデッキです。
マガチヨエルフとのすみわけ
今環境では同じくOTKを目指すエルフのコンボデッキとして、マガチヨエルフが存在します。
バウンスやドローを使いこなして手札枚数を保ちながら、除去とパーツ回収を図る点や、守護フォロワーの突破が課題となりやすい点など共通項の多い両デッキですが、もちろん異なる点も少なくありません。
まずはOTKのスピードに関してですが、平均的なリーサル速度はマガチヨエルフに軍配が上がるでしょう。
7ターン目にはOTKパーツは揃っていることが多く、《反転する翼》が絡めば6ターン目のリーサルも不可能ではありません。
対するカステルエルフでは、盤面を離れたエルフフォロワーの枚数は比較的早期に20カウントの達成が可能ですが、疾走フォロワーはサーチができず、《緑の顕現》の回収にあたっては多くの場合バウンスを必要とする都合上、コンボパーツを揃える安定感にかけては一歩劣ります。
その一方で、OTKの確実性という観点ではカステルエルフに分がありそうです。
《豪風の襲来》を失ったマガチヨエルフにとって、盤面1枠あたりから出せる打点には限りがあり、結果として相手の守護を突破するために割ける盤面は多くありません。
対してカステルエルフでは、《緑の顕現》で打点を上積みできるため、準備さえ整えば相手の守護フォロワーを力技で突破してOTKを通すことも可能となります。
もちろん、マガチヨエルフ側も《反転する翼》による守護対処などカステルエルフにはない強みがありますが、《自然の導き》採用もあって《円環の看守》のサーチが安定しない以上、過信は禁物でしょう。
他にもOTKではなく、特大守護盤面を押し付けて勝ちきるプランや、序盤の除去に関するアプローチなど、両デッキでできること・できないことには様々な違いが存在します。
これらコンボ系列のエルフデッキを持ち込むにあたっては両者の特徴をよく吟味した上で、採用デッキを決定したいところです。
デッキ登録締切迫る
今回は以上4デッキのご紹介となりました。
他にも武装ドラゴンや復讐狂乱ヴァンパイアなど、採用が考えられるデッキはいくつか存在しますが、前述した 4 デッキについてはRAGE当日、相手から繰り出される可能性が特に高いデッキと言えるでしょう。
自身が採用するかどうかの検討はもちろんとして、相手から出された時にどのように戦うべきか、限られた時間でしっかりとマッチアップの研究をしておくことが理想的です。
いよいよデッキ登録も締切間近となります。
ぜひ悔いのない選択をして、大会当日は全力を尽くして戦ってください。
皆さんの自慢のデッキ・プレイを幕張で目にできることを楽しみにしています。