解説の”まる”さん執筆レポート【GRAND FINALS直前】RAGE Shadowverse 2024 Spring
先日「Shadowverse Invitational 2024」(以下インビテーショナル)が行われたことで、BO5の検討材料がふんだんに揃っている今環境。
インビテーショナルでは「Grand Masters Final」からの刺客、りざ選手が優勝を果たしましたが、RAGEファイナリスト組も2名が3位タイにその名を連ねており、その実力の高さを示しました。
今環境、競技デッキの分布に関してはアディショナルカードの影響を受け、一部のデッキが新たに選択肢に加わっています。
加えて、既存のデッキについてもアディショナルカードの採用に検討余地があるデッキは多く、構築の見直しが行われている状況です。
幸いにもアディショナルカード実装後にインビテーショナルという素晴らしい競技シーンがありましたので、今回のレポートではインビテーショナルで活躍したデッキについて、改めてその特徴を確認してみたいと思います。
カステルエルフ
「Shadowverse Invitational 2024」 優勝:りざ選手のカステルエルフ
まずはカステルエルフから見ていきましょう。
アディショナルカードの追加前から環境の一角を担っていたこのデッキは《神秘の妖精竜》の登場により、多角的な強化を受けた形となります。
インビテーショナルでも大多数のプレイヤーが採用した文句なしの人気デッキです。
アグロプランの強化
融合効果によってコストを支払わずに《フェアリー》を展開できる《神秘の妖精竜》は分かりやすくアグロプランに貢献してくれます。
もともと《繁栄の撒き手》やバウンスによって、埋めた盤面を自分から空けることは得意なため盤面ロックを恐れる必要がなく、積極的な盤面展開が肯定されやすいカステルエルフ。
0コストでプラス1体の展開が出来ることはもちろん、残り1PP時に持て余してしまう2コストフォロワーを《フェアリー》2体の展開に変換する選択肢が広がることも大きな強みです。
また、純粋に《フェアリー》の供給が増えたことで《安らぎの女神・プルメリア》による疾走付与も無駄にしづらくなりました。
もともと盤面を捌かれてしまってからの打点の伸び悩みを理由に、アグロプランは採用されにくい傾向にあるこのデッキですが、疾走を通す機会の増加によってアグロ軸でのアプローチの幅が広がったと言えるでしょう。
コンボプランの強化
当然ながら、《神秘の妖精竜》の恩恵はカステルエルフの本線とも言えるコンボプランにも及んでいます。
単純に0コスト相当のフェアリーが場を離れたエルフ・フォロワーのカウント増加を推し進めてくれることに加え、場のフォロワーを増やすためのコストを節約できることで、《繁栄の撒き手》や《サルビアパンサー》、《アネモネタイガー》といった自分の場にフォロワーがいることを前提としたカード群の取り回しが格段に向上しています。
コストでいえばたかだか1コストの圧縮にすぎませんが、されど1コスト。カステルエルフにとってはその追加の1コストでキーカードをバウンスしたり、《新芽の風・メイ》による盤面除去を試みたり、《緑の顕現》を重ねてリーサルにこぎつけたりと圧倒的に可動域を広げることができます。
構築のバランスが悩みの種
上記に加え、サイズの大きな守護としてプランを問わず本体プレイでも一定の役割を持つことが出来る《神秘の妖精竜》。
このカードはカステルエルフに強い追い風をもたらしましたが、その一方で構築難易度の上昇にも繋がっています。
特にポイントになってくるのは《神秘の妖精竜》と《使命の妖精姫・アリア》の枚数配分。まずは《使命の妖精姫・アリア》の採用について、そのメリット・デメリットを整理してみましょう。
■メリット
《フェアリー》の供給が増えたことで、進化後攻撃時の疾走付与によるバーストダメージが狙いやすくなる
2コストカードを厚く採用することで《神秘の妖精竜》の融合効果を最大限活用できる
■デメリット
相対的に1コスト層が薄くなり、《神秘の妖精竜》を引けていない際のカウント進行が遅れるリスク有り
メリット・デメリットともに影響力の大きなもので、どちらを重く見るかによって《神秘の妖精竜》、《使命の妖精姫・アリア》ともに採用枚数を吟味しなくてはなりません。
「キーカードのサーチができず、ドローは一部のカードに依存している」というカステルエルフのかねてからの弱点はアディショナルカードの実装後も変わっていないことから、デメリットを重く見て採用枚数を控えめにする傾向が大まかには見える近況ですが、採用枚数の配分は各プレイヤーの個性が出るポイントだと考えられます。
バフドラゴン
「Shadowverse Invitational 2024」 準優勝:AXIZ / Rumoi選手のバフドラゴン
カステルエルフと並び、インビテーショナルで多数派を占めたのがバフドラゴンです。
終始盤面にプレッシャーをかけ続けられる展開力を武器に環境初期より愛用者が多かったデッキですが、アディショナルカードの影響はどのようなものでしょうか。
採否の分かれる新カード
ドラゴンクラスの新カード《終幕の竜騎士》ですが、カステルエルフの《神秘の妖精竜》に比べるとその採用率は一段落ちる状況です。
そもそも不採用というケースも多いこのカードですが、採用した場合デッキにはどのような変化がもたらされるのか。
こちらもメリット・デメリットを並べて確認してみましょう。
■メリット
・コストカット効果によってコストあたりのダメージ効率を上げることが出来、OTKのハードルを下げられる
・本体もダメージソースであり、盤面を作りながら相手の体力を削っていくバフドラゴンのゲームプランの1つと噛み合う
■デメリット
・バフシナジーを持たないカードでデッキを圧迫してしまう
・同じバフシナジーを持たない《クロードラゴニュート》《禁牙の執行者・ドラズエル》に比べて性能が攻撃に寄りすぎており、守勢で扱いづらい
上記のように長短併せ持つカードですが、メリットに魅力を感じるかは人によって分かれやすいと考えられます。
例えばOTKハードルを下げられるという点。バフドラゴンのOTKは確かに要求値が高いですが、そもそも盤面からのダメージに期待を寄せられるデッキでもあるため、OTKを求められる場面が少ないと捉えるプレイヤーにとってはあまり魅力的ではないかもしれません。
また、盤面を作りながら相手の体力を削れるという特性については《クロードラゴニュート》が比較的近い役割を持っているため、明確に差別化しないことには強みを活かしにくい形となります。
より爆発力を重視するのであれば視野に入ってくる《終幕の竜騎士》。
採用によってデッキの立ち回りも変化しうるカードのため、各ファイナリストの採否にも注目が集まります。
環境に左右されない強み
バフドラゴンは自クラスのアディショナルカードによるデッキ変化幅は小さかったデッキですが、それだけでなく他クラスのアディショナルカードによる影響もほぼ受けなかったデッキと言えます。
その一因ともいうべきバフドラゴンの長所について改めておさらいしておきましょう。
・終始盤面を押し付けて、相手の処理漏れを狙い続けることができる
・全処理されても攻め手が途切れにくく、盤面を押し付ける行動がローリスクハイリターン
上記のように、もとより相手の仕掛けに対応するというよりも積極的に相手側に対応を迫るのがバフドラゴンです。
もちろん《天駆の聖竜》や《禁牙の執行者・ドラズエル》による対応手も持ち合わせますが、これらのカードであっても同時に巨大フォロワーの押し付けを行っており、常時盤面のプレッシャーが存在します。
加えて仮に全処理されようとも、比較的潤沢なドローによって再展開が容易なため、相手の除去を過度に警戒する必要がなく、のびのびと盤面を作りにいくことができます。
この「継続的な押しつけ」「対処されても矢が尽きない」といった特徴により、相手の採用カードの影響を受けにくく、どっしりと構えられるのはバフドラゴンの大きな強みと言えるでしょう。
もちろん、無造作な盤面展開が許容されるという意味ではなく、相手の処理漏れを狙うために各フォロワーの体力水準をどのラインまで引き上げるべきかなど、意識すべきポイントは明確に存在します。
また、OTKのハードルはやや高いため無計画にダメージを小出しにしていればいいものでもありません。
相手のデッキや採用カードによって動じにくいデッキだからこそ、細やかな盤面ケアや綿密な攻撃計画をもって、そのパフォーマンスを活かしきりたいデッキだといえるかもしれません。
融合ネクロマンサー
「Shadowverse Invitational 2024」 5位タイ:LVS / rikka選手の融合ネクロマンサー
これまで見てきた2デッキに加え、インビテーショナルでは融合ネクロマンサーもかなりのシェアにのぼりました。今RAGEでは予選時より活躍を続けているデッキですが、アディショナルカードの採用はなく、構築のチューニングが進んだといった印象です。
強力無比な勝ち筋がより洗練
予選大会時にはさながら万能デッキといった様子でもてはやされた融合ネクロマンサーですが、デッキ理解が進むにつれて弱点も明らかとなってきました。
一方でデッキの強みを活かすための構築・プレイも洗練されてきた状況にあり、今一度このデッキの強み弱みを整理しておく必要があるでしょう。
■メリット
・ドロー枚数が非常に多く、勝ち筋の再現性が高い
・疾走フォロワーによるOTK、《全死の裁定者》による盤面勝ちと毛色の異なる勝ち筋を同時に追うことができる
・いずれの勝ち筋も《グランドリッチ・ヘリオ》による守護突破や《全死の裁定者》本体の耐性により阻止されにくい
■デメリット
・序盤の除去は《ソウルライト》頼みで、引けないまたはケアされた場合にかなりのダメージが蓄積するリスクがある
・回復手段に乏しく、強力なバーストダメージを持たないデッキにも細かい打点の蓄積で圧倒されうる
総じて打たれ弱さが目立つものの、スピーディで再現性の高い勝ち筋が他にない武器になっているデッキだといえるでしょう。
最近の構築では《死門の開通》・《ゴーストパレス》をともに採用するものが主流ですが、これも上記の長所を活かしつつ、短所をカバーするためのアプローチと考えられます。
両カードともに1枚で複数のフォロワーを確保できるため、融合・葬送のいずれもより円滑に行うことができます。
したがって、融合カウント7の達成や《結晶:双魂の久遠・ケリドウェン》のカウント促進に貢献し、攻撃のペースがワンテンポ上がるというのは周知の事実でしょう。
同時に、《死門の開通》であれば《深淵の大佐》や《カースドキング》を墓場に落としても回収可能になるため、リアニメイト先として防御的なカードが選択肢に加わる点、《ゴーストパレス》であれば《ゴースト》を利用した序盤の細かい盤面処理が可能になる点が守りの不安をある程度カバーする格好です。
特にカステルエルフが多数存在する今環境では、1点分の除去の価値も高まっているといえるでしょう。
また、今環境ではバフドラゴンも多数派を占めるため《全死の裁定者》を通すゲームプランも難易度が大幅に上昇しており、バフドラゴンを意識するのであれば勝ち筋としても《デミゴッド・ギルガメッシュ》をより厚く見る必要があります。
環境の勢力図を俯瞰しながら細部を調整するデッキだといえ、ファイナリストたちの構築のわずかな違いにも様々な意図を感じ取ることができそうです。
アグロネクロマンサー
「Shadowverse Invitational 2024」 3位タイ:iDeal | TBT選手のアグロネクロマンサー
アディショナルカードの追加によって一気に環境に食い込んできたのがアグロネクロマンサーです。
追加された2枚のカードがいずれも攻撃的な性能をしており、もとより《ゴースト》という攻撃手段を有していたネクロマンサークラスにかみ合って形になったデッキだといえます。インビテーショナルでも一定数のプレイヤーが持ち込み、優秀な結果を残しています。
攻撃「だけ」ではない新カードたち
まずはアグロネクロマンサーを成立させた2枚のアディショナルカードについて、このデッキにおける役割を簡単にまとめておきましょう。
《蔓延る君主・ゼベット》
・1枚で盤面を平らげながら、合計8点のダメージを狙っていける
・6ターン目のリーサルを見据えながら、達成できない状況でもチョイス次第で息切れせず次に繋げられる
《黒き舞踏・オディール》
・1枚で盤面を平らげながら、合計4点のダメージを狙っていける
・結晶置きすることで、場に出るまでのタイムラグによって盤面の緩急を作ることができる
このように、両カードに共通しているのは「リーダーにダメージを与えること」に特化しすぎていないことです。
《蔓延る君主・ゼベット》であればゲーム中盤のダメージレースを《邪裂の蟷螂》でしのぎながら次のターンに疾走を通してリーサルをとるプランニングも可能ですし、《黒き舞踏・オディール》は《冥府の中尉》と合わせて展開することで一気に盤面優位を形成することもできます。
デッキ名には「アグロ」を冠していますが、こうしたミッドレンジ然とした動き方も十分狙っていけることがこのデッキの大きな特徴です。
攻撃「だけ」のカードとの使い分けがポイント
上記では盤面を作れることを強みとしてとりあげましたが、あくまでひとつの選択肢であって、もちろん攻撃に特化した《ゴースト》関連のカード群で一気呵成に攻め立てるゲームプランも取りえます。
盤面形成に関しては可能とはいっても、常時主導権を握り続けられるわけではなく、特に中盤以降はより長いゲームレンジを見ているデッキたちにしっかりと捌かれてしまう恐れがあります。
そのため、「盤面で押せそうな時間帯」と「盤面を放棄する時間帯」のメリハリが重要となってきます。
幸いにして《ゴースト》系列のカード群は自身の盤面に残らないため、今環境で言えば《安らぎの女神・プルメリア》や《堕天使》によるドレイン、《グランドリッチ・ヘリオ》によるラストワードなど、このデッキにとって致命傷になりうる効果の起動をケアすることができます。
新カードを軸とした「リーダーへのダメージ + 盤面奪取」を目指すターンと「リーダーへのダメージ + 自盤面を残さない」ことを目指すターン、両者の使い分けが綺麗に決まると、バーストダメージがなくともしっかりと相手の体力を削りきることができるデッキとなっています。
GRAND FINALSでも採用されることがあれば、アグロの名からは想像ができないような駆け引きにも期待したいところです。
あるいは競技デッキの総集編か
直近では「Shadowverse」としての最終パックのリリースが決まり、RAGEも今後は競技タイトルを「Shadowverse:Worlds Beyond」に移行していくことが明らかとなっています。
これまで幾人ものプレイヤーたちが栄誉とともに腰かけてきたRAGEの王座も、タイトル「Shadowverse」としてはいよいよ残り2つです。
今回の環境も非常にテクニカルなデッキが多く、限りある席を競うには申し分ない舞台が整っているといえるでしょう。
環境を締めくくるGRAND FINALSは3月24日(日) 12時より配信開始です。
恒例の直前放送などもございますので、是非最初から最後まで見届けてください。