最強チーム決定戦

解説の”まる”さん執筆レポート【予選大会直前】RAGE Shadowverse 2024 Summer

Shadowverseの新カードパックとしては最後のリリースとなる「Heroes of Shadowverse / ヒーローズ・オブ・シャドウバース」が実装されてからはやひと月。
多くのプレイヤーが来たるRAGEに向けてデッキの開拓、プレイの洗練を進めてきました。
そんな折、環境に一石が投じられました。
大規模といって差し支えないであろう、12枚に及ぶカードの能力変更です(内ローテーション環境に影響するものは9枚)。

今回は特に人気の高かったデッキにメスを入れるのではなく、他デッキのカード効果を変更する形です。
もともと強いと評されていたデッキについては使用感を概ね据え置きとしつつ環境内での立ち位置を変え、同時に他多数のデッキの底上げを通して競技シーンにおけるデッキ選択の幅を広げる狙いと考えられるでしょう。

カード能力変更からは一週間あまりですが、RAGE予選も目前に迫り、様々なデッキでの試行錯誤が活発に行われている現環境。
このタイミングで、一度どのような環境となっているのか注目デッキを軸に整理しつつ、各デッキと戦うときに押さえておきたいワンポイントに触れていきましょう。
なお、以下呼称されているデッキ名は、ゲーム内「大会上位デッキ紹介」機能にて掲示されているデッキ名をもとに、一部執筆上の都合で別名を用いています。

狂乱ヴァンパイア

「Heroes of Shadowverse / ヒーローズ・オブ・シャドウバース」リリース直後から環境の最前線をひた走ってきたのが狂乱ヴァンパイアです。
過去環境でもたびたび競技シーンに名を連ねたこのデッキですが、今回は特にその対応力の高さが高く評価されており、トップレベルのシェアを誇っています。

特徴

【長所】

  • 回復・除去・ドロー・相手へのダメージといった攻防一体のアクションを1枚で完結できるカードが複数種存在し、抜群の対応力
  • 小粒フォロワーの横展開を軸にアグロ気味に動くプランから、《混沌の魔獅子》のコストカットを活かしたOTKプランまで、ゲームスピードを主体的に選択可能

【短所】

  • 序盤の自傷スピードが速い分、回復カードが引けなかった際の中盤において体力面の不安が存在
  • 《混沌の魔獅子》の引き込み遅れがバーストダメージを狙えるターンの遅れに直結しやすい

 

狂乱ヴァンパイアは新カードで得たものが非常に多かったデッキです。
低コストで効率の良い自傷カードや、1枚で攻防ともに担うことができるカードが追加されたことで、
① 狂乱状態を目指す
② 体力・盤面をリカバリーする
③ 反転攻勢
の3ステップの内 ①の期間が短くなるとともに、②③を同時に行うことができるようになりました。
言い換えれば攻防の切替がスムーズという長所を得たわけで、相手が攻めたそうにしているタイミングで除去や回復を挟んで出足をくじいたり、逆に相手が回復等のケアを怠ったタイミングで素早く体力を詰めにいくなど、相手のアクションを見てから押し引きをコントロールできるのは大きな魅力です。
また、1枚で②③の両立ができることからデッキの枠にも余裕が生まれており、その分ドローソースを増量してデッキの安定性向上にも成功しています。

この通り戦いの幅が非常に広い狂乱ヴァンパイアですが、さすがにOTKを目指すとなるとある程度の時間が必要になります。
OTKとまでは言わずとも、規模の大きなバーストダメージには低コストの《混沌の魔獅子》が必要不可欠です。
そのため、バーストダメージを前提にゲームプランを組み立てる場合は《混沌の魔獅子》の引き込みタイミングがリーサルの早さに直結しやすく、手札交換の基準や、序盤のドローソースの使い方から意識していかなくてはならないでしょう。
一方で現環境ではできればOTKが望ましい局面はあれど、OTK必須とまではいかないマッチアップが多いため、《混沌の魔獅子》の到着が遅れても持ち前の対応力を武器に、分割リーサルを軸に戦うことも十分に可能です。
その場合はコストの余裕があるうちに《ディアボロス・ヘドネ》を先行して通しておくのか、はたまた相手の守護盤面突破用に温存するのかなど、大きな攻勢に出るタイミングの決め方といった別の難しさが現れます。
分割リーサルプランとOTKプランのマッチアップごとの濃淡を事前に検討しておくことで、手札交換や序盤の動き方にメリハリを付けられるようになるかもしれません。
なお、今環境はラストワードでリーダーの体力を回復するフォロワーが一定数存在しますので、リーサルターンに問答無用で相手の盤面を破壊する傾向にある狂乱ヴァンパイアでは早まった打点計算をしないよう注意が必要です。

対狂乱ヴァンパイア

対戦相手に狂乱ヴァンパイアを使用された場合、不要な盤面展開は極力控えましょう。
序盤であれば、《ウェポンテイマー》から《悪夢の使徒》の突進先を提供してしまい、相手の狂乱状態突入を早めてしまう恐れがあります。
そして中盤以降は《鍵盤の悪鬼》や《杯の誘惑者》の攻撃先となってドレインを許してしまったり、《ブラッディネイル》から相手のダメージソースにしてしまったりと盤面展開自体の裏目が多いのが特徴的なマッチアップです。
よしんばこれらの「相手を利する」タイプの裏目を避けられたとて、《真紅のロンド》や《混沌の魔獅子》で盤面に広げた分のリソースを平らげられてしまう「自分が損をする」タイプの裏目も存在しますので、リスクとリターンの天秤はかなりアンバランスと言えるでしょう。
もちろん、出したいカードを軒並み我慢していては自身の勝ち筋を追うこともできませんので、「3ターン目から《混沌の魔獅子》のコストが下がり始めるのが自分のデッキにとってどの程度致命的か」「何点までなら相手に回復されてもリーサルを狙えるか」など、それぞれの裏目に対する具体的な許容範囲をしっかりと見極め、慎重にプレイしていくことが求められます。

ネクロマンスネクロマンサー

正直なところこのデッキをなんと呼ぶべきかまだ迷いがありますが、ここでは「ネクロマンス効果を主軸に置いた攻撃を仕掛けるネクロマンサー」ということでネクロマンスネクロマンサーとしてご紹介します。
こちらもカード能力変更以前から不動の人気デッキで、今回のRAGEでも多くのプレイヤーが使用することが予想されます。

特徴

【長所】

  • コンボ性の低いバーストダメージにより、攻め時を選ぶことができる
  • メインアタッカーのサーチが可能
  • 耐久力が高く、粘った先の《刻限の調律・クロノス》や《因果に抗う者・エレナ》で戦うコントロールプランも

【短所】

  • バーストダメージを出すための条件(墓場・盤面・EP)が公開情報のためケアされやすい
  • 状況によっては硬すぎる盤面を逆手に取られて盤面ロックに陥ることも

 

ここではひとまとめにネクロマンスネクロマンサーとしていますが、冒頭にデッキ画像を2枚掲載している通り、このデッキには大きく機械軸と非機械軸が存在し、機械軸については機械ネクロマンサーと呼ばれることが多いです。
機械軸は小粒な機械カード群が墓場を稼ぎ、《守られた幸福》によって相手のリーサルから身を守ることに非常に長けたデザインです。
ロングゲームを得意とする構造上、体力上限の引き上げも見据えた《コンパッションドミニオン》の採用なども特徴的です。

これに対して非機械軸では《再生の毒林檎》や《双天の恩寵》など墓場効率の高いカードを起用し、機械軸の採用を最小限にとどめることで、空いた枠に《黒き舞踏・オディール》等の攻撃的なカードを追加しています。
機械軸に比べると中盤に積極的な攻撃を行いやすい点が強みの一つと言えるでしょう。
《因果に抗う者・エレナ》のファンファーレ効果で引き込んでくる《友魂の少女・ルナ》と《双天の恩寵》のEP回復カード2種類体制も、アタッカーである《再生の親愛・ルベル》の取りまわしを支えており、墓場管理さえ適切に行うことができれば中盤に波状攻撃を仕掛けやすいデッキ構造となっています。

このようにそれぞれに異なる長所を持つ機械軸・非機械軸ですが、共通した強みはサーチ可能な《再生の親愛・ルベル》1枚だけである程度のダメージを捻出できるため、攻め時を選びやすい点にあるでしょう。
バーストダメージを出すのに多くのカードが必要なデッキでは、攻撃のタイミングを後ろにずらそうと思えば、コンボ用のカードは手札の限られた枠の中で丸ごとデッドスペースとなってしまうので、非常に窮屈なアクションを強いられます。
それに対してネクロマンスネクロマンサーでは、攻撃に必要なのは最小単位で《再生の親愛・ルベル》1枚、加えるとしても《アビスアヴェンジャー・ヴィスカリア》や《アテム》程度で問題ないため、バーストダメージを構成するカードは1~3枚といったところ。
攻めるタイミングを後ろに倒すにあたって、他の手札の枠が多いことから、代わりのアクションを比較的柔軟に選択することができます。

一方で弱点も機械軸・非機械軸を問わず共通したものが存在します。
まずは攻め時を読まれやすいということ。
一見すると上記の「攻め時を選びやすい」長所と矛盾するようにも感じられるこの弱点は、対戦相手目線で「バーストダメージを出す準備が整った」ことが明白になりやすいことによります。
攻撃の核となる《再生の親愛・ルベル》がそのパフォーマンスを十全に発揮するには、5枠の盤面と10ないし20の墓場とEPが必要ですが、これらはすべて公開情報のため、相手目線ではケアすべきタイミングが非常に分かりやすいわけです。
裏を返せば上記条件のどれかが大きく欠けていれば相手は「ここで攻め込まれる可能性は低いだろう」とのびのびとプレイできてしまい、他の多くのマッチアップでありがちな「手札でパーツが揃っているかもしれないから少し安全を見たプレイをしておこう」といった、非公開情報による牽制を効かせづらいのがこのデッキの悩みの種です。
「攻め時を選びやすい」という長所は、そうして相手にケアをされた時にも無理なく攻撃タイミングを後ろにずらせるといった趣旨であり、長所が短所をカバーする反面、短所が長所を相殺してしまっているともいえるデッキ特性を有します。

もう一つの弱点として盤面ロックのリスクを挙げていますが、こちらも機械軸・非機械軸双方に共通します。
機械軸であれば機械フォロワーの多面展開時、特に《守られた幸福》で盤面を強固にした際に盤面の攻撃力が低いのをいいことにロックを仕掛けられてしまうことがあるでしょう。
《再生の親愛・ルベル》が目いっぱい盤面を使うためハーフロックでもそれなりに効果があるとして、《頑強のマンマル1号》さえ盤面に残せれば《紫紺の創造者・エンネア》に当たられてしまうのは構わないと割り切ったフォロワー展開も十分に考えられます。
対して非機械軸における盤面ロックは、主に《黒き舞踏・オディール》と《双天の恩寵》をきっかけにハーフロックとして発生します。
盤面が1つ埋まるタイミングを相手が読めるため、他に小粒のフォロワーが並んでいれば《枕元の不吉》込みでも《再生の親愛・ルベル》は使いづらかろうと強気の盤面ロック進行を仕掛けられることがありえます。
いずれも予め盤面の攻撃力を高くしておくことや展開しすぎないこと、《枕元の不吉》を複数枚抱えておくことなどである程度対処可能なため、盤面展開する際には常にロックされるリスクを念頭に、広げ方を考えていきましょう。

対ネクロマンスネクロマンサー

ネクロマンスネクロマンサーとのマッチアップでは、攻撃面では《頑強のマンマル1号》対策の徹底を、防御面では中盤以降の守護展開のメリハリを意識したいところです。
まず攻撃に関しては疾走フォロワーをバーストダメージの構成要素においている場合、《頑強のマンマル1号》突破が必須となります。
機械軸で《守られた幸福》による体力強化を受けた《頑強のマンマル1号》が強力なのはもちろんですが、非機械軸であってもなまじ攻撃力が0であるため自分の盤面が窮屈になりやすい点は押さえておきましょう。

そして防御に関してはやはり《再生の親愛・ルベル》と《アビスアヴェンジャー・ヴィスカリア》へのケアが欠かせません。
墓場や盤面の空き状況、EPを意識していれば《再生の親愛・ルベル》が来そうなタイミングは読みやすいため、まずはそこに守護フォロワーを合わせることが基本形となります。
ただし、《アビスアヴェンジャー・ヴィスカリア》が組み合わされば2体のフォロワーが処理されてしまいますので、可能ならば盤面を広く作りながら守護フォロワーを2面以上立てることを狙いたいです。
当然それだけ万全な体制で迎え撃てることは多くありませんので、《アビスアヴェンジャー・ヴィスカリア》を割り切るケースや、もらったうえで大量回復を狙うケースなど、中盤以降は次善策を含めて常に手札と相談していくことが大切になります。

アミュレットビショップ

高い防御力を誇りながら、手札の噛み合い次第ではゲーム中盤からバーストダメージも狙っていけるコンボデッキとして環境早期から注目を集めてきたのがアミュレットビショップです。

特徴

【長所】

  • コントロール, 分割リーサル, OTKなど取りえるプランが幅広い
  • 「守護の二重化」ができるため疾走フォロワーに非常に強い

【短所】

  • コストカットを前提としたカードが複数存在するため、手札の噛み合い次第でパフォーマンスが著しく落ちることも
  • 序盤の防御力が低く、体力を失いすぎるとアミュレット破壊数を伸ばす余裕がなくなる恐れあり

 

前環境では活躍の機会に恵まれなかった《契約の双天使》が一躍脚光を浴びることになったアミュレットビショップ。
アミュレットの破壊数を稼ぎやすい《ナテラの宝樹》が追い風となったのはもちろん、《盟約の熾天使》から展開されたアミュレットを即時破壊できるカード群の追加も非常に大きかったでしょう。
これらの追加要素によって《盟約の熾天使》は、従来の盤面押しつけから次のターンまで攻勢を維持する分割リーサルプランのほかにも、アミュレットをすぐに破壊することでOTKや大量回復によるコントロールプランなど、幅広いゲームプランに絡むキーカードへと変貌を遂げました。
アミュレットの破壊も非常に進めやすいデッキ構造のため、早ければ5ターン目には《盟約の熾天使》着地を狙っていけるとあって、取れるゲームプランが幅広い割にしっかりと上振れ要素を兼ね備えたデッキとなっています。
その一方で、仮に《契約の双天使》を引けない場合でも《ジャッジメントシスター・セリーナ》の《断罪の燃焼》だけで十分にバーストダメージを狙うことができるため、攻めるうえでのキーカードの受けが広く、アミュレット10枚の破壊さえ達成できれば、ひとまずの勝ち筋はしっかり見込める隙の少ないデッキタイプと言えるでしょう。

もうひとつ今環境で注目したいこのデッキの長所は「守護の二重化」です。
《盟約の熾天使》自身の守護で身を守りつつ、さらには《盟約の熾天使》が破壊されることで起動する《羽搏く祈り》の《アダマントバード》が再度守護として相手の前に立ちはだかる構造は、狂乱ヴァンパイアやネクロマンスネクロマンサーのように守護フォロワーを突破しながら疾走フォロワーを通そうとしてくるデッキに対する強力なカウンターとなります。
状況によっては《詠唱:聖蛇の加護》によって《盟約の熾天使》を選択不可状態にしたり、《コンコルディア》の直接召喚を合わせたりとより硬い守りを実現することも可能です。

ここまでの長所だけを見れば堅実さが売りのデッキのように聞こえますが、コンボデッキ恒例の弱点はやはり拭えません。
例えば手札事故。
《羽搏く祈り》や《輝く願い》といったコストカットを織り込んだカードは手札に固まりすぎれば事故のもとですが、さりとてゲーム後半まで手札に入ってこないようではそのパフォーマンスを活かすことができません。
また、例えば序盤の盤面事故。
カウントダウンアミュレットを主軸に据えている以上、素早く相手フォロワーにアプローチできる手段は限られており、相手の序盤の盤面展開から大きく体力を削られてしまうリスクは存在します。
アミュレットビショップは体力回復の手段は豊富に持ち合わせており、中盤以降のリカバリーも可能となっていますが、回復の優先度が高くなりすぎれば円滑にアミュレットの破壊数を稼ぐことができなくなり、結果として攻勢に出られるタイミングの遅れを招き、ゲームプランの広さという持ち味を大きく損なうことになります。
手札事故・盤面事故ともに最初の手札交換が肝になりやすいため、RAGEでこのデッキを使用する場合、手札交換の基準を丁寧に検討しておくことが望ましいでしょう。

対アミュレットビショップ

アミュレットビショップとの対戦で特に神経を使うべきポイントのひとつに、EP管理があげられます。
アミュレットビショップの最も効率の良いダメージソースは《断罪の燃焼》ですが、《ジャッジメントシスター・セリーナ》にコストを支払って手に入れる必要があります。
例えばゲーム中盤に《ジャッジメントシスター・セリーナ》に4コストを使用した場合、アミュレットの破壊数は2~4カウントほど遅れるため、《断罪の燃焼》と引き換えにそもそも攻撃に出られるタイミングが遅くなるというトレードオフが発生します。
ところが、EP優位によって《ジャッジメントシスター・セリーナ》を2コスト相当で使用できる場合、アミュレットの破壊数は1~2程度の遅れに抑えられるため、4コスト使用する場合と比べて攻勢に出られる時機が1ターン以上は変わってきます。

加えてゲーム終盤であれば、そもそも事前に《断罪の燃焼》を解消できていなかろうが《ジャッジメントシスター・セリーナ》2枚プレイからそのまま《断罪の燃焼》即プレイという展開も考えられます。
EP差がない限りとても実現できないアクションのため、アミュレットビショップを前にしてはEPを丁寧に温存しておくことで、相手のリーサルを間接的に遅らせることが重要だといえそうです。
余裕があれば《実直の参謀・ムニャール》のEP回復もケアできるのがベストですが、特に先攻時などそこまではケアしきれないような場面も多々存在しますので、最低限場残りしていたフォロワーにEPを切って相手の体力を詰めにいくようなプレイをとる前には、そこで生まれるEP差のリスクを許容できるのか冷静な判断を下すべきでしょう。

ラティカエルフ

環境初期から様々なデッキスタイルが模索された結果、画像のような自然ギミックと《天空妖精・アイリス》ギミックが共存する形に落ち着いたコンボデッキがラティカエルフです。
《植生の化身》のカード能力変更によってやや攻撃性能が上昇しましたが、デッキシェアとしてはカード能力変更前から少なからず存在していた人気デッキと言っていいでしょう。

特徴

【長所】

  • 中盤の自然軸バーストダメージと、8ターン目の《楽園妖精・アイリス》軸OTKの2種類のリーサルを使い分けてゲームスピードの調整が可能
  • 体力をこまめに削っていくことができるため、持ち前のバーストダメージを背景に対戦相手にプレッシャーをかけ続けられる

【短所】

  • 体力回復にやや難があり、マッチアップ次第ではリーサルまでの時間制限がシビアなことも

 

ラティカエルフは今環境が始まっておよそ1か月といったところですが、すでに研究の歴史があるデッキです。
環境初期には最速5ターン目から《大自然の抱擁・ラティカ》のバーストダメージを叩き込みにいく純自然型が、その後には《愛ある抱擁》のサーチ先を《大自然の抱擁・ラティカ》に絞って《楽園妖精・アイリス》でコストを踏み倒すことで圧倒的OTKを実現する純アイリス型が登場しました。
前者であれば中盤の支配力が非常に高い反面OTKのハードルが高めで、ダメージカットや回復などでゲームプランを崩されやすい点が問題視されました。
この課題を解消したのが後者で、《楽園妖精・アイリス》の着地に成功すれば、ダメージカットや守護をものともせず確実なOTKを取りにいけるのが持ち味でした。
ただし、純アイリス軸では8PPを迎えるまではどうあがいてもリーサルをとることができず、結果としてより早いゲームスピードを選択できるデッキ群に対して後れを取ることもしばしば。

こうした経緯をもとに、防御力の高いデッキに対して確実なOTKを狙える《楽園妖精・アイリス》のギミックは残しつつ、ゲーム中盤にも攻撃的なアクションをとるために再度自然軸をふんだんに取り入れたのが現在のラティカエルフです。
当然《愛ある抱擁》のサーチ先はぶれますし、中盤に一気に押し込むプランにおいては《天空妖精・アイリス》が手札でノイズになることもありますが、こうしたハイブリッド路線によっておよそ6 ~ 8ターン目という幅を持たせたリーサル設計が可能になり、マッチアップに応じて柔軟にゲームプランを選ぶことができるようになりました。
特に直近では、《植生の化身》のカード能力変更を受けてややバーストダメージを伸ばしやすくなったこともあり、《フロストエイジプリンセス》を起用して、よりゲーム中盤の攻撃性を高める方向性も垣間見えます。
こうした構築ではややハードルは高いものの、6 ~ 7ターン目にしてOTKを狙えるケースも存在し、序中盤での細かいダメージプッシュが生きていれば早期リーサルのハードルも十分に下がってきます。
仮に削りきれなかったとしても、回復が追い付かない相手に2枚目の《大自然の抱擁・ラティカ》を叩き込む分割リーサルも視野に入るため、マッチアップごとの大局観はしっかりと養っておきたいデッキです。

このように攻撃面において多彩なプランを武器としているラティカエルフですが、ハイブリッド構築の常として、多くのギミックを40枚という枠に詰め込むために犠牲となっている要素も存在します。
このデッキにおいては回復が当たるでしょう。自然軸のカードがいくらかの回復を担ってくれるとはいえ、予め長期戦に注力していた純アイリス型に比べると回復力の差は歴然です。守護フォロワーもほとんどいないため、相手の盤面には丁寧に対応するほか、《シャインクリスタリア・リリィ》を生命線として相手の疾走フォロワーに備える必要があります。
ハイブリッドだからといってどのゲームプランも同レベルで遂行できるわけではないのだということを肝に銘じ、今の自分の手札で戦える範囲がどこまでなのかをしっかりと見極めてリーサルターンを検討しましょう。

対ラティカエルフ

ラティカエルフとの対戦では、マッチアップの理解とこまめな回復を心掛けましょう。
前述の通り、ラティカエルフはリーサルターンに幅のあるデッキなので、相手の本命が6~7ターン目なのか、8ターン目なのかを正しく把握しておく必要があります。
相手のメインプランが8ターン目にあるなら、事前に積極的に攻めて先に詰め切ってしまうか、詰め切れずとも手札を使わせてコンボパーツの欠損に追い込む。
相手のメインプランが6 ~ 7ターン目にあるなら、そこに守護フォロワーかダメージカットを合わせる、もしくは一撃もらった後で一気に回復を狙う。
もちろんもう一方の路線に対して無警戒でいいわけではありませんが、相手の本命のリーサルを意識できれば上記のようにより効果的に対策を打つことができます。

とはいえ前述の通り、やや難易度が高くとも早期のOTKを持っているのがこのデッキの実情で、仮に相手が8ターン目を目指して動いていそうでも、中盤の警戒も怠れません。
高いバーストダメージを持っている以上、ゲーム中盤以降はわずかであれ削れた体力を放置しておくことは極力避けましょう。
幸いにしてラティカエルフは《大自然の抱擁・ラティカ》以外に盤面での脅威度が高いカードは基本的に存在しません。盤面にかける労力が少なく済む分、まめな回復をこなして相手のリーサルを阻み続けることが求められます。

カードゲームの醍醐味が詰まった環境、有終の美は誰の手に

今回はカード能力変更後ある程度環境が落ち着いたところでとりわけシェアが大きかった4デッキを掲載しましたが、競技シーンではほかにも機械進化ヴァンパイアや自然ロイヤル、自然ドラゴンといった環境初期からのデッキ、そして機械ウィッチやアーティファクトネメシスといったカード能力変更の追い風を受けたデッキのそれぞれが上位入賞を果たしており、極めて複雑な環境だと言えます。

また、今環境の多くのデッキに共通する点として「押し引きのタイミングを調整できる」「EPを回復できる」という2つがあります。
このことによって「〇〇ターン目直前だから□□対策をする」「相手のEPがないから〇〇はケアから外していい」といったケアの定石が少ない環境となっており、自身のゲームプランの選択できる幅の広さもあいまって、その場その場での駆け引きが重要度を増しています。
構築の幅が広く、かつプレイ面での機転も問われるというカードゲームの面白さが凝縮された環境にして、EPというShadowverse固有の要素でもしっかりとした読みが求められる、新カードパック最終弾にふさわしいやりごたえと言えるでしょう。

そんな環境で争われる、現行Shadowverse最後のRAGE。
最後の王座に座るにはまず目の前の予選大会を勝ち抜く必要がありますが、激戦は必至です。
選手の皆さんはどうかこれまで培ってきた構築論を、プレイを全力でぶつけてください。そして願わくば、一戦一戦を最後まで楽しんでください。
幕張で皆さんの試合を目にできることを楽しみにしています。

予選大会 Day1

予選大会 Day2

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