2024 Summer

解説の”まる”さん執筆レポート【GRAND FINALS直前】RAGE Shadowverse 2021 Winter

いつも以上の密度で予選が進められてきた今回のRAGE。
あっという間にGRAND FINALSが目前に迫っています。

目まぐるしい環境変化は今なお続き、戦いの舞台をどのようなデッキが彩るのか、その全貌は未だ見通すことができません。
今回のレポートでは、明日に控えたGRAND FINALSを前に直近の環境の推移をおさらいするとともに、現状で使用率が高いと見られるデッキタイプをいくつかご紹介します。

大規模カード能力変更の影響

今回のGRAND FINALSを語るにあたって、10月28日にあった大規模能力変更というテーマは避けて通れません。
トークンカードを含めれば全10枚のカードにわたる能力変更はShadowverse史上でもトップクラスの変更量です。

この能力変更による環境の変化は多くのプレイヤーが現在進行形で感じていることと思いますが、既存のデッキタイプへの影響のうち特に大きかったものは、次のようなコンセプトで整理できるのではないでしょうか。

「手軽な」バーストダメージの禁止

能力変更前に流行をなしたラストワードネクロマンサー・スペルウィッチ・連携ロイヤル。
これらのデッキそれぞれの飛びぬけた性能が何かという問いには多様な答えがありますが、3デッキに共通するものとしては「バーストダメージのハードルの低さ」が挙がります。

ラストワードネクロマンサーは《インモラルディザイア》を手札に加えておくだけで、様々な角度から20点の捻出を検討できました。

スペルウィッチ、あるいはマナリアウィッチも《アルティメット・マジック》という1枚のカードで盤面に依存しない10点が出せたことで、他のダメージソースと組み合わせたバーストダメージ設計は容易だったと言えます。

また、ロイヤルでは《光耀の標・ミストリナ&ベイリオン》と《劇的な撤退》のパッケージの完成度が非常に高く、撤退コンボロイヤルと呼ばれたような純コンボデッキに限らず、幅広いロイヤルデッキがこの2種類のカードで爆発的なダメージを叩き出してきました。いずれも僅かな枚数のカードでゲームを決定づけることができたため、コンボに集約して他を犠牲にするような構築をせずとも、非常にカジュアルにバーストダメージを組み込むことができました。

翻って言えば、隙が少ないデッキが比較的早いターンに対策困難なバーストダメージを捻出できていた状況に待ったがかかったのが今回の能力変更における側面の一つです。
早期のバーストダメージはコンボ特化デッキの手に戻し、他のデッキでは盤面や手札等限定的な条件下でのみバーストダメージを可能に。このような切り口で見てみると、激動の今環境も少し捉えやすくなるかもしれません。

バランス型デッキの台頭

前述の通り、能力変更により多くのデッキタイプがカジュアルなバーストダメージを失いました。当然、デッキの方向性としては「バーストダメージに特化する」「バーストダメージへの依存度を下げる」の2つが発生しています。
前者の方向で模索が進んでいる代表格がラティカエルフ、後者が進化ウィッチや狂乱ヴァンパイアといったところでしょうか。

進化ウィッチ

RAGE Shadowverse Pro League 21-22 第1節でGxGのリグゼ選手が使用した進化ウィッチ

能力変更前から既に流行の兆しを見せていた進化ウィッチ。能力変更後のJCG Shadowverse Open ローテーション大会2回では堂々の使用率1位です。その主な特徴を列挙するならば次のようなものでしょうか。

  • 進化ギミックの活用で序盤から盤面で競り合える
  • 回復が豊富
  • 条件は限られるが20点規模のバーストダメージも搭載

こうして見ると攻防揃ったバランスの良いデッキと言えるでしょう。
多方面に優れたデッキはともすれば器用貧乏の謗りを受けますが、進化ウィッチに関してダメージソースや回復量等「物足りない」と言うのは贅沢というものでしょう。
早期のバーストダメージが環境から減少したこともあり、得意とする7〜9ターン近辺の時間帯を思う存分戦うことができるとして一躍台頭を見せているデッキタイプです。

万能に近いスペックはマッチアップするデッキが多いBO5において隙が小さく、今回のGRAND FINALSでも採用候補の筆頭と見られます。
できることが多彩であるがゆえに、序盤から発生する分岐の数々は見どころとなりそうですが、同時にこのデッキはコストの踏み倒しや大量ドローができない窮屈さを持ち合わせています。
「全体としてできることは多いが、一度に行えることは限られている」というジレンマの中、ファイナリストのプレイにおける取捨選択にも注目したいデッキです。

狂乱ヴァンパイア

RAGE Shadowverse Pro League 21-22 第1節でauデトネーションのSpicies選手が使用した狂乱ヴァンパイア

こちらも能力変更前から愛用者の多かった狂乱ヴァンパイア。
《夜天の吸血鬼》から疾走能力が失われたことでその攻撃性をやや落としましたが、環境全体がスローダウンしたことで影響は比較的軽微に留まっています。
また、環境からのバーストダメージ減少は同時に盤面を絡めて戦うデッキの増加を意味しますが、「交戦によって」「小刻みな回復」を行い「フォロワー破壊がダメージに直結」する狂乱ヴァンパイアにとって非常に噛み合う環境変化だと言えます。

攻守ともに器用にこなす姿は進化ウィッチ同様バランス型デッキとしてのあり方を示していますが、もちろん相違点は少なくありません。
20点規模のバーストダメージは進化ウィッチよりも尚達成困難ですが、逆に進化ウィッチの打点を多様な回復で受け切り、10ターン目の《闇喰らいの蝙蝠》に繋ぐ展開もちらほらと見受けられます。
ドロー性能においても進化ウィッチに勝り、若干ではありますがコントロール色を強めたバランス型デッキだとの見方もできるかもしれません。

やはり癖の少なさからBO5のデッキ候補には挙がりやすいものと思われますが、例えば進化ウィッチ + 狂乱ヴァンパイア等のデッキ選出となる場合、構築単位で大幅に有利を取れる組み合わせも少なくなってきます。
ファイナリストがプレイでの真っ向勝負に身を投じるのか、デッキ選択で鋭い戦略を通しに来るのか、いつも以上に目を離せない戦いとなりそうです。

その他高シェアのデッキ

セッカエルフ

RAGE Shadowverse Pro League 21-22 第1節で横浜F・マリノスの水煮選手が使用したセッカエルフ

今回の能力変更で、とりわけ直接的に強化されたデッキの一つはセッカエルフでしょう。
《原始の悪神》のアクセラレート効果はバウンスのデメリットであるテンポロスを相殺しながら、エルフの特徴でもある低コスト疾走フォロワーの再利用を可能にしてくれるため、攻撃的なセッカエルフと好相性だと言えます。

《瘴気の妖精姫・アリア》による盤面制圧と疾走フォロワーによる攻撃的な動きに加え、バウンスの増加と環境全体がスローダウンしたことで《宿命の狐火・セッカ》によるバーストダメージが繰り出される機会も増えつつあります。
もちろん、そうは言っても20点規模のダメージを一挙に稼ぎ出すことは容易ではなく、ドローソースの心許なさも相まって立ち回りでのカバーが必須となります。

攻め続けているうちに《宿命の狐火・セッカ》のバーストダメージが整うという展開が稀である以上、マッチアップや手札状況を鑑みながらゲーム中盤にはっきりと舵を切る展開になりやすく、GRAND FINALSに登場した場合は思い切った、しかし丁寧な判断を下せるかがポイントとなりそうです。

機械ネメシス

RAGE Shadowverse Pro League 21-22 第1節でAXIZが登録した機械ネメシス

バーストダメージに長けたデッキがその数を減らせば、長いターンを戦うコントロールデッキが勢いを増すのは環境の常です。
機械ネメシスはまさにその環境の動きの中で再び表舞台に姿を現したデッキだと言えるでしょう。

デッキの特徴については前環境までと大きく変わるものではないためここでは割愛しますが、豊富な盤面除去はそのままに、《マスターコック》や《ユピテル》といった守護・回復を担うカードが増加して一層の防御力を獲得しています。
また、コントロールデッキでありながら時に早期決着を可能とする立役者《アブソリュート・トレランス》も、1枚で最大14ものコストカットに貢献する《伝統の花火師・フドー》を相方に据えることで、より脅威度を増したと言えます。

デッキの基本構造はそのままにパワーアップを遂げた機械ネメシスは、前環境までの経験を活かしやすいデッキでありながら、新進気鋭のデッキ群にも見劣りしないパフォーマンスを発揮します。
比較的調整負荷が小さいこのデッキを起用することで、限られた調整時間を有効に活用しようというファイナリストも現れるかもしれません。


この他にもラティカエルフや進化ロイヤル、ランプドラゴン等、まだまだ模索されているデッキは多数存在し、当日のデッキ発表までどのような戦いになるのかは謎に包まれています。
皆さんも是非、「自分ならこの3つ」というBO5の組み合わせに思いを巡らせながら、ファイナリストの選択をお待ちください。

災い、恐るるに足らず

アディショナルカードの実装前でありながら、プレーオフまでとはまるで異なる環境に身を置いてのGRAND FINALS。
この度の能力変更はもちろん環境の流動化を企図したもので、我々のプレイ体験や観戦体験を一層彩ってくれるものですが、この短期間でトッププレイヤーを相手取る最高のデッキ・プレイをいちから仕上げなければならないファイナリスト達にとっては、牙を剥く災いとなりましょう。
しかし、新カードパック実装から僅かな期間で、環境も定まりきらない中開催された予選を見事突破してきた猛者達であれば、きっとこの逆境を乗り越えて、名勝負の数々を見せてくれるはずです。

来たる 11月7日(日) 12時より開幕となるGRAND FINALS。災禍を超え、その名を轟かせる王者の誕生を共に見届けましょう。
※直前みどころ配信は11時40分から開始です。

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