2024 Summer

解説の”まる”さん執筆レポート【GRAND FINALS直前】RAGE Shadowverse 2022 Spring

2022年最初のRAGEもいよいよ大詰め。
2度のカード能力変更を経ていますが、アディショナルカードの実装が早かったこともあり、今回のGRAND FINALSは久しぶりにプレーオフと同じカードプールでの開催となります。
そのプレーオフから約一か月。大きな環境変化こそありませんでしたが、様々なデッキタイプの活躍や採用カードの傾向等、見逃せない変化も少なくありません。

新フォーマット「クロスオーバー」の熱気が凄まじい中ですが、改めて現在のローテーション環境について確認しておきましょう。

対策困難なネクロマンサーが、BO5構成の起点

BO5で争われるGRAND FINALS。BO3だった先日のプレーオフであっても7クラスが確認された今環境において、対戦相手のデッキを読み切って対策を張っていくのは並大抵のことではありません。
結果として相対的に、幅広いデッキに対して自身の勝ち筋を押し付けていけるデッキの評価が高くなりやすく、その筆頭候補に挙がるのが進化ネクロマンサーです。

進化ネクロマンサー

JCG Shadowverse Open 20th Season Vol.36 3月11日 ローテーション大会 優勝 ゆうまー選手の進化ネクロマンサー

純進化型やラストワード型など複数のタイプが存在し、細かい採用カードのカスタマイズ幅も広かった進化ネクロマンサーですが、環境終盤ということでその内容もかなり収束してきました。
現在、タイプとしては《忌まわしき再誕》や《鎖杖のネクロマンサー》のカードパワーを評価したラストワード型が大多数となっています。

環境のトップをひた走る人気の要因は、豊富なドローに裏打ちされた再現性もさることながら、多岐に渡る対策困難なリーサルパターンにあると言えるでしょう。
大きく分けて分割リーサルとワンショットの2パターンで考えることが多いですが、どちらのパターンも相手取る側にしてみればタイミングを掴みづらく、守護も機能しにくいため非常に厄介です。
一方でネクロマンサーを使う側にとっても、展開した盤面からのダメージを織り込んだり、ドローを重ねる際リーサルの受けをどこまで残すべきかなど、そこかしこに考慮すべきポイントが潜んでいるデッキです。

    • 分割リーサル

2ターン連続で疾走フォロワーを叩き込み、合計点で20以上のダメージ捻出を狙う形です。
間に相手の行動が挟まるため、後述のワンショットよりも安定性に欠けますが、次のような利点も多いプランと言えます。

      • 2ターンがかりのため、使えるコストが大きい
      • 2ターンがかりのため、最初のターンにプレイするフォロワーを次のターンのダメージソースとみなせることがある
      • 1ターン当たりのダメージ量はワンショットに比べ小さくて構わないため、早期に仕掛けていける

多くの場合《スケルトンレイダー》が絡むプランのため、盤面の押し付けが同時進行しており、対戦相手に盤面処理・回復・守護等複数のアクションを要求できます。
一方でワンショットプランに比べて1枚多いドローや、相手のアクションという不確定要素を抱えるため、ダメージ量の見積もり方は非常に繊細です。
本体・結晶いずれでも相手のターンという不確定要素の振れ幅を抑えてくれる《セレスト・マグナ》の有効活用はもちろん、そもそも相手の回復や守護をどこまで許容範囲に入れるか、プレイヤーの計画性が問われるプランとなります。

    • ワンショット

このデッキの強みであるドローと進化回数を活かし、1ターンで20点を叩き出せるよう手札にダメージソースを溜めこんでいくプランです。1ターンで確実に勝てる形を狙うため、当然ながら不確定要素の減少と引き換えに時間を要します。主に次のような条件が要求されやすく、達成スピードと相手のリーサルの速さを天秤にかけてプランを調整していく判断力が求められます。

      • 《スケルトンレイダー》《鎖杖のネクロマンサー》を1ターンで合計3枚以上場に出せる
      • 相手の盤面に複数のフォロワーが存在する

このうち前者の条件は「ネクロマンス合計20の達成」や「盤面を空けられる《クランプス》の存在」などさらに複数の条件に分けて考えられ、分割リーサルとの比較をする上で常に意識する必要があります。

セッカエルフ

JCG Shadowverse Open 20th Season Vol.34 3月6日 ローテーション大会 優勝 澤田唯吹選手のセッカエルフ

トップシェアの座こそ進化ネクロマンサーに奪われましたが、依然環境の中心ほど近くで存在感を放っているのがセッカエルフです。
《宿命の狐火・セッカ》と《万緑の回帰・ラティカ》による2種類のバーストダメージを武器として、採用カードのカスタマイズによって重視するプランを微調整してきたデッキでもあります。

プレーオフ時点からの変化はいくつかありますが、大きなものは以下2種類のカードの再起用でしょうか。

      • 《妖花の捕食者》

プレーオフでは代わりに《ヒーリングフェアリー》をフル投入し、《輪廻する回生》等バウンスカードも増量した、いわゆる「ラティカ寄せ」構築が目立ちましたが、現在では《妖花の捕食者》も再び使用されています。
もとは進化ネクロマンサーの分割リーサルに対して、バウンスを絡めた大幅な体力回復で対抗する役割が大きかった《ヒーリングフェアリー》ですが、
マッチアップの理解が進み、進化ネクロマンサー側がワンショットにも意識を向けるようになったことで、《ヒーリングフェアリー》は活躍のシーンが少しばかり減少しました。

また、《瘴気の妖精姫・アリア》のリーダー付与効果を得られていない状況下で20点のバーストダメージを狙う際、
《フォレストレンジャー・ウェルダー》のバウンス及び進化というアクションを《妖花の捕食者》で代替できるため、ゼロコスト相当のカード1枚と進化ポイント1つ分手札の要求値を下げてくれることがあるカードとして、再評価を受けている側面もあります。

      • 《リバースブレイダー・アマツ》

一時数を減らした《リバースブレイダー・アマツ》も、3枚採用が盛り返してきたように見受けられます。変化の背景には様々な要素が考えられますが、やはり大きいのは連携ロイヤルの存在でしょう。連携ロイヤルの強固な盤面を崩すためには、たとえ《瘴気の妖精姫・アリア》をプレイできていても、かなりの手札を注ぎ込まされる恐れがあります。《リバースブレイダー・アマツ》であれば手札を温存したまま相手の盤面に対処でき、進化ポイントを失った終盤戦でも全体除去効果を活かしていくことができます。

もちろん、もともと枚数を落とした理由である「狭い盤面を放置されると次ターン以降のアクションを大きく制限されてしまう」という欠点は据え置きのため、マッチアップによって価値が大きく変わるカードとして、慎重な扱いが求められそうです。

プレーオフで頭角を現したデッキ

連携ロイヤル

JCG Shadowverse Open 20th Season Vol.36 3月11日 ローテーション大会 準優勝 うさぎと猫と少年の夢選手の連携ロイヤル

《撲滅の兵団長》の能力変更を受け、プレーオフ前後の時期から一躍環境にくい込んできたのが連携ロイヤルです。

比較的コンボ色の強いデッキが多い今環境にあって、相手の準備が整わない序盤から積極的に盤面攻勢を仕掛けられるとあって、研究が進んだデッキになります。
5ターン目に《銃士の誓い》と《撲滅の兵団長》を重ねた盤面を形成して詰ませにかかるプランや、
序盤戦の体力的リードを活かして《忠義の剣士・エリカ》等の疾走カードで後半戦を逃げ切るプランなど、安定したコンボがないからこそ「相手ができること」の上限を正確に推し量れるかどうかが勝敗を左右します。

その一例とも言えますが、全体除去に長けたドラゴンも同時期に台頭してきており、《スケルトンレイダー》ケアにならんで《烈絶の侮蔑・ガルミーユ》ケアが求められる環境となって来ました。
ドローソースの少なさとコストカーブの軽さから、他の環境デッキに比べると継戦力には劣るため、
わずかな打点不足がそのまま致命傷となりえるこのデッキでは、交戦の仕方に細心の注意を払い、リーサルから逆算して必要な盤面の攻撃力をいかにして残すか、職人芸が光るシーンも見られるかもしれません。

バーンドラゴン

JCG Shadowverse Open 20th Season Vol.33 3月5日 ローテーション大会 優勝 Soda選手のバーンドラゴン

アディショナルカード《烈絶の侮蔑・ガルミーユ》を携え、一層攻撃性を増したのがバーンドラゴンです。

ブーストしたPPから繰り出される疾走フォロワー・バーンダメージの数々は苛烈の一言につき、手札が噛み合った際のリーサルターンは進化ネクロマンサーやセッカエルフに勝るとも劣りません。
シンプルにデッキの打点総量が増えたことによる《竜槍の戦士・ローウェン》への依存度低下や、《灯火の烈絶》によるドロー力強化等もあり、安定感の底上げがなされている点は見逃せません。

このようにシンプルなゲーム設計が持ち味のデッキではありますが、一方でマッチアップごとにパフォーマンスを大きく変えるカードも存在します。
《ブリザードハート・フィルレイン》は対セッカエルフの貢献度が高いのは言うに及びませんが、対進化ネクロマンサーでもバーストダメージを大きく抑えてくれます。
また、《ティアマト・マグナ》は対フォロワーのダメージ効果・破壊効果に乏しいロイヤルやネメシスとのマッチアップにおいて、結晶でのプレイが一気に勝ちを引き寄せることがあります。
とりわけ対ロイヤル戦では、本体効果の回復・全体除去も大きな役割を持つため、使い方・タイミングともに狙い澄ましていきたい1枚と言えるでしょう。

全体的に、特大のバーストダメージを持たないからこそ攻撃のターンを複数貰うことが大切なデッキであり、その時間をいかにして作り出すのか、という準備段階に目を向けることで、いっそう観戦を楽しむことができるのではないでしょうか。

アーティファクトネメシス

JCG Shadowverse Open 20th Season Vol.35 3月9日 ローテーション大会 優勝 ももかん選手のアーティファクトネメシス

もともとアディショナルカード追加前から一定の勢力を誇っていたものの、直近でますます気炎を上げてきたのがアーティファクトネメシスです。

《奏絶の破壊・リーシェナ》の追加は、《パラダイムシフト》のコストダウン円滑化と盤面展開力の強化という2つの側面での強化をもたらしました。
これにより《ギガスファクトリー》に頼らずとも、早期の被破壊アーティファクト6種類達成から《パラダイムシフト》を絡めたバーストダメージを捻出しやすくなっているため、
パラダイムシフトの枚数を増やす《スパイデバイス》やアーティファクトの種類を稼ぐ《多腕のアーティファクト》なども起用が増えています。

従来の《ギガスファクトリー》下での連続操作の難しさもさることながら、
《新約・黒の章》で盤面に依存しない打点を出せるようになったことで、手札コントロールに長けた《奏絶の独唱》とのチョイスに頭を悩ませたり、
複数のリーサルパターンを見据えて手札を温存したりと、考えるべきポイントが大幅に増加しています。
盤面展開力の向上も軽視できるものではなく、先に触れた連携ロイヤルのように、対エルフ・ネクロマンサーなどで序盤戦を制したのち《パラダイムシフト》で逃げ切るプランにも検討の価値が出てきています。
総じてBO5というマッチアップの多いレギュレーションでは、入念な研究によるプランの素早い取捨選択が求められるデッキであり、使い手の手腕が問われることとなります。

この他にも、エルフに照準をあてた混沌の流儀ウィッチや、ネクロマンサー・ドラゴンに対抗する回復ビショップ等、 BO5を意識する上で議論の遡上にあがるデッキはまだあります。
ほぼ確定採用に近いデッキが存在する反面、採用デッキの選択肢自体は豊富にあり、当日蓋を開けてみるまでどんなマッチアップになるか予想しにくい戦いとなりそうです。

最果ての試練へ

改めて今シーズンのローテーション環境を概観してみましたが、いかがでしたでしょうか。
プレーオフと地続きの環境にして、かつ1か月の準備期間をおいての激突ということで、昨年とはひと味違う展開も起こりえるかもしれません。

GRAND FINALSは 3月21日(月・祝) 12時よりスタート予定です。
新たなRAGEを制し、その栄誉と賞金を手にするのは一体誰なのか。是非ご自身の目で見届けてください。

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