最強チーム決定戦

解説の”まる”さん執筆レポート【GRAND FINALS直前】RAGE Shadowverse 2022 Summer

いよいよ開催となるGRAND FINALS。

久しぶりのオフライン有観客開催ということで、サイドイベントや物販も盛りだくさんです。是非多くのかたにご来場いただき、楽しんでいただきたいところですが、やはり目玉はファイナリストたちによる熱いバトル。
「Edge of Paradise / 天象の楽土」環境の頂点を決める戦いを目前に控えた今、トップレベルのプレイヤーの戦いを余すことなく楽しむため、今環境のポイントを整理してみましょう。

RSPTに見るBO5戦略

まず、今環境のBO5はこれまでの中でも指折りの複雑な環境と言えます。その主な理由は2つ。

  • 使用率上位のデッキタイプに分かりやすい弱点が存在しない
  • メタデッキのクラスが使用率上位デッキと被る

今シーズンのBO5の難しさの根本を理解することで、よりファイナリストのデッキ選択や、当日の実際のマッチアップにおける趨勢を深く楽しめるはずです。
先日行われたRAGE SHADOWVERSE PRO TOURでの、プロ選手たちのデッキ選択を振り返りながら、BO5における環境の特徴を掘り下げていきましょう。

王道の上位デッキ構成

RAGE SHADOWVERSE PRO TOUR 1st Season ローテーション 優勝 AXIZ所属・Rumoi選手の選択デッキ

まずは、劇的な決勝戦で視聴者を大いに沸かせたRumoi選手のデッキ選択です。
順に連携ロイヤル・スペルウィッチ・フラム=グラスネクロマンサーという選択となっていますが、BO5に限らず、今環境の競技シーンで最も使用率の高い3デッキと言っていいでしょう。

シンプルに出力の高い3デッキを選んだこの構成には、
「相手のデッキ選択・出し順の影響を受けにくい」というメリットがあります。
上記の3デッキは明確な苦手マッチをあまり持たないがゆえに、対戦相手がどんな3デッキの組み合わせであれ、デッキの見せあいの時点で大きな不利を背負うことはありません。
当然ながら戦いづらいデッキタイプは存在しますが、どれをとっても絶望的というほどではなく、いわゆる「当て負け」の際にも全てのマッチでしっかりと勝利を見据えることができるのは、ひとえに平均的なデッキパワーの高さのなせる技でしょう。

これまで多くの場合、環境トップと呼ばれるほどのデッキは同時期に1~2個ほどだったため、3つのデッキを用意する必要があるBO5では、死角の少ないデッキ選択は非常に難しい傾向にありました。
ところが今環境では、BO3単位でも3ヵ月弱の間ずっと使われ続けてきたデッキが3つ(あるいはそれ以上)存在します。
そのため、オールラウンダータイプのデッキだけで選択枠を埋めきることができ、手堅い布陣を敷くことが可能なのです。

ただし、今環境は上記3デッキ以外にも多数のデッキが競技シーンで名をはせたシーズンでもあります。
対戦相手が異なるデッキタイプを採用しているからといって、単純な出力差ですぐに優位を取れるほど甘い環境ではないと言い換えることができるでしょう。
脇を固められるメリットがある反面、構築単位での有利をとることには消極的。
総じて「プレイ以外の負け筋をなるべく排する」ことに重きをおいたデッキ選択であり、取りあげた3デッキがいずれも分岐の多いものであることも踏まえると、とりわけ使い手にハイレベルなプレイを要求する組み合わせだと言えます。

連携ロイヤルであれば、シャドウバースの基礎にして奥義の盤面形成やフェイスオアトレード(盤面を取るか、相手の体力を奪うか)の選択。スペルウィッチやフラム=グラスネクロマンサーであれば、シャドウバースの華とも称される盤面ロックや、互いの回復・ダメージカット手段を考慮したリーサルの間合いの読み合いなど。いずれのデッキにも分かりやすい「巧さ」があり、使い手によって生まれるドラマがあります。他のデッキに比べて一層、極めたプレイが勝敗に直結しやすい構成として、GRAND FINALSでも目が離せない戦略となりそうです。

3タテ狙いのメタデッキ構成

RAGE SHADOWVERSE PRO TOUR 1st Season ローテーション 本戦出場 auデトネーション所属・Spicies選手の選択デッキ

デッキ公開とともに大きな反響を呼んだSpicies選手のデッキ選択
順にユキシマウィッチ・バフドラゴン・ラストワードネクロマンサーです。
使用率上位の3デッキを全て外し、特定のデッキに勝つことに特化した、いわゆるメタデッキで手持ちを固めた大胆な構成となっています。
上記のパターンは特にスペルウィッチを標的とした組み合わせになっており、採用カードレベルでスペルウィッチを意識したチューニングが前面に出ます。

今環境のメタデッキ戦略の大きなメリットは
「標的以外のデッキとのマッチアップをしっかりと戦い抜ける」ことにあります。
例えば上記のSpicies選手の選択。

ユキシマウィッチは今環境の中でも特に尖った相性関係にあるデッキですが、自らの盤面を空けながら素早いバーストダメージ捻出が可能なことから、スペルウィッチの他フラム=グラスネクロマンサーに対しても比較的優位に立ち回りやすいことで知られます。
また、バフドラゴンであれば「体力バフを起点とした盤面形成と疾走・バーンダメージによる詰め」、ラストワードネクロマンサーであれば「《忌まわしき再誕》による盤面制圧と疾走フォロワー群のバーストダメージ」といった形で、マッチアップに寄らない強固な勝ち筋を持っています。

BO5におけるメタデッキ構成は「相手のデッキ数が多いほど、標的としたいデッキが選ばれている確率が上がる」とのシンプルな大前提に支えられる戦略ですが、加えて「仮に標的を外しても、他のデッキに対して十分に勝ちを狙える」ともなれば、一層魅力的に映ります。

ところが、この構成もいいことばかりではありません。
まず、王道構成で触れたとおり、今環境の人気デッキには目立った弱点がありません。
メタデッキを持ち込み、狙い通りのマッチアップが実現したとしても劇的なまでの相性差は望めないのです。
加えて今環境では、「メタデッキのクラスが王道構成のクラスと被る」という特徴が存在します。
ユキシマウィッチを使えばスペルウィッチが、
ラストワードネクロマンサーを使えばフラム=グラスネクロマンサーが使えなくなるわけです。
このことは直接的には後述のハイブリッド構成を苦しめる制約であり、一見するとメタデッキだけで構成を固める場合には関係なさそうですが、状況はそう単純ではありません。
対戦相手がこれらメタデッキを部分的にせよ使用した場合、この戦略で標的としたかったデッキが結果的にいなくなってしまうのです
先ほど「相手のデッキ数が多いほど、標的としたいデッキが選ばれている確率が上がる」というBO5における前提をお話ししましたが、それを根拠にメタデッキを選択するプレイヤーが多くなるほどに、この前提そのものが覆ってしまうというジレンマ。
プレイヤーはこのジレンマを踏まえて、実際にどれだけ標的デッキが存在しそうか冷静に見極めなくてはならないでしょう。

上記のメリットや難点を鑑みると、

  • 過去環境に比べて、デッキ単位での有利不利は小幅になる前提に立つ
  • 標的にできるだけの多数派デッキは何か、そしてその総数を的確に見積もる必要がある

といったポイントを十分に押さえたうえで評価したい構成だと言えそうです。
この戦略の勝利の鍵は、複雑なBO5環境で勢力図を読み切る洞察力、そして標的以外のマッチアップを勝ち切るためのプレイの研究といったところにあるのかもしれません。
BO3ではあまりお目にかかれないデッキも登場しやすいため、GRAND FINALSで登場することがあれば、我々をあっと驚かせてくれることでしょう。

バランス重視のハイブリッド構成

RAGE SHADOWVERSE PRO TOUR 1st Season ローテーション 準優勝 福岡ソフトバンクホークスゲーミング所属・MURA選手の選択デッキ

決勝戦で惜しくも敗れたものの、本戦全体を通して快進撃をつづけたMURA選手のデッキ構成スペルウィッチ・フラム=グラスネクロマンサー・宴楽ヴァンパイアです。
環境主流のデッキを主軸に据えつつ、連携ロイヤルを標的として変化球を織り交ぜてきた構成といえます。
スペルウィッチの《リミットスペル・バーゼント》や、
フラム=グラスネクロマンサーの《マッドネスリーパー》など、
採用カードを人気デッキとのマッチアップに寄せているのもメタ構成の気配を感じさせます。

その強みとしては、人気デッキの安定感を基盤にしつつ、局所的に構築単位で有利を取れることが挙げられます
また、メタデッキ構成のように「ある1つのデッキに強い構築を3本用意する」といったことは必要なく、尖った相性関係を持つデッキを1~2個用意する形となるため、デッキを仕上げるハードルは幾らか低くなります。
今環境では条件に該当するデッキが複数存在し、その多くがメタデッキ構成の節で触れた「仮に標的を外しても、他のデッキに対して十分に勝ちを狙える」だけの出力を兼ね備えているため、ターゲットを外した際のリスクが致命的でないことも追い風といえるでしょう。

ただし、先に触れた「メタデッキのクラスが王道構成のクラスと被る」という問題。
これはこうしたハイブリッド構成に牙をむいてきます。
ハイブリッド構成とはいわば王道・メタ双方のデッキを扱う戦略のため、メタデッキを使えば王道デッキが使えないという状況はそのまま、組み合わせの選択肢減少を意味します。
特に今環境では、ウィッチ・ネクロマンサーがこの問題を抱えており、対戦相手のウィッチやネクロマンサーが自分の狙い打ちたいデッキタイプである確証がありません。
そのためクラスとしては王道デッキしか存在しない、すなわち相手が構成に入れている可能性が高い連携ロイヤルを標的としつつ、自分は逆に標的にされるパターンを回避するためロイヤルを外す、ウィッチ・ネクロマンサー・対ロイヤルの構成に落ち着いてしまいやすい状況にあります
思惑通りロイヤル入りの構成と当たればやや有利に戦える反面、ハイブリッド構成の選択肢が少ないために読まれやすい構成でもあり、ウィッチやネクロマンサーを王道で構成する場合は、ロイヤルを含まないメタデッキ構成と会敵しても、全面的な不利を被ることのないよう、限られた選択肢の中から3rdデッキを慎重に吟味しなくてはなりません。

選択肢が限られているからこそ、デッキ選択の時点で様々なパターンに配慮する必要があるため、GRAND FINALSでお目見えした際には、是非その組み合わせにどんな意図が隠れているのか推理してみてください。
また、部分部分での有利マッチ・不利マッチを前提とした構成のため、王道3本・メタデッキ3本などの構成に比べて、出し順の要素がより大きくなります。
いかに一方的に有利なマッチアップを消化していくかという、生の読み合いを楽しみに見届けたい構成といえるでしょう。

猛者たちの共宴

今回は個々のデッキではなく、今回のBO5環境の難しさにフォーカスしたレポートとさせていただきました。
というのも現在は、3ヵ月弱にわたってカード能力変更がなく、アディショナルカードの環境への影響も軽微という、かつてない地続きの競技シーンにあるからです。
ファイナリストたちは予選大会のプレーオフトーナメントを勝ち抜いたスキルを土台に、この大舞台を制するための戦略と、ひとつながりの環境で極限まで磨き上げられた腕をひっさげ、我々の前にその雄姿を見せてくれることでしょう。

来たるGRAND FINALSは 6月19日(日) 11時より開幕です。お近くのかたは是非会場のベルサール秋葉原で、残念ながらご来場の難しいかたは配信にて、ともに最高峰の戦いを共有できることを楽しみにしています。

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