2024 Summer

解説の”まる”さん執筆レポート【GRAND FINALS直前】RAGE Shadowverse 2023 Summer

Shadowverse 7周年に盛り上がるまさにこのタイミングで、RAGEの王者が再び決まろうとしています。

今環境は複数回のカード能力変更を経て、目まぐるしく変化を続けてきました。
そんな中、アディショナルカード追加後の公式大会としてのBO5は環境終盤のこのGRAND FINALSにて初めてのお目見えとなります。BO3からさらに複雑になるBO5環境。
観戦にあたって事前に押さえておきたいポイントを確認していきましょう。

RSPTから見るデッキと環境の相性

先日開幕したRAGE SHADOWVERSE PRO TOUR 23-24(以下RSPT)。
その1st Season 予選で、アディショナルカードの追加、及び一部カード能力変更後とあって、カードプールは今回のGRAND FINALSと同様のものでした。
ここでは、RSPTローテーション選手のデッキ選択から、この環境の傾向を探っていきましょう。

RSPT 1st Season 予選での使用デッキは上記の通りです。
《御宿の幽霊犬》の能力変更直後というタイミングでしたが、依然として多くのプレイヤーが葬送ネクロマンサーを高く評価していたことがうかがえます。
事前にあった《ヴァイスソウルハンター》の能力変更に加え、アディショナルカード《霊床震脚》や《ミカエル》の登場で活躍の場を広げた葬送ネクロマンサー。
まずはその特徴を見てみましょう。

葬送ネクロマンサー

RSPT 1st Season 予選:レバンガ☆SAPPORO Era53選手の使用デッキ

やはり派手な長所としては、《滅屍の執行者・ミロエル》が絡む 6 PP以降の攻撃力があがります。
毎ターン 6 点ずつダメージが積み重なるというのは紛れもない脅威で、いかに回復が豊富なデッキであっても、耐えきることは極めて困難です。
したがって対葬送ネクロマンサーの長期戦は敬遠されやすく、多くのデッキが 7 ~ 8 ターン目のリーサルを目指す現在の環境が出来上がっています。

もうひとつこのデッキの長所と言えるのが、強力な盤面除去です。
《滅屍の執行者・ミロエル》以降の全体除去はもちろん、ゲーム序盤から《魂の岐路・ラカンドウラ》直接召喚によって、相手の盤面形成を許しません。
さらにアディショナルカード《ミカエル》が追加されたことで中盤の除去性能も向上したため、終始高い盤面除去性能を維持できるようになったのが、今環境の葬送ネクロマンサーです。
いずれのカードもコストを支払わない、あるいはドロー等他のアクションに付随する「ながら除去」であるため、「盤面への対処を迫ることで相手の攻め手を止める」といった対抗策も効果が薄いと言えるでしょう。
相手の盤面からのアプローチを徹底的に食い止めることができるため、守護や回復が乏しいという弱点も、簡単には突かれないよう一定のカバーができています。

上記に加えて、《滅屍の執行者・ミロエル》の盤面展開も無視できない圧力があることを踏まえると、今環境の葬送ネクロマンサーと渡り合うには、以下の条件を満たす必要がありそうです。

  • 7 ~ 8 ターン目のリーサルに再現性がある
  • ただしそのリーサルは相手の除去の影響を受けない、疾走やバーンダメージといった手段で実現できなくてはならない
  • 事前に盤面のフォロワーで相手の体力を削ることを前提としてはいけない
  • 6 ターン目に強力な全体除去が可能

文字に起こしてみるとなかなかに頭を抱えたくなる条件ですが、これを満たすデッキは実際に存在します。
そのひとつが、RSPTで 2 番手の使用率を誇ったディスカードドラゴンです。

ディスカードドラゴン

RSPT 1st Season 予選:横浜F・マリノス あぐのむ選手の使用デッキ

持ち前のPPブーストが上手く決まれば、6 ターン目には《金色の威信・リュミオール》が猛威をふるうディスカードドラゴンですが、そのダメージは大半をバーンダメージに頼るものゆえ、律儀に盤面を取り合う必要はありません。
相手の盤面をいなしながらコンボパーツを揃え、OTKや分割リーサルを狙う戦い方は、対葬送ネクロマンサーでも有効と言えるでしょう。
特に回復に乏しい葬送ネクロマンサーに対しては分割リーサルも狙いやすく、リーサルに向けた選択肢が広く持てるマッチアップです。

上記の通りデッキとしてはOTK手段を手に入れ、攻撃性を増した格好ですが、今環境にあって際立つのはその防御力です。
回復カードの質・量ともに優れており、相手の《滅屍の執行者・ミロエル》プレイ以降も比較的体力を高く保ちやすいことから、対葬送ネクロマンサー戦で 8 ターン目をもらいやすく、状況次第では 9 ターン目を迎えることも可能です。
加えて、先に述べた対葬送ネクロマンサー戦の条件「リーサルを疾走・バーンダメージで構成しなくてはならない」の存在によって、葬送ネクロマンサー以外のデッキの多くで、疾走カードの採用が見られます。
そして疾走カードに対してめっぽう強いのが《黒白の乱舞・ノール&ブラン》。盤面形成はそこそこに、疾走フォロワーで瞬間的に打点を出す方向に環境が集約されてきたことで、このカードの活躍がいっそう目立つようになりました。
アディショナルカードの採用は特にありませんが、アディショナルカードの登場に伴う環境の変化によって、立ち位置が良くなったデッキタイプだと考えられます。

ディスカードドラゴンの他にも、葬送ネクロマンサーに対してしっかりと戦っていけるデッキは存在しますが、やはり疾走フォロワーを通しにいく都合上、葬送ネクロマンサーを意識すればディスカードドラゴンへのガードが下がってしまうジレンマに苦しんでいます。
その一例がマナリアウィッチと言えるでしょう。

マナリアウィッチ

RSPT 1st Season 予選:よしもとゲーミング だーよね選手の使用デッキ

《マナリアの双姫・アン&グレア》の能力変更により耐久力が向上したマナリアウィッチはいっとき、 7 ~ 8 ターン目のリーサル再現性が非常に高いデッキとして、多くのプレイヤーに使用されていました。しかし、RSPTでいざ蓋を開けてみると、使用者はなんと 2 名のみ。デッキ公開時にはSNSも騒然としましたが、その減少の理由はどこにあるのでしょうか。

まず、マナリアウィッチの強みですが、ひとつにはそのOTKの再現性があげられます。
豊富なサーチによってキーカード《マナリアの双姫・アン&グレア》を引き込み、《双姫の大魔術》のコストも安定して落とすことが可能です。
《双姫の大魔術》の盤面除去性能も相まって、そのリーサルを防ぐことは極めて困難なデザインとなっています。
実際、今環境においてもスムーズに回ったマナリアウィッチは手の付けようがなく、7 ターン目に20 点オーバーのダメージを叩きつけられることも稀とまでは言えないでしょう。

しかし、マナリアウィッチのリーサルはほぼ疾走フォロワーによって構成されているため、前述の《黒白の乱舞・ノール&ブラン》が天敵となります。
4/4 というスタッツも《アンの大英霊》の相打ちを狙えないサイズ感となっており、必然多くても 4 体の疾走フォロワーでのOTKを要求されやすいマッチアップです。
もちろん、対抗策として《反転する翼》があるほか、そもそもディスカードドラゴンがまとまった数の《黒白の乱舞・ノール&ブラン》を準備しきれない展開などもあり、目立って不利と言うほどの相性差はありませんが、マナリアウィッチを選択する競技的なうまみが減じてしまっているのは間違いないでしょう。

これと似たもどかしさは、対葬送ネクロマンサー戦にも見受けられます。
これまでのマナリアウィッチを支えていた要素のひとつに《マナリアの双姫・アン&グレア》進化による除去・回復があったのは多くの人が頷くところかと思いますが、そのアクションが《滅屍の執行者・ミロエル》と噛み合わないことが問題です。
後攻のネクロマンサーが《メタトロン》に進化を切れなかったケースを除き、最速の《マナリアの双姫・アン&グレア》の直後に《滅屍の執行者・ミロエル》が登場する流れとなるため、全体除去も回復も本当に必要なタイミングとはずれてしまいやすいのです。
かといって《マナリアの双姫・アン&グレア》のタイミングをずらせば、自身のリーサルも遅くなってしまいます。
結果として、リーサル速度を落とさずに《滅屍の執行者・ミロエル》に対抗する手段として《マナリアの詠唱者・クレイグ》が要求されるケースが増え、気の抜けない戦いとなっています。やはり相性不利に直結するほどの痛手ではなくとも、マナリアウィッチの長所が活かしきれない環境の様子がうかがえます。

そこで、という表現が適切かは難しいところですが、マナリアウィッチのような「早く、再現性の高いリーサル」を標榜して現れたデッキがあります。ウヌエルビショップです。

ウヌエルビショップ

RSPT 1st Season 予選:レバンガ☆SAPPORO rikka選手の使用デッキ

ウヌエルビショップは《翼天の執行者・ウヌエル》を軸に、7 ターン目での決着に集中したコンボデッキです。
アディショナルカード《有翼の光輝・ガルラ》の登場によって小回りが利くようになったこともありますが、このデッキが活躍するようになった背景には、やはり葬送ネクロマンサーが存在します。

このデッキの特徴は上図に記載の通りですが、リーサルターンが早い代わりに防御面に難のある、ピーキーなデッキであることが見て取れます。
もちろん、全体除去・回復を高い水準で両立できる《廃滅のスカルフェイン》のコストを早期に落とすことができれば、防御面の隙はかなり小さくなります。
ただし《廃滅のスカルフェイン》のカウントの進みが遅ければ、全体除去は《フェザーテンペスト》に頼ることとなり、そもそもフォロワー自体が少ないこのデッキでは、計画的な使用が求められることとなります。
そのほかの除去は枚数は決して少なくありませんが、ランダム効果であったり、ダメージが 3 点ほどであったりと手堅い防御にはさほど向きません。
回復についても《オーキッドの試験場》から特に回復量の多い《プラムの試験場》をチョイスするには除去やドローに余裕がなくてはならず、安定した回復として計算に入れることは難しいでしょう。

こうした課題を抱えながらもこの環境で活躍を見せているのは、端的に言えば盤面にフォロワーが出にくいからです。
前述した葬送ネクロマンサーの盤面除去力を前に、競技環境のデッキの多くは強力な盤面形成からは手を引きました。
そのため、多少覚束ない除去であってもリーダーの体力を保ちやすい環境となり、本格的なダメージも発生するのは対葬送ネクロマンサーを意識した 7 ターン目付近となりやすいのが現在の環境です。
大きな被弾をする頃には自身のリーサルターンが訪れるため、強力な回復がなくとも勝利を掴むことができるという構図ですね。

7 ターン目をターゲットに据えたリーサルを持ち、かつ《廃滅のスカルフェイン》や《フェザーテンペスト》が絡めば守護による突破は困難で、《黒白の乱舞・ノール&ブラン》に対しても《信仰の一撃》のようなひとまずの対処が存在するといった特徴はマナリアウィッチに通じるところがあり、競技環境における役割は比較的似ているかもしれません。
かたや葬送ネクロマンサーにデッキの強みをかわされ、かたや葬送ネクロマンサーにデッキの弱みをカバーしてもらうという不思議な構造になっていますが、BO5 におけるデッキ選出では仮に「デッキの傾向を寄せる」構成を意図した場合、両者が肩を並べることもあるかもしれません。

GRAND FINALS の鍵はウィッチ?

上記のデッキに加え、RSPTでは復讐ヴァンパイアも一定のシェアを有していました。
こちらもやはり、対葬送ネクロマンサーを意識した「疾走・バーンダメージ中心のリーサル」「短期決戦」という文脈で捉えることができそうです。
環境としては主に、「強力な除去と継続的な打点で、環境を規定する葬送ネクロマンサー」「葬送ネクロマンサーへの対抗ついでに、他デッキの疾走攻勢を縫い留めるディスカードドラゴン」「より早いリーサルを目指すことで前者 2 デッキを出し抜こうとするデッキ群」の 3 タイプが存在するような状況でしょうか。
これらを踏まえ、ローテーションBO5というGRAND FINALSの場を戦うにあたって、あるいはファイナリストたちの戦いを見守るにあたって、鍵を握るのは個人的にはウィッチというクラスであると考えます。

これはウィッチが強いだとか、ウィッチを選択するプレイヤーが多いのではないかという趣旨ではありません。
参考にしたRSPTはBO3の戦いであり、BO5を考えるにあたってもう一つ現れるデッキの枠をめぐっては、その採否に関わらず、ウィッチを意識せざるをえないのではないかという推測になります。
例えばマナリアウィッチに関しては既に見たとおり、葬送ネクロマンサーおよびディスカードドラゴンに対しては、強みを十分に活かしきれない立ち位置にあります。
とはいってもあっさり切り捨てるほどの不利があるかは恐らく人によって見方が異なるところでしょう。
そこに 3 つめのデッキが加わってくるとなると、マナリアウィッチの再現性の高いリーサルは武器にできるのではないか、との思考が首をもたげてきそうです。
ところが対マナリアウィッチでは変身効果をはじめとして、リーサルの威力を激減させる手段がいくつか存在します。
つまり、最初から狙っていれば十分にメタ対象にできるということで、おそらくRSPTで輪をかけてマナリアウィッチが少なかった理由もここにあります。
本戦進出のためには大きく勝てる可能性よりも、狙われて大負けするリスクを重く見る必要があったと考えられます。

このように、3rdデッキを考える軸のひとつに「マナリアか、マナリアメタか」というものが存在します。
そしてその場合、そもそもマナリアメタと目されるデッキにはスペルウィッチやセブンズソーサラーウィッチなど、同じウィッチクラスのデッキが多いことも見逃せません。
同クラス内でメタ関係が存在するため、仮にウィッチクラスを起用するのであれば、「マナリアで勝つのか」「マナリアに勝つのか」プレイヤーはその旗色を明確にしなくてはなりません。
マナリアウィッチ以外のウィッチのデッキタイプはいずれも得手不得手がはっきりしたピーキーさが特徴ではありますが、対マナリアウィッチで群を抜いた性能を持ちつつ、他のマッチアップを意識したチューニングも不可能ではありません。

逆にマナリアウィッチを起用するとしても、メタデッキへの耐性を重視するのか、あるいは葬送ネクロマンサーやディスカードドラゴンを意識するのかによってデッキのデザインも大きく変わりえるでしょう。

RSPT 1st Season 予選:NORTHEPTION Takumi選手の使用デッキ

例えば上図のような、マナリアフォロワーを絞りスペルの回転効率を上げた形では、《双姫の大魔術》のコストカット効率が優秀でより早期のリーサルが安定しやすいほか、バーンダメージ増加や《ブリッツ》+《ブレードレイン》による《黒白の乱舞・ノール&ブラン》突破など対ディスカードドラゴン戦をより制しやすい調整になっています。
一方でマナリアフォロワーの全体数が少なく、変身効果の悪影響が直撃するため、スペルウィッチ等とのマッチアップは極力避けたいと言えるでしょう。
他プレイヤーのデッキ選択をどこまで推し量るかによってデッキの色も様々に変わりえそうです。

当然、考慮した結果そもそもウィッチクラスという選択が 3rdデッキに相応しくないとの判断も大いにあり得るでしょう。
ただ、自身が評価せずとも周りのプレイヤーがどの立場をとるか見極めることができれば、デッキ選択で一歩リードを取ることができます。
そのような状況にあって、存在しないものとしてデッキの戦略を考えるには、今回のBO5でのウィッチクラスの持つ情報量は大きすぎると言えるでしょう。
最終的な評価がどうあれ、「BO5におけるウィッチの立ち位置」を改めて解釈することは、今回のGRAND FINALSに向けては避けては通れない道のようにも見えます。
観戦にあたっても、デッキ公開前に自分なりに今回のBO5の、とりわけ 3rdデッキについて検討を重ねておくと、選手の狙いのより深いところが分かる体験となるかもしれません。

7周年の祭典は目前

ここまで大きく 4 つのデッキタイプを中心にGRAND FINALSの競技環境について触れてきましたが、もちろん考えられる組み合わせはこの限りではありません。
例えば葬送ネクロマンサーに対して「盤面を守り切って戦う」というアプローチがカードプール上可能なのは、エルフやロイヤル。
また、葬送ネクロマンサー・ディスカードドラゴンの双方をにらんだリーサル手段となるとかなりバーンダメージに寄ってしまいますが、BO5 なら 3 デッキ中 2 デッキに有利を取れれば優勢ととらえて、いずれかのマッチアップを割り切ってしまうことで、取りえるリーサルのパターンもぐっと自由度が広がりそうです。

このように、デッキの組み合わせや採用カードの選択肢がBO3に比べて大きく広がっている今回のGRAND FINALS。
入念な準備と、それを当日発揮しきって王座につくのはいったい誰なのか、是非一緒に見届けてください。6月18日 日曜日 11:00 より配信開始です。
今回の会場ベルサール秋葉原では、Shadowverse 7 周年を記念し、いつもよりいっそう豪華なコンテンツの数々をご用意しています。
かなうならば、是非会場まで足を運び、GRAND FINALSを楽しみつくしてください。

GRAND FINALS

ABEMA

 

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