2020 Summer

【オンライン予選大会 プレーオフレポート】RAGE Shadowverse 2020 Summer

約半月にわたって行われたRAGE 2020 Summer予選も、先日のプレーオフでひとつの決着を迎えました。今大会は開催形式の関係上、1次予選の模様をお伝えすることができませんでしたが、代わりに平時の配信よりプレーオフの試合を多くお届けすることができました。今回のレポートではそのプレーオフで活躍したデッキについて、2つの内容を取り扱います。1つ目は「プレーオフで初めてフィーチャーマッチに登場したデッキタイプの紹介」、2つ目は「ファイナリストのデッキ内容比較」となります。

それでは早速、プレーオフで初のお目見えとなったデッキから触れていきましょう。

ミッドレンジヴァンパイア

ヴァンパイアのクラス能力【渇望】状態を駆使してカードの効果を引き出しながら、リーダーの体力に直接影響するカード群での決着を狙うミッドレンジデッキです。

長所
  • 低コストフォロワーが多く、序盤の横展開から相手の体力を奪いやすい
  • 【ユニオンバースト】【渇望】など特定条件下で大きく強化されるカードを豊富に採用できる
  • ダメージソースの多くがバーン(相手リーダーに直接ダメージを与える効果)のため、【守護】フォロワーの影響を受けにくい
短所
  • 盤面の取り合いに強いカードの多くはゲーム後半から使用可能になるため、4~5ターン目あたりの中盤戦で無理な進化を要求されやすい
  • 決着が見えない状況下でのバーンカードのプレイは盤面の放棄に繋がりやすく、実質プレイ可能なタイミングにはコスト以上の制限がかかる
  • バーンカードプレイ後に回復されて決着ターンがずれやすいため、余力を残したゲームメイクが必要

渇望ヴァンパイア・バーンヴァンパイアなど多くの呼び方を持つミッドレンジヴァンパイアですが、それだけ多彩な特徴があり、カスタマイズ性に富んでいると言うことができます。
相手にはバーンで積極的にダメージを与えつつ自分は回復手段を講じられる点や、ゲーム後半に入れば盤面干渉が得意なカードも多い点から、もともとは式神ウィッチに対する決戦兵器の色合いが強かったデッキですが、最近では回復面に秀でたデッキの台頭に押されて少々鳴りを潜めていました。とはいえ、先に述べたとおりこのデッキの特徴は多岐にわたり、「序盤の横展開が機械自然ドラゴンに強い」「アーティファクトネメシスが苦手とする《魔獣の女帝・ネレイア》の【渇望】効果を活かしやすい」「《魅惑の教鞭・イオ》の【ユニオンバースト】で機械エイラビショップの盤面にも対応しやすい」など主要デッキに対しても局所的に有利を取れるシーンが存在します。そのため、相手クラスによる手札交換の使い分けやキーカードの温存など、立ち回り次第で幅広いデッキと渡り合える点は大きな魅力と言えるかもしれません。

プレーオフで新たに登場したデッキタイプは上記のミッドレンジヴァンパイアのみでした。実際には自然ウィッチや機械ネメシスなど他のデッキで予選を戦ったプレイヤーも一定数いたようなので、アディショナルカードの実装後、今回の予選大会でフォーカスしなかったデッキがどう変わっていくのかというのも一つの楽しみですね。

それでは続いて、ファイナリストのデッキを比較していきましょう。今回のファイナリスト8名のデッキ選択は次のようになっています。

機械自然ドラゴン・機械エイラビショップが若干多いものの、かなり選択が割れた格好です。これらのデッキの中でも、個人ごとに採用カードに違いが出ている機械自然ドラゴンと機械ヴァンパイアの2つについて、詳しく見ていきます。カード選択の理由や、それがデッキの特徴に与える影響などに関しては個人の推測が入りますが、予めご了承ください。

機械自然ドラゴン

今大会のファイナリスト、mitsuya選手の機械自然ドラゴン

各ファイナリストの機械自然ドラゴンにおける採用カード・枚数比較(敬称略)

機械自然ドラゴンのデッキリストで、採否や採用枚数に個人差があらわれたカードは6種類と比較的多い印象を受けます。その一方で《母なる君》の採用枚数は4名共通で2となっており、機械エイラビショップを筆頭に、ゲーム後半で強力な盤面形成を行うデッキへの対抗手段として枚数を落とせなかった様子がうかがえます。
以下では、採用枚数が分かれたカードの中でも特徴的な《フロートボードマーセナリー》・《荒野の案内人》・《天災のジェネシスドラゴン》・《ゴッドコロシアムマンモス》について見ていきます。

フロートボードマーセナリー

こむ選手・西野選手が1枚採用、狆選手・mitsuya選手が不採用としています。

デッキの軸となる《鋼鉄と大地の神》へのアクセスを上げる役割を担うこのカードですが、複数枚採用した場合、サーチ対象に《フロートボードマーセナリー》自身が含まれます。2/1/2というサイズが盤面に弱く、多面除去の手段に乏しい機械自然ドラゴンとしては万が一にも連続してプレイしたいカードではないため、採用する場合でもその枚数は1に抑えられています。

また、序盤なら《ドラゴニック・コア》、中盤以降なら《嵐鉄の竜人》というように、他の機械カードを引いてきた場合でも、PPブーストや手札増加などの面で《鋼鉄と大地の神》の下準備に繋がるため、主軸の《鋼鉄と大地の神》を最大限活かすという意味では《フロートボードマーセナリー》に期待する役割を大きく外れるということはなさそうです。反面《極炎のドラグーン・ローラ》はどちらかといえば単体で完結した性能のため、《鋼鉄と大地の神》のヒット率を下げてしまう点を考慮してか、《フロートボードマーセナリー》入りの構築ではその数を減らしています。

「キーカードへのアクセス向上」はデッキの強みを引き出しやすくするアプローチで、それに対して「2/1/2というサイズの弱さ」は盤面への即応力に欠けるというデッキの弱点を重ねる側面を持ちます。そのため、《フロートボードマーセナリー》の採否にあたっては、「デッキコンセプトの達成力」と「相手の行動への対応力」のどちらを重視するかという使い手の判断が大きく関わってくると言えそうです。

荒野の案内人

こむ選手・西野選手が2枚、狆選手が1枚採用としており、mitsuya選手は不採用のカードです。

このカードは端的には「後半の爆発力を犠牲にして序盤の安全を買う」ことを役割としています。もう少し細かく整理すると、サイズ由来の役割と能力由来の役割に分かれるため、詳しく見ていきましょう。

まずはサイズ由来の役割についてです。2/2/2という標準的なサイズは当然ながら2ターン目にプレイすることで盤面劣勢を防ぎやすく、このデッキにおいてはリーダーの体力を守ることに繋がります。2ターン目を《竜の託宣》でスタートした場合も、3ターン目の4PPを使う動きとして2コストカード2枚というパターンは多く、2コストカードの採用が多いと盤面の遅れを取り戻しやすくなります。また、《雷電のヴェロキラプトル》や《猛火のティラノサウルス》など中盤以降その価値が高まる他の2コストカードを温存できるため、選択肢の質が上がりやすいということもあるでしょう。

続いて能力由来の役割です。やはり大きいのは【ラストワード】で《ナテラの大樹》を場に出す効果でしょう。《ナテラの大樹》のカウントを稼ぎやすくなったり、ドロー供給に繋がったりするのはもちろん、3ターン目の《旋風のプテラノドン》の受けにもなるなど、序盤にプレイできた場合、地味ながらも総じてデッキの出力を上げてくれる能力となっています。一方、《波濤のプレシオサウルス》や《嵐鉄の竜人》など優先的にEPを使いたいフォロワーの採用もあって、このカードを積極的に進化する機会が大きく減っており、進化時効果については役割が薄れているのが現状です。

このように多面除去に乏しいデッキの弱点をカバーしながら、ゲーム序盤の展開を柔軟にしてくれる点が《荒野の案内人》の魅力ですが、裏を返せばその活躍の機会はほぼ序盤に限定されています。中盤以降は《ナテラの大樹》がすでに場に出ている可能性が高く、前述の理由で進化時効果を活用する場面もそう多くないため、実質能力を持たない2/2/2になってしまうわけです。自然タイプであるため《鋼鉄と大地の神》からのドローの期待値を落としてしまうリスクがあり、状況次第ではパワー不足で押し切れない展開の原因にもなりえます。

以上のように、「序盤に強く後半に弱い」傾向のある《荒野の案内人》は「序盤に弱く後半に強い」傾向の機械自然ドラゴンで採用する場合、シンプルな効果デザインとは裏腹に、序盤にプレイできるかどうかでその価値が180度変わるクセの強いカードとなります。採用する場合は他の採用カードとのバランスや手札交換方針の見直しなど、繊細な取り扱いが必要になるでしょう。

天災のジェネシスドラゴン / ゴッドコロシアムマンモス

狆選手・mitsuya選手が《天災のジェネシスドラゴン》を、こむ選手が《ゴッドコロシアムマンモス》を1枚採用しています。

いずれも機械自然ドラゴンが苦手とする多面除去を担っていますが、ターゲットや活躍のタイミングには差があり、採用の仕方によって仮想敵として重視している相手が浮かび上がってくるカードになっています。

まずは比較的市民権を得ている《天災のジェネシスドラゴン》を見てみましょう。アクセラレート効果の「EPを1つ消費して、すべてのフォロワーに3ダメージ」という効果はEPが多く、盤面で押されやすい後攻4ターン目のアクションとして優秀です。主に先攻4ターン目に強力な動きを抱える機械ヴァンパイアや、序盤から小型フォロワーの展開が多いアーティファクトネメシスへの対策になりうる効果だと言えるでしょう。序盤のセーフティともいえる役割は一部《荒野の案内人》に通じるものがあり、ファイナリストのデッキでは《天災のジェネシスドラゴン》を採用する場合《荒野の案内人》の枚数が減っている様子がうかがえます。また、フォロワーとしての性能はサイズの大きい【疾走】持ちということで、早期の大型フォロワー押し付けに弱く、回復手段も減ったコントロールエルフや、《影の侵食》での削りあいで最後の一押しが活きる機械自然ドラゴンのミラーマッチを戦う際などに活躍の機会があります。

対する《ゴッドコロシアムマンモス》は9コスト固定のカードで、ゲーム中盤以降を意識した採用となっております。概ね相手の盤面のサイズによらない除去が可能なため、EPを使い切った後の相手の盤面形成に対抗する役割が見込まれます。機械ヴァンパイアの終盤の《夜明けの吸血鬼・ノイン》や機械エイラビショップによる大規模盤面、アーティファクトネメシスの《アーティファクトリメイカー》や《パラダイムシフト》を交えた一斉展開など、機械自然ドラゴンにとっての苦境は序盤に限りません。このような後半戦での対応力を課題としてより重く捉える場合、《ゴッドコロシアムマンモス》は一つの解決策と言えるかもしれません。《鋼鉄と大地の神》から引かないため引き込みがゲーム終盤になりやすく、「ロングゲームにもつれ込んでいる = 双方決定打を欠いている」という状況にマッチする点や、0コストの《プロダクトマシーン》で盤面のフォロワーの数を調整し、《インペリアルマンモス》を場に出しやすい点なども魅力と言えるでしょう。

いずれのカードもタイプを持たず、《鋼鉄と大地の神》とのシナジーがないほか、有効に使えるタイミングや相手が限られている点などから、採用には一定のリスクも存在します。しかし他のカードでは代用できないレベルの多面除去を実現するカードのため、機械自然ドラゴンの対応力不足をカバーしたい時、意識したい相手・時間帯に応じて採否を調整していく枠になりそうです。

機械ヴァンパイア

今大会のファイナリスト、リグゼ/GxG選手の機械ヴァンパイア

各ファイナリストの機械ヴァンパイアにおける採用カード・枚数比較(敬称略)

機械ヴァンパイアのデッキリストで、採否や採用枚数に個人差があらわれたカードは6種類とこちらも比較的多くなっていますが、機械自然ドラゴンに比べてその枚数差は小さく、また採否自体が分かれるカードは《鋼鉄のヴァンパイア・スレイ》のみという結果になりました。デッキの雛型はかなり煮詰まっており、細かな枚数調整に各プレイヤーの意識があらわれていると言えるでしょう。
以下では、採用枚数が分かれたカードの中でも特徴的な《魔獣の女帝・ネレイア》・《鋼鉄のヴァンパイア・スレイ》について見ていきます。

魔獣の女帝・ネレイア

今環境を通して枚数が絶えず増減したこのカードですが、Gray選手・リグゼ/GxG選手が2枚採用、西野選手が3枚採用と高い採用率になっています。

背景にあるのはやはりアーティファクトネメシスの台頭でしょう。アーティファクトネメシスは体力の高いフォロワーが少ないため《魔獣の女帝・ネレイア》本体の攻撃時効果が有効なうえに、《キャタラクトビースト》はアーティファクトフォロワーによる交戦を大幅にシャットアウトできるとあって、カード単体で大きく有利を取れるといっても過言ではありません。ミラーマッチにおいても相手の盤面を一掃しやすく、他デッキの《鋼鉄と大地の神》に容易に対応されてしまう点を差し引いても、この2つのマッチアップにおける価値が高かったと見ることができそうです。

自デッキの《鋼鉄と大地の神》とはシナジーがなく、機械ヴァンパイアは手札を増やす手段も限られているため、このカードを複数枚採用する場合他の採用カードでは機械タイプの比率を高く保つことが要求されます。もともと被った時の使いづらさなどから2枚採用も少なくない《ワンダーコック》ですが、こうした理由から《魔獣の女帝・ネレイア》採用型の構築では3枚採用がタブーだと言えそうです。

鋼鉄のヴァンパイア・スレイ

Gray選手・リグゼ/GxG選手が2枚採用、西野選手が不採用としたカードです。

主な役割は「6ターン目の選択肢を増やす」「ゲームプランの幅を広げる」「《鋼鉄と大地の神》以降の手札の質を高める」の3つだと考えられます。まず1つ目についてですが、このカードは6コストのため手札の消耗を最小限に抑えて、次の《鋼鉄と大地の神》のターンに繋ぐことができます。他のカードだと《魔獣の女帝・ネレイア》・《アーマードバット》が1枚で6コストを消費しますが、《アーマードバット》に関しては盤面に特別強いわけではないので、実際にプレイできるシーンはある程度限られてきます。低コストカードを複数枚プレイして手札が減るパターンを減らしつつ、しかし盤面にはある程度干渉したいというニーズに対して、《鋼鉄のヴァンパイア・スレイ》はしっかりと答えてくれる1枚だと言えるでしょう。

続いて「ゲームプランの幅を広げる」とはどういうことでしょうか。ここでは【疾走】や【ドレイン】効果が重要になってきます。手札の質により長期戦が難しいと判断する場合、6ターン目に6点ないし8点相手の体力を削ることができれば、7ターン目の《ファースト・ワン》での決着が現実味を帯びてきます。また、対コントロールエルフ戦では、相手が苦手とする大型フォロワーによる一撃を担い、中盤の盤面押しを勝ち筋として検討できるようになります。逆に【ドレイン】効果を活用する場合、体力を保ったまま《鋼鉄と大地の神》まで耐え凌ぐことで、ロングゲームでの逆転に繋ぐことができるというのも魅力です。このように、《鋼鉄のヴァンパイア・スレイ》は状況次第でゲームスピードをコントロールする役割を持っています。

最後に「《鋼鉄と大地の神》以降の手札の質を高める」についてですが、こちらは単純明快です。使えるコストの豊富なゲーム後半においては、0コストの小型フォロワーばかりでは決定力に欠け、リソースに不安が残りますが、《鋼鉄のヴァンパイア・スレイ》があれば決定力を上げつつ、手札の消費も比較的抑えやすくなります。相手デッキの強力な動きに対しても落ち着いてリアクションしやすく、1枚で攻守両面において豊富な選択肢を与えてくれるため、《鋼鉄と大地の神》から引き込むことができた場合、手札の質が高まると言えます。

ここまで《鋼鉄のヴァンパイア・スレイ》の長所を多く見てきましたが、当然採用のデメリットも存在します。まず6コストということで、《鋼鉄と大地の神》から引かない場合は他のカードとの組み合わせが難しく、動きが窮屈になりやすい点が挙がるでしょうか。このカードを不採用とした西野選手は《魔獣の女帝・ネレイア》を3枚採用としているため、6コストの渋滞でプレイの選択肢が狭まってしまうことを危惧していたのかもしれません。

また、【疾走】や【ドレイン】は発動のハードルがある程度高く、消耗戦にもつれ込むとどんどん発動が困難になっていくことも大きな欠点です。もともとコストカーブを逸脱したアクションを取りにくいという特徴を持つ機械ヴァンパイアにおいては、使えない手札を抱え込んでしまうと、ただでさえ控えめな出力がさらに落ちてしまうため状況次第では致命的となります。

このように、《鋼鉄のヴァンパイア・スレイ》は効果の起動とプレイのタイミングを適切に行える状況ではデッキの幅を広げてくれる一方で、手札次第では実質プレイ不能になってしまうリスクも併せ持つ、二面性の強いカードと評価することができそうです。

 

ここまで、プレーオフで活躍したデッキやファイナリストのデッキ・採用カード選択について振り返ってきました。間もなくアディショナルカードが実装され、環境も大きく変わっていくため、今回のレポートで扱った内容は直接的には皆さんのデッキ構築に活きることはないかもしれません。ただ、カードごとの長所や短所というのはデッキや環境を変えても共通する部分が少なくありません。新環境での皆さんのデッキ探しや採用カードの吟味において、多少なりともこのレポートが助けとなることを願っています。

2020年6月21日(日)のGRAND FINALSでは、今回のファイナリストたちのアディショナル環境に対する答えを目の当たりにすることになるでしょう。デッキリスト発表の際には是非、皆さんも採用カードや枚数の意図について思いを巡らせてみてください。それでは、GRAND FINALSでお会いしましょう。

【文:まる】

GRAND FINALS
2020年6月21日(日)
RAGE Shadowverse 2020 Summerの王者が決まる!

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