2024 Summer

【オンライン予選大会 2次予選レポート】RAGE Shadowverse 2020 Autumn

二度目の開催となるオンライン予選。今回も全国から約10,000名の挑戦者が集いましたが、2次予選に駒を進められたのはわずか1,000名ほど。この上位10%の猛者たちがさらにしのぎを削りあった2次予選は、フィーチャーマッチ4回戦までに全てのクラスが登場するという極めて複雑な環境となりました。クラスが同じでもデッキタイプが異なるケースもあり、ミラーマッチの発生率はおそらく過去最低だったのではないでしょうか。

プレーオフまではすでにあと一週間を切っており、2次予選の延長にある環境での戦いが予想されます。そこで、プレーオフをより楽しむためにも、2次予選のフィーチャーマッチで活躍したデッキたちを一挙に振り返り、その特徴を整理していきましょう。デッキタイプの多さに比例して、過去のレポートよりも分量が多くなっていますが、お付き合いいただければ幸いです。

異形エルフ

アクセラレート効果とのシナジーを持つカード群で盤面を支えながら、新カード『地を裂く異形』を手札でどんどん成長させていき、一撃での決着を目指すコンボデッキです。

長所
  • 最短6ターンでの決着を目指せるため、相手の強力なアクションを無視できることが少なくない
  • 『地を裂く異形』自体にフォロワー破壊効果がついているため、相手の守護の影響が比較的小さい
  • アクセラレート軸のカードの盤面奪取力が高い分、時間をかけてかまわないマッチアップもある
短所
  • 現時点での主流構築では2コストの枚数に不安があり、序盤から盤面で押し込まれる動きに弱い
  • 『地を裂く異形』への融合で手札が枯渇しやすく、ゲームが進むほど選択肢が狭まりやすい

決定力と勝利スピード。これまで概ね二者択一の関係にあった両者を兼ね備えるデッキとして、今環境で頭角を現したのが異形エルフです。1ターン目から『地を裂く異形』を持てている場合は言うに及びませんが、多少の引き遅れは『スピアーエルフ』や『喝采の獣使い』などのダメージでカバーしやすく、劣勢を『《世界》・ゼルガネイア』で凌いで時間を稼げるなど、勝利ターンを早めに設定しているデッキの宿命たる「安定感の乏しさ」をある程度払拭できている点は大きな魅力でしょう。

一方でデッキコンセプト上避けえない欠点もあります。特に上述した「選択肢の先細り」は難しい問題でしょう。ドロー効果やトークン生成効果を持つカード群で多少緩和できるとはいえ、『地を裂く異形』への融合が進むほどに手札の枚数は減っていきます。そうすると、いざ『地を裂く異形』の準備が整ったというタイミングでの相手の守護2面やダメージカットなどの対抗策に対して、有効なリアクションを取れないことがしばしば起こりえます。

こうしたゲームを勝ち切るためには、例えば「『フォレストダーク・レオネル』を温存して守護2面を突破できるようにしておく」「『マドロスエルフ』で盤面形成し、対処のために土の印を消費させることで相手の『結晶:禁約の黒魔術師』の有効時間を削る」などキーカードを温存する判断が重要になってきます。当然温存を優先すれば融合できないターンが生まれやすく、その分自分の決定打が先延ばしになるため、相手の動向を見ながら融合と温存を天秤にかける必要も出てくるでしょう。マッチアップごとに相手の防御の厚さやかけられる時間は異なりますので、勝利ターンをどこに定め、『地を裂く異形』を通すためのバックアップをどこまで温存するのか。この繊細な判断は使い手の腕の見せ所になるでしょう。

連携ロイヤル

今パックからの新たなキーワード能力「連携」を軸に、盤面展開とバフという往年のミッドレンジロイヤルをリメイクしたかのような武器を持つデッキです。進化シナジーの採用の程度次第では進化ロイヤルと呼んだほうが相応しいこともあり、地続きのデッキタイプと考えるのがよさそうです。

長所
  • 1ターン目からフォロワーを展開することが可能で、序盤の盤面形成に消極的なデッキが多い環境にマッチしている
  • 最低2枚のカード採用で10ターン目に20点を狙えるため、ロングゲームにも対応可能
  • 能動的な盤面展開が得意なため、比較的物量で盤面優位を保ちやすい
短所
  • 疾走フォロワーに乏しいため、一度盤面を奪取されると相手リーダーの体力を削ることが困難
  • 各カードの連携条件達成タイミング次第では中盤のパフォーマンスが大きく低下する

「運命の神々」実装直後、最も流行したデッキの一つです。『オネストシーフ』『君臨する猛虎』の能力調整により盤面形成力・終盤の決定力を落とし、一時ほどのパワーこそ失いましたが、安定して盤面展開を継続できる手堅さと、デッキ構築やプレイ次第でアグロからコントロールまで幅広いゲームスピードに対応できる柔軟性から、今でも根強い人気を誇ります。進化ギミックとの相性がいい他、アミュレットへの対抗策となる『堕落の決意』や、ダメージ効果を防いでくれる『ペインレスサムライ』など、メタカードの採用にも幅があり、総じてカスタマイズ性が高いのも特長の一つです。

ただし、秘術ウィッチやディスカードドラゴンなど、環境の多くのデッキが中盤以降強力な除去性能を発揮してくるため、最近では持ち前の盤面形成力をもってしても難しいゲームが多くなってきています。『君臨する猛虎』の採用枚数が減った影響で、一度盤面を処理されてしまってからは10ターン目の『《世界》・ゼルガネイア』直接召喚まで、相手リーダーにダメージを通す手段が非常に限られてきます。そのため、盤面を全処理されないように注意することの意義は他のデッキタイプに比べてひと際大きく、10ターン目までのロングゲームを望めない相手に対し、盤面を残すための交戦の仕方・除去カードの使い方など、プレイヤーの細かいテクニックに注目したいデッキだと言えるでしょう。

秘術ウィッチ

相手の体力最大値をどんどん落としていき、最後はバーストダメージ(一度に相手リーダーの体力を大きく削ること)による決着を目指す、コンボ色の強いコントロールデッキです。

長所
  • 相手リーダーの体力に直接干渉するため、守護や回復の影響をほとんど受けず、盤面で負けていても削り切ることができる
  • 全体除去の手段が豊富で、盤面を起点にリーダーの体力を奪われることは少ない
  • 潤沢なドローソースで、キーカードへのアクセスが良い
短所
  • 体力回復手段に乏しく、効果ダメージで直接リーダーの体力を削る動きに弱い
  • 守護の枚数が少なく、疾走フォロワーを止めにくい
  • EPを使い切ると、盤面への対応力が大きく落ちる

土の秘術軸のカードはもちろん、『《愚者》・リンクル』や『でたらめな接合』なども含めふんだんに新カードを起用し、過去環境での攻撃的な立ち回りから一転、手堅く相手の攻め手を捌き、その体力を蝕んでいくことに注力しているのが今環境の秘術ウィッチです。その強みは何といっても決定力の高さ。2ターン目に『《愚者》・リンクル』をプレイできた場合、8ターン目には相手の対策などおかまいなしに詰め切ってしまえることも多いです。多様なデッキが混在している今環境において、相手の行動に左右されない勝利パターンを持てることは大きなメリットであり、そのことが評価されてか、競技シーンでは1, 2を争う人気デッキと言えるでしょう。

とはいえ、このデッキにも隙がないわけではありません。リーダーの体力を回復する手段が『結晶:禁約の黒魔術師』と『アダマンタイトゴーレム』の効果抽選のみにとどまり、いずれも回復量が大きくないことから、手札から直接ダメージを出してくる相手に打ち勝つには早期決着が求められます。『剥落の暴圧』のプレイが遅れれば8ターン目の決着に向けた課題はいや増すため、そうしたゲームでキーカードを探す動きと盤面対応のバランスをどこで取るのか、また9ターン目以降まで生き残るためのプランをいかに組み立てるのかというのは、いずれも個々のプレイヤーの性格や考えが色濃く表れるポイントとなるでしょう。

ディスカードドラゴン

『波濤のプレシオサウルス』を筆頭にディスカード効果(手札からカードを捨てる効果)と相性のいいカード群を採用し、継続的なダメージと盤面制圧を見込んだコンボデッキです。

長所
  • 豊富なドローソースにより1ゲームでほぼデッキを使い切ることができるため、事故率が低い
  • 《波濤のプレシオサウルス》によるリーダー付与効果で、盤面制圧と相手リーダーの削りを同時に行える
  • 疾走・守護・回復と有する効果の幅が広く、相手に応じた柔軟なプレイをとりやすい
短所
  • 守護の枚数が心もとなく、ダメージカットもできないため、大型の疾走フォロワーや大掛かりな効果ダメージに弱い
  • 1ターンにまとまったダメージを出すことが比較的苦手で、相手の回復に弱い

もとは環境初期の連携ロイヤル台頭に合わせて、盤面への対応力が高く、回復もこなせるメタデッキとして生まれたディスカードドラゴンですが、構築内容やプレイが洗練されていくにつれ、盤面の除去と形勢の両面を高い水準で行える、バランスのいいデッキとして親しまれるようになりました。キーカードである『波濤のプレシオサウルス』を確定サーチできる上に、ディスカードギミックにより大量のドローが可能なため、欲しいカードが引けないということはほとんどありません。これらの特長から、振れ幅に頼らず、デッキのパフォーマンスを引き出しきって戦うことに自信のあるプレイヤーに人気のデッキとも言えるでしょう。

ディスカードドラゴンが絡む試合の見どころにはもちろん、捨てるカードの選び方が挙がります。ディスカード効果を持つカードと『ダークジェイルドラゴン』などの疾走カードのどちらを手元に残すべきかなどは、ゲームの状況によって刻一刻と変化していきます。ディスカード時に盤面に飛ぶランダム2点の当たり方によってはターン中にプラン修正を余儀なくされることもままあり、プレイヤーは毎ターンのように襲い来る選択肢の波の中から、適切なものを選び取る力を試されることになります。

このようにただでさえ「自分との戦い」「デッキとの戦い」という側面の強いディスカードドラゴンですが、守護2枚張りを要求してくる異形エルフや、盤面のサイズと回復量で『波濤のプレシオサウルス』のリーダー付与効果をいなし続けてくるエイラビショップなどの苦手マッチでは、勝つために一層シビアな割り切りが必要となります。いずれのマッチアップも中途半端な攻め方ではいたずらにリソースを消耗してしまうだけなので、ある程度盤面を諦めて疾走あるいは守護のカードを蓄え、機を見て一気に展開していくような大胆なプレイも見ものになりそうです。

葬送ネクロマンサー

クラス能力である「葬送」と「リアニメイト」を活用してコスト以上の強力な盤面展開を実現し、最後は疾走フォロワーで詰め切るミッドレンジデッキです。

長所
  • 直接召喚や結晶を上手く使うことで、1ターンでの大規模な盤面形成が可能
  • 葬送効果でもフォロワーが場に出るため、連携との相性が良い
  • 終盤の疾走手段が豊富で、盤面を取られてからも相手の体力を削ることができる
短所
  • 『《恋人》・ミルティオ』や『デッドメタルスター』などラストワードが強力なフォロワーの採用が多く、消滅させられると大きくパフォーマンスを落とす
  • 葬送の回数・連携のカウントのいずれも『《恋人》・ミルティオ』への依存度が高く、『《恋人》・ミルティオ』が遅れると盤面のサイズや展開量が落ちてしまう。
  • 直接召喚の対象カードを引いてしまうとデッキパワーが低下する

上記の長所・短所からうかがえるとおり、デッキ40枚単位での盤面形成力・フィニッシュ力が非常に高く、そこからゲーム中のドローに応じて減点方式で出力を落としていくというのが、葬送ネクロマンサーの特徴となります。特にこのデッキの要と言える『《恋人》・ミルティオ』は1枚で葬送回数を2、連携カウントを5増やしてくれるため、『征伐の屍帝』や『天覇風神・フェイラン』の早期直接召喚に直結します。『天覇風神・フェイラン』が組み合わさることで体力5以上というラインを達成しやすく、『境界の魔道士』や『燃え盛る抵抗』などの全体除去圏外の盤面から着実にダメージを捻出できるのも大きな魅力でしょう。

課題はやはり引きによるパフォーマンスのブレです。『王墓の骸』や『イグジストソード・ギルト』などのドローソースを増やすことでキーカードへのアクセスを向上するというのはよく目にするアプローチですが、当然「盤面の強さ」という長所を切り崩してドロー力を強化する形になりますので、採用するドローソースの種類や枚数については、使い手の個性が出るポイントとなります。また、不安定な中盤とは打って変わってゲーム後半では、豊富なリアニメイトカードから呼び出すことができる『デッドメタルスター』や、直接召喚効果を持つため引けているか否かに左右されない『冥守の頂点・アイシャ』など、疾走カードへのアクセスに大変優れます。そのため中盤思うような盤面展開ができなかった際に、相手の体力を強引に削りにいくことで疾走による勝ち筋をこじ開けられるケースもあり、逆境時に盤面形成と相手リーダーへの攻撃とでどのようなバランスを取るのかというのも、プレイヤーの判断が問われる箇所となりそうです。

ハデスネクロマンサー

葬送ネクロマンサー同様「葬送」能力を積極的に活用しますが、その目的はリアニメイトではなく墓場の増加にあり、ゲーム後半には『冥府への道』を起動して相手を圧倒することを目指すデッキです。

長所
  • 『冥府への道』が攻守ともに担ってくれるため、起動さえ果たせば相手の疾走や効果ダメージのケアに注力できる
  • 豊富なドローソースで事故率が低いため、7~8ターン目には安定して『冥府への道』を起動しやすい
  • 『《恋人》・ミルティオ』や『天覇風神・フェイラン』の起用により純粋な盤面勝負をこなすこともある程度できる
短所
  • 決着がほぼ『冥府への道』依存のため、アミュレットや効果ダメージへの対策で時間を稼がれやすい
  • 『死期を視るもの・グレモリー』のリーダー付与効果を得るまで、ネクロマンス能力を持つカードがプレイ困難で、選択肢に制限がかかる

葬送ギミックで大きく墓場が増える点に着目し、強力なフォロワーのリアニメイトよりも、『冥府への道』をフィニッシャーとして選択したのがハデスネクロマンサーです。『死期を視るもの・グレモリー』を3枚採用とすることで、ターンの最中にリーダー付与の条件を達成した場合にも手札の『死期を視るもの・グレモリー』ですぐにリーダー付与ができ、結果として次のターンの直接召喚を待たずに『冥府への道』起動を狙えるようにするなど、ゲーム後半に強力な決定打を持つデッキが多い環境のためか、スピードも意識した構築が多いように見受けられます。

ゲーム後半の出力が非常に高い反面、序盤の守りにやや不安がある点は課題と言えるでしょう。特に5ターン目に『《恋人》・ミルティオ』をプレイできなかったり、『ソウルテイカー・ララ』と『大妖狐・ギンセツ』のコンボを達成できなかったりすると、盤面形成が得意な相手からはダメージを受けやすく、『冥府への道』が起動しても、残りの体力を疾走や効果ダメージで押し切られてしまうという展開に繋がりかねません。そのため相手のデッキタイプに応じた手札交換基準の洗練や、『ソウルテイカー・ララ』のために葬送カードを温存する判断など、自分の体力を高く保つための注意点が多く、使い手の慎重で丁寧なプレイは注目のポイントです。

コントロールヴァンパイア

多彩な全体除去と回復効果を駆使してゲームを引き延ばし、主に10ターン目以降に効果ダメージを連発して相手の体力を一気に奪い去るコントロールデッキです。『鋭利な一裂き』や『ヴァンパイアスレイヤー・ルシウス』の採用枚数などによって、10ターン目以前での決着を意識した構築の場合はミッドレンジヴァンパイアと呼ぶこともあり、カスタマイズ次第で意識する時間帯が変わりうるデッキだと言えます。

長所
  • 『魔獣の女帝・ネレイア』を筆頭に、序盤から終盤の各時間帯に盤面への対応力が高いカードが存在する
  • 自傷カードを活用することで『《世界》・ゼルガネイア』の効果条件を能動的に満たすことができる
  • アミュレット対策の『堕落の決意』や、バーストダメージ対策の『堕落の漆黒・アザゼル』など、環境に合わせて無理なくメタカードを起用できる
短所
  • 基本的に勝利ターンが遅くなるので、6~9ターン目に決定力の高いフィニッシャーを擁するデッキに対して不利
  • バーストダメージを搭載しているわけではないため、10ターン目以降効果ダメージを連発しても相手の体力を削り切れない可能性がある

今環境の中で比較的立ち位置がはっきりしているのがコントロールヴァンパイアです。『《世界》・ゼルガネイア』や『インサニティ・マナ』など本領を発揮するターンが決まっているカードの影響で、ロングゲームを許されないマッチアップは不得手ですが、代わりに1ターンに手札から出せるダメージが限られる相手に対しては滅法強く、そうした一部のデッキを完封する役割を期待されることが多いでしょう。採用するメタカードの取捨選択によって、想定するターゲットの範囲を調整できるのも魅力の一つで、BO3のパートナーデッキと仮想敵を揃えて狙い撃つ戦略との相性は抜群です。

しかしながら、やはりタイムリミットのあるゲームを勝ち切ることが難しいため、人によって好みが分かれるデッキかもしれません。10ターン目以前での勝利を目指すためには小型フォロワーやバーンカード(相手リーダーに直接ダメージを与えられるカード)の増量が必要で、その分中盤以降の除去カードやドローソースの枚数を落とすことは、仮想敵とのマッチアップでの取りこぼしにも繋がります。元の相性がはっきりしている分、有利不利をそのまま活かして特定の相手を押さえるために起用するのか、はたまた得意とするマッチアップへの優位性を多少犠牲にしてでもより幅広い相手に勝てる可能性を持たせるのかというカスタマイズの方向性には、明確に個人差が現れるかもしれません。プレーオフでお目にかかる機会があれば、是非構築の中身やデッキの出し順にも注目してみましょう。

エイラビショップ

以前よりアクセスの向上した『清純なる祈り・エイラ』を軸に、『聖なる守り手・ユカリ』で除去を無効化して強固な盤面を形成したり、多数の疾走カードにバフを乗せて相手リーダーに重い一撃を与えることに長けたデッキです。

長所
  • 『ピラータートル』の起用により、キーカード『清純なる祈り・エイラ』へのアクセスが良い
  • 低コストの回復カードが多く、1ターンで大幅に盤面を強化しやすい
  • 効果ダメージを遮断する手段があるため、効果ダメージ系のフィニッシャーを擁するデッキに対して立ち回りやすい
短所
  • アミュレットが2つ以上場を埋める時間が長く、相手の横展開に対応しづらい状況が散発する
  • 『ピラータートル』との兼ね合いで『聖弓の使い手・クルト』を起用しづらいため、全体除去に乏しい
  • 『エイラの祈祷』の存在を大前提としたデッキ構築のため、アミュレット破壊等の対策に弱い

多くの機械カードがローテーション落ちした影響で、再びカードタイプを意識しない構築スタイルへと回帰するかと思いきや、今度は自然タイプのカードの活躍が随所で光るようになったのが今環境のエイラビショップです。『ピラータートル』と『博愛の翼人』により『エイラの祈祷』2枚展開の要求値が大きく下がっているため、「自分の場のアミュレットが2枚以上」であることを条件とする効果を持つカード群がにわかに脚光を浴びました。結果として『エンジェルラット』や『包み込む願い』など疾走カードの採用が増え、ただ回復を重ねながら盤面を強化していくだけの防御的なデッキから、疾走×バフの組み合わせで様々な角度から不意の大ダメージを狙える攻防一体のデッキへと変貌を遂げています。

ただし、できることが増えた一方で死角も増えています。まず、アミュレットの2枚展開をある程度の前提とした構築でありながら、『ピラータートル』のサーチ先を絞る目的で『聖弓の使い手・クルト』の枚数を大きく落としているため、全体除去を欠いた状態で3面のフォロワーで相手の最大5面に対応する必要があります。『伝道の司祭・ロレーナ』や疾走フォロワーを上手く使って多面除去を図ることが多いですが、ここでも不用意な有利トレードは小型守護による盤面ロックの温床になることを意識し、相打ちと有利トレードのどちらがいいか、慎重な判断が必要となります。また、環境にアミュレット対策カードが多いため、後続の『清純なる祈り・エイラ』のためにEPを温存するプレイや、『博愛の翼人』で『エイラの祈祷』を増やしておくプレイなど、全般的にしっかりと予防線を張った動きを一貫できるかが重要なデッキと言えるため、プレイヤーのケア範囲がどこにあるのかということに注目しながら観戦すると、一層楽しめるかもしれません。

アーティファクトネメシス

多彩なアーティファクトで相手の動きに柔軟に対応しながら、ゲーム後半では破壊されたアーティファクトの数や種類に応じてパフォーマンスを向上するカード群で巻き返しを図り、10ターン目には対処困難な22点ダメージを構えられる、コントロール色の強いデッキです。

長所
  • 守護・疾走・突進・ドレインなど多彩な効果を選択して使い分けることができる
  • 10ターン目には極めて決定力の高いフィニッシャーを用意できる
  • 『浄化の輝き・ミュニエ』起用により、強力な能力を持つフォロワーやアミュレットが多い環境に対応しやすい
短所
  • 中盤まで、『パラダイムシフト』などゲーム後半向けのトークンの獲得と盤面への対応を両立しづらく、相手の攻勢を甘んじて受けるか後半の出力を下げるかの二者択一を迫られやすい
  • ドローソースが少ないため、手札次第ではアーティファクトカードの破壊を進行するのに時間を要する

『機構の解放』や『マーキュリーイージス・シオン』などのパワーカードがローテーション落ちし、鳴りを潜めるかに思われたアーティファクトネメシスですが、豊富なアーティファクトによる対応力の高さは健在で、新たに『破壊を齎す者・ヴィズヤ』と『《世界》・ゼルガネイア』による22点コンボを搭載してロングゲームに適した装いで台頭してきました。『機構の技師』の追加により『パラダイムシフト』が安定供給されるようになったため、『アーティファクトの同調』でもより柔軟なチョイスが可能になっており、相手の勝ち筋を細らせていく粘り強さにも磨きがかかっています。

とはいえ、やはり『機構の解放』が使えない影響は小さくありません。明確なドローソースを失ったため、『アナライズアーティファクト』の重要度が高まったほか、キーカードである『アブソリュート・モデスト』や2枚目以降の『ヴァーテクスコロニー』へのアクセスは幾分落ちてしまいました。また、コストの踏み倒しができなくなったため、低コストでアーティファクトを供給するために『アーティファクトスキャン』を活用する必要があり、こちらもやはり手札に持てているかどうかで取れる戦略の幅が変わってきます。このように制限事項も増えたため、各種カードのチョイス先はもちろん、手札交換で度のカードを探しにいくのか、手札との兼ね合いの中『パラダイムシフト』のコストをどこまで下げるのかなど、妥協も織り込んだ数ターン越しの使い手の見通しを問われるデッキとも言えるでしょう。

 

ここまで、2次予選のフィーチャーマッチで活躍した9つのデッキについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか。個人的にはすべてのクラスの活躍を見ることができて、一プレイヤーとしてとても嬉しい思いですが、リノセウスエルフや魔道具専門店ウィッチなど、実際に2次予選に登場したデッキタイプはさらに多いでしょう。本日7月28日のカード能力調整を受け、新たなデッキタイプが台頭する可能性もあります。このかつてない複雑な環境を制し、ファイナリストに名を連ねるのは一体誰なのか。注目のプレーオフは8月1日(土)、14時から放送開始です。それでは、配信でお会いしましょう。

【文:まる】

オンライン予選大会 プレーオフ

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