【オンライン予選大会 2次予選レポート】RAGE Shadowverse 2020 Summer
昨今の情勢を鑑みて、オンライン開催という初の試みに至った今回のRAGE。いつもと勝手の違う大会形式に戸惑った参加者も少なくなかった中、皆様のご協力により、無事2次予選までの日程が終了しました。オフラインならではの熱気やプレイヤー同士の交流、配信卓での選手の表情など見慣れた光景がないことに寂しさを覚える場面もありましたが、一方で普段は地理的な都合により参加を見送っていたプレイヤーも続々と参戦し、過去大会に勝るとも劣らない賑わいとなりました。初めての挑戦で課題も残りますが、これまで回を重ねるごとに進行や演出など多方面でパワーアップし続けて来たRAGEなら、きっと次回以降の快適な大会経験に活きることでしょう。
さて、今回の予選大会は平時のようなDay1・Day2形式ではなく、複数日程による1次予選と1日の2次予選、そして後日行われるプレーオフによって構成されています。現在はプレーオフを控えている段階のため、予選参加者のクラス選択統計などはまだお出しすることができませんが、大会の熱が冷めないうちに、まずは2次予選の模様を振り返っていきたいと思います。いつも通り、フィーチャーマッチで登場したデッキタイプを中心に見ていきましょう。
機械自然ドラゴン
新パック「ナテラ崩壊」の目玉カード《鋼鉄と大地の神》を軸に、中盤以降の盤面形成や《影の侵食》のダメージによる勝利を目指すデッキです。
長所
- PPブーストとコストの踏み倒しにより、1ゲームでプレイできるカードの本来の総コストで他のデッキを引き離す
- ダメージソースが主に盤面と《影の侵食》の2種類あり、手札や相手に合わせて勝ち筋の調整が効く
- ドロー手段・手札を増やす手段が多く、《鋼鉄と大地の神》のパフォーマンスを引き出しやすい
短所
- 多面除去の手段が限られているので、自分の場にフォロワーが少ないシーンでは相手の盤面に対応しづらく、体力を失いやすい
- 《鋼鉄と大地の神》への融合の仕方次第では《ナテラの大樹》の破壊枚数を稼ぎづらく、《影の侵食》のダメージが伸び悩む
今大会最大勢力の一角と目される機械自然ドラゴンは、主要な機械・自然ハイブリッドデッキの中では唯一、自然カードを基盤としています。そのため《ナテラの大樹》によるドロー供給が多く、《鋼鉄と大地の神》へのアクセスに比較的優れている点が特徴です。ドラゴンクラス持ち前のPPブーストとの噛み合い次第では5~6ターン目に《鋼鉄と大地の神》がプレイ可能なうえ、長所として触れたとおり手札を増やすことも得意なため、ほかのデッキに比べて《鋼鉄と大地の神》を複数枚プレイしやすくなっています。こうした長所を活かして素早く強固な盤面を作り、相手が対処に追われている隙に《影の侵食》を起動して勝利するという流れは今環境において頻繁にみられる光景で、こうしたプレイ指針の分かりやすさも人気の理由と言えるでしょう。
しかし、《鋼鉄と大地の神》をプレイしたターンの行動の選択肢がドローに大きく左右される側面もあるため、「《鋼鉄と大地の神》のプレイと手札の増加でどちらを優先するか」「除去カードや《影の侵食》などを融合するべきか否か」など繊細な判断が問われる場面も少なくありません。プレーオフでは是非、出場選手のそのような難しい局面でのプレイに注目してみてください。
機械ヴァンパイア
小型の機械フォロワーを中心に序盤戦の主導権を握り、後半には《真紅の抗戦者・モノ》による大ダメージでの決着を狙うミッドレンジデッキです。
長所
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- 序盤からフォロワーの展開量が多く、盤面での優位を築きやすい
- 後半戦は《夜明けの吸血鬼・ノイン》による盤面勝ちと《真紅の抗戦者・モノ》による疾走での勝利、2つの勝ち筋を並行して狙うことができる
- 体力回復手段の質が高く、盤面で後れを取らない限り体力を保ちやすい
短所
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- 《鋼鉄と大地の神》以外にコスト面でアドバンテージを得る手段がなく、中盤以降、盤面で力負けしやすくなる
機械自然ドラゴンと肩を並べ、今大会の主流デッキと考えられるのが機械ヴァンパイアです。序盤の盤面展開や終盤の疾走など、オーソドックスながら柔軟なダメージソースを持つこのデッキは、一方で守護・回復の面でも優秀なカードが多く、《機械神》による盤面制圧も強力など、防御的な一面も併せ持ちます。
このように、一見すると隙のないオールラウンダーといった印象を受けるかもしれませんが、機械自然ドラゴンや機械エイラビショップに比べて《鋼鉄と大地の神》をプレイできるタイミングが遅く、中盤相手から先にプレイされる《鋼鉄と大地の神》に苦しむ展開もままあります。そのため、実戦では序盤の盤面形成で稼いだアドバンテージを切り崩しながら自身の《鋼鉄と大地の神》まで繋ぎ、コストを落とした《夜明けの吸血鬼・ノイン》や《真紅の抗戦者・モノ》での決着を狙う形が少なくありません。
こうした「中盤を凌ぐための準備」という目線で序盤を戦う際には、いかに効率よく自分の盤面にフォロワーを残すかが重要になりやすいため、相手の除去カードや厄介なフォロワーの有無を丁寧に読む必要があります。逆に7ターン目の《真紅の抗戦者・モノ》での勝利など早期決着を目指すケースでは、盤面を犠牲にしてでも強気に相手の体力を削りにいかなくてはならないため、5~6ターン目あたりの「序盤から中盤に切り替わるタイミング」における「繋ぎか、詰めか」というプレイヤーごとの判断と実際の繋ぎ方・詰め方は、プレーオフのひとつの見どころになるかもしれません。
機械エイラビショップ
《リモニウムの救済》によるコストカットをエンジンとして展開したフォロワーを大幅に強化し、対処不可能な盤面を相手に押し付けて勝利するデッキです。
長所
- 《リモニウムの救済》・《鋼鉄と大地の神》という2つのコストカット手段を併せ持ち、1ターン当たりにプレイできるカードのコストパフォーマンスが高い
- 守護フォロワーを同時に複数展開しやすく、疾走フォロワーに強い
- 序盤の盤面の取り合いに強い能力を持つ低コストフォロワーが多く採用されている
短所
- デッキのパフォーマンスを発揮しきるために必要なカードの枚数が比較的多い
- 操作量の非常に多いターンが存在し、求められるプレイの正確さ・スピードのハードルが高い
- ダメージの大半を盤面から捻出するため、全体除去や守護の影響を受けやすい
最難関デッキの呼び声も高い機械エイラビショップですが、今大会では多くのプレイヤーがその難しさと向き合い、持ち込みを決断した様子がうかがえました。
勝ち筋そのものは機械自然ドラゴンや機械ヴァンパイアに比べてシンプルで、《ヘヴンリーイージス》の着地を狙うか否かを含めても、一貫して盤面形成に心血を注ぐデッキだと言えるでしょう。にもかかわらず難しいとされる理由としては、やはり《マシンフィンガー・イヴィル》や《鋼鉄と大地の神》をプレイするターンの選択肢・操作量の多さが挙げられます。《鋼鉄と大地の神》のドロー見込みを踏まえた《リペアモード》の融合についての判断や、自由な盤面形成のために《マシンフィンガー・イヴィル》をあえて退場させるタイミングの判断など、少しのミスが負けに直結する展開も日常茶飯事です。プレーオフではやはり、その爆発的な盤面形成ターンの見ごたえに期待したいところです。
一方でフルスペックを出すためには早期に《欠落の聖女・リモニウム》・《マシンフィンガー・イヴィル》・《鋼鉄と大地の神》を持っていることが望ましいなど、他の主要デッキよりもやや手札の要求値が高くなっています。それを実現するための手札交換や、パーツが揃い切らない時の攻守の割り切り方など、一見して分かりづらいポイントも多いため、上位選手のプレイからは片時も目が離せません。
アーティファクトネメシス
過去の同デッキタイプとは趣を変え、アーティファクトカードを場や手札に生成しながら、破壊されたアーティファクトカードの種類を参照する効果を活かして勝利を目指すデッキです。
長所
- 多彩なアーティファクトカードにより、柔軟な立ち回りが可能
- 特定カードへの依存度が低く、大きな手札事故が起こりにくい
- 《パラダイムシフト》・《機構の解放》を軸にコストを踏み倒し、ある程度大掛かりなアクションを取ることも可能
短所
- アーティファクトカードの生成コストがやや高く、《パラダイムシフト》のパフォーマンスを活かすためには計画的なアーティファクト生成が必要
- 瞬間的な盤面形成では、《鋼鉄と大地の神》擁するデッキに一歩譲ることが多く、中盤戦の盤面維持が課題
機械エイラビショップがその操作量・思考量から「手を止めてはいけない」難しさを持つデッキだとすれば、膨大な選択肢ゆえに「手を止めて考え続けねばならない」難しさと向き合うのが今環境のアーティファクトネメシスです。
一般的なデッキリストでは、ゲーム中に生成できるアーティファクトカードの種類は10種類。ドロー・守護・突進・ドレイン・疾走など様々な効果とコストが混在するこれらのカード群を、状況に応じて使い分けていく判断が勝負の鍵となります。その対応力の高さが魅力である一方、他のデッキに比べて分かりやすいコンボが少なく、1ターンで劇的にゲームを動かす力には乏しいため、安定して勝利を収めるには計画的に手札や盤面をコントロールしていく大局観が重要です。その意味では、玄人好みのデッキと言えるかもしれません。
また、例えば《アブソリュート・モデスト》をプレイするタイミングではコストの観点でアーティファクトカードを出しづらいなど、チョイスの場面に限らず、「Aを選べばBはできない」という取捨選択が絶えず繰り返されるため、使い手の思い描くゴールによって、その選択は千差万別です。プレーオフのフィーチャーマッチに登場した際には、自分ならどうプレイするかを考え、実際のプレイヤーの選択との違いに思考を巡らせてみるのも面白いのではないでしょうか。
コントロールエルフ
豊富な除去・回復カードで相手の攻撃をさばきながら、《豪風のリノセウス》のプレイ回数を伸ばし、1ターンで一気に相手の体力20点を削る切ることを目指す、コンボ要素の強いコントロールデッキです。
長所
- 長期戦に持ち込むことができれば、豊富なドローソースで《豪風のリノセウス》のコンボパーツ群に高いアクセスを見込める
- 強力な盤面除去カードが多く採用されており、相手の盤面からのダメージを受けにくい
- 《アウェイキングガイア》の採用により、相手の守護フォロワーの影響を緩和できる
短所
- 回復・除去・《豪風のリノセウス》のプレイカウント進行のすべてを同時に行うことは難しく、丁寧な優先度管理が必要
- 能動的な盤面形成はそれほど強力ではなく、相手の自由なプレイをけん制しにくい
アルティメットコロシアム環境から続くコントロールエルフですが、《無窮の輝石・カーバンクル》がローテーション落ちし、代わりに《アウェイキングガイア》が加わったことで、回復と除去のバランスにおける除去の比重が高くなりました。
今環境屈指のパワーカードとして多くのデッキで採用が見られる《鋼鉄と大地の神》ですが、その効果「手札のリフレッシュとコストの踏み倒し」はコンボのアシスト性能もさることながら、非常に盤面形成向きのものでもあります。そのため、《鋼鉄と大地の神》を採用していないデッキにとっては、相手の強力な盤面にいかにして対抗するかが課題となりやすく、盤面除去のパフォーマンスが上がったコントロールエルフはこうした環境の動向にマッチしているとして選択されることが多い印象です。
ただし、除去能力において他の追随を許さないとはいっても、実際にそのパフォーマンスを引き出すには「カードのプレイ回数」という条件がついて回ります。必ずしも、毎ターンプレイ回数を十分に重ねられるわけではないため、緊急性の低い状況でプレイ数を稼いで除去に回ってしまうと、のちのち除去カードやプレイ数を稼ぐカードが不足してしまうという展開が待ち受けています。目の前の除去可能なシーンを我慢し、体力を削られることを許容することで、後の相手の決め手となるような盤面への対応策を温存するようなプレイにはやはり複数ターンにわたる俯瞰的な視点が必要で、プレーオフにおいても使い手の腕の見せ所になることでしょう。
ここまで、2次予選のフィーチャーマッチで活躍した5つのデッキについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか。いずれのデッキもそれぞれに違った難しさ・面白さがありますので、実際のプレイや観戦にあたっての一助になれば幸いです。
今回、プレーオフ進出者は72名となっており、勝ち抜けに4勝を要求されるプレイヤーも出てくるなど厳しい戦いが予想されます。このレポートで触れたデッキごとの見どころ以外にも、プロ選手や過去のファイナリストの対戦カードであったり、まだフィーチャーマッチに現れていないデッキの活躍であったりと、注目ポイントは尽きません。是非楽しみにお待ちください。それでは5月16日(土)、14時からの配信でお会いしましょう。
【文:まる】
オンライン予選大会
プレーオフ2020年5月16日(土)14時〜
配信
プレーオフOPENREC.tv YouTube