【予選大会Day1レポート】RAGE Shadowverse 2019 Autumn
今大会も、約6000名の参加者がわずか8つのファイナリストの座を賭けて、熱い戦いを繰り広げました。
今大会はカード能力調整から短い期間での開催となったため、普段よりも効率的な環境研究が求められるなど、時間的制約との戦いもあったのではないでしょうか。
プレイに関しても、まだ定石等が蓄積される前ということで、みなさん一手一手丁寧に時間をかけて考える様子が印象に残りました。
さて、カード能力調整後には、様々なデッキタイプを見ることができるようになりましたが、今回の予選大会ではどのようなデッキが活躍したのでしょうか。今回から2回のレポートに分けて、
- 今大会の環境
- 大会の主要デッキの概要
- 各デッキの調整内容のピックアップ
などを見ていきたいと思います!
Day1のクラス・デッキ分布
Day1のフィーチャーマッチにおけるクラス・デッキ選択の分布はこのようになっています。クラスでは、ウィッチ・ヴァンパイア・ビショップの3クラスが人気です。
クラスごとにデッキタイプの内訳を見てみると、ビショップはほぼエイラ型でしたが、一つだけ機械ビショップが登場しており、フィーチャーマッチでは会場を沸かせました。
ヴァンパイアは主流となったのは機械と復讐の両ギミックをハイブリッドした機械復讐ヴァンパイアで、復讐に特化したヴァンパイアはあれど、機械に特化したタイプは、フィーチャーマッチではお目にかかりませんでした。
そして最もバリエーションに富んでいたのはウィッチで、ソロモン・機械・バーンの3タイプを、バランスよく目にしました。
こうして、Day1から様々なデッキタイプと巡り合いましたが、当然どのデッキにも長所と短所が存在します。
主だったデッキのそれぞれについて、どのような特徴があって、今回のRAGEではどのような立ち位置にあったと予想されるのか、順番に見ていきたいと思います。
エイラB
《清純なる祈り・エイラ》の進化を起点として、自身の盤面を強化しながら戦うデッキで、今大会における最大勢力だったことが予想されます。
ひとたび《エイラの祈祷》が場に出てしまえば、デッキ内のほとんどのカードで盤面をサポートできるようになるため、プランが明確になりやすく、デッキパワーの高さと相まって非常に扱いやすいデッキと言えます。
長所
- 盤面強化による有利トレードが非常に強力
- 低コストの機械フォロワーにもトレード向きの性能を持つカードが多く、序盤から試合の主導権を握りにいける
- 《欠落の聖女・リモニウム》進化から《ヘヴンリーイージス》着地を狙うサブプランも同時進行可能
短所
- 低コストのカードが多いため手札が細くなりやすく、リソース管理が難しい
- 進化必須に近いフォロワーが複数存在するため、EPの温存がシビア
- 手札から打点を出せないためロングゲームになりやすく、盤面処理に長けていてバーストダメージを出せるデッキには不利がつく
このように、エイラビショップは盤面制圧に長けた特徴を有しており、盤面を主戦場とするデッキに睨みをきかせて今環境を規定しているデッキの1つです。
《清純なる祈り・エイラ》がカード能力調整を受けたことで中盤の爆発力こそ失ったものの、天敵であった復讐ヴァンパイアがその数を減らしたことで、環境内での立ち位置は以前にも増して良くなりました。
とはいえ、カード能力調整前よりも対策しやすくなったことも事実であり、「エイラビショップにどう対抗していくか」というのは、今大会に向けて各デッキを調整するうえで逃れえない命題であったように思います。
復讐ヴァンパイア
《堕落の漆黒・アザゼル》や《ライカンベルセルク》といった、相手の行動に依存せず復讐状態に入ることが出来るカードを搭載することで、《カラミティブリンガー》や《破滅のサキュバス》などのパワーカードの強みを引き出して戦うデッキです。
復讐状態でのパフォーマンス向上が著しいため、復讐状態に入ることさえできれば、多種多様なデッキに対抗することができます。
能力調整の影響を最も受けたデッキタイプであり、今大会では使用数の減少が見てとれました。
長所
- 強力な盤面処理能力を持つ大型フォロワーを複数抱えているため、ロングゲームに強い
- ダメージカット効果をリーダーに付与でき、バーストダメージによる決着を狙うデッキとのマッチアップでも、気にせず長期戦を戦うことができる
- 一方で《レイジコマンダー・ラウラ》の疾走付与効果によりバーストダメージを出すことも出来るため、相手に合わせてある程度試合のスピードをコントロール可能
短所
- 復讐状態に入れなければ全体的にパフォーマンスが低く、他のデッキに力負けしうる
- 《堕落の漆黒・アザゼル》の進化時効果でリーダーのライフ上限が10になるため、強力な除去が可能になる前の中盤にフォロワーを大量展開してくるデッキや、細かいバーン手段を豊富に持つデッキにはライフを削られやすい
復讐ヴァンパイアは上記のような特徴を持っています。
《絢爛のセクシーヴァンパイア》の能力調整を受けて代用されるようになった《ライカンベルセルク》は、復讐に入るために最低でも合計3コストを要求されるカードです。
《哀切の悪鬼》によるコストカットも困難になったため、総じて以前よりも復讐状態に入れるターンが遅くなりました。
とはいえ、一度復讐状態に入ってしまえば以降のカードパフォーマンスは据え置きで、《カラミティブリンガー》の確定多面除去と《レイジコマンダー・ラウラ》の疾走付与から繰り出されるバーストダメージがエイラビショップに有効であるという構図は大きく変化しなかったため、今大会でもエイラビショップのシェアがかなりのものになると予想したプレイヤーにとって、有力な持ち込み候補だったのではないでしょうか。
機械復讐ヴァンパイア
先ほど復讐ヴァンパイアの弱点として挙げた「非復讐状態時のパフォーマンスの低さ」を補うべく、主に復讐状態に入りづらい序盤戦で使いやすい低コストカードを中心に、機械カードを取り入れたデッキです。
機械を主軸とするヴァンパイアにも「多面処理における《機械神》への依存度が高い」という短所があり、それを《カラミティブリンガー》や《破滅のサキュバスの》除去性能でカバーできるとあって、双方の欠点を緩和できるハイブリッドの形が注目を集めています。
長所
- 《破滅のサキュバス》や《真紅の抗戦者・モノ》のように、復讐, 機械両タイプのフィニッシャーを採用しており、いずれも盤面を取るための運用も可能なため、手札に応じてゲームプランを調整しやすい
- 《鉄刃の悪鬼》が有効に機能すれば、復讐ヴァンパイアに比べてテンポロスを抑えつつ、ドローも充実しやすい
- ゲーム終盤は相手に《真紅の抗戦者・モノ》のバーストダメージと、《破滅のサキュバス》や《カラミティブリンガー》による盤面制圧という異なる2種類のプレッシャーを同時にかけて、厳しいケアを要求することが可能
短所
- 枠の都合上《ライカンベルセルク》の採用が難しく、復讐ヴァンパイアに比べると復讐状態へのアクセスが悪いため、復讐時にパフォーマンスが向上するカードは手札で腐るリスクもやや高い
- 機械ヴァンパイアに比べて機械カードの総枚数が少ないため、《機械神》や《鉄刃の悪鬼》のパフォーマンスにもムラがある
このように、復讐ヴァンパイアと機械ヴァンパイアの欠点を小さくした代わりに、手札が噛み合わないリスクが高まったというのが機械復讐ヴァンパイアの特徴と言えるでしょう。
このリスクを最小化するにはゲーム開始時の手札交換や、デッキ構築段階でのカード枚数調整など、繊細な調整が必要です。
そのため、調整期間の短い今回のRAGEに持ち込むにはややハードルの高いデッキという印象が個人的にはありましたが、カード能力調整前からすでに研究を始めているプレイヤーもいたり、大会直前期のJCGで優勝構築がお披露目されたりと参考になる情報が何かと多く、使いこなした時のパワーの高さも高評価につながって、今大会のメインストリームの一端を担っていたと言えそうです。
ソロモンウィッチ
《真実の絶傑・ライオ》のファンファーレで山札のカードに大量のスペルブーストを乗せることでデッキパワーの底上げを図り、試合後半に一気に攻め込むことを得意とするデッキです。
《魔術の王・ソロモン》から手に入る《ソロモンの指輪》のサーチ能力とコストダウン能力が、《真実の絶傑・ライオ》の着地前・着地後の双方において重要な役割を担っています。
長所
- 《真実の絶傑・ライオ》着地後のデッキパワーは全デッキ中トップクラス
- 《運命の導き》や《真実の掟》などのドローソースが豊富で、中盤以降キーカードが引けない事故は比較的起こりづらい
- スペルブーストによるコストダウンや効果上昇により、1ターンあたりのパフォーマンスの最大値を対戦相手に読まれない
短所
- 初期コストの高いカードが多いため、序盤にドローが偏って身動きが取れないタイプの事故は起こりうる
- 全体除去効果を持つカードが基本的に採用されないため、スペルブーストの進んでいない序盤からフォロワーを展開され続けると対応しきれず、ライフを削られやすい
ソロモンウィッチの大まかな特徴はこのようになっており、先日のカード能力調整でエイラビショップや復讐ヴァンパイアの強力な動きが始まるターンが後ろにずれたことで、序盤戦を苦手とするこのデッキの弱点が間接的に緩和された形となります。
また、「鋼鉄の反逆者」環境で使用されていたデッキ基盤は「Dawn Break, Night Edge」に収録されていたカードを採用していなかったため、最新のローテーション落ちの影響を受けませんでした。
したがって、デッキとしての試行錯誤が新カード《双刃の魔剣士》の採否や枠の調整レベルで事足り、プレイの方針なども前環境のものをほとんど引き継げた点は、当日までの時間が限られていた今大会において有利に作用した可能性が高いでしょう。
バーンウィッチ
《真理の術式》や《ソニック・フォー》、《オリハルコンゴーレム》のアクセラレートによるバーンダメージ(カードの効果で相手リーダーに与えるダメージのこと)と、《真実の狂信者》や《双刃の魔剣士》による疾走ダメージで積極的に相手リーダーのライフを削りにいくデッキです。
状況に応じて相手の盤面を無視してバーンを優先するなど、自分と相手のライフ推移を丁寧に予測したうえでの計画的なプレイが求められます。
長所
- 盤面に依存しないダメージソースを豊富に抱えるため、盤面処理に長けたデッキから対策をされにくい
- バーンダメージを持つカードの多くが低コストのため、相手盤面の強さに合わせて、除去とバーンとで柔軟にPPの使い方を調整できる
短所
- ソロモンウィッチと同様に全体除去効果を持つカードがないため、フォロワーの横並べに対応することが苦手
- 盤面形成が最小限のため出せる打点に限りがあり、《オリハルコンゴーレム》の消滅や、相手リーダーの回復でプランが崩壊してしまうリスクを抱える
バーンウィッチはこのような特徴を持ちます。
今環境、他の多くのデッキが後半戦に焦点を当てたデザインである中、序盤から積極的にライフプレッシャーをかけていくことで、相手の行動に制限をかけていく展開になりやすいと言えるでしょう。
特にヴァンパイアは機械ギミックの有無に関わらず、《堕落の漆黒・アザゼル》3枚採用がスタンダードとなっていますが、もともと細かいダメージを連続して与えていくバーンウィッチにとって、進化時効果のダメージカットは全く気にならず、むしろライフ上限の減少をしっかりと咎めていける有利マッチとなります。
機械ウィッチ
《マシンブックソーサラー》によるPP回復効果をエンジンとして、機械シナジーを持つカードの組み合わせでアドバンテージを稼ぎ続けるデッキです。
《機械生命体》や《機械魔導のゴーレム》といった、1ターンにプレイする機械カードの枚数でパフォーマンスを大きく変えるカードが多いため、PPを使い切ることよりも手札の温存を重視する必要がある場面も多く、デッキパワーを引き出すには少し慣れが必要かもしれません。
長所
- 盤面処理、ドロー、バーンなど取れる行動の幅が広く、相手のデッキや動きに応じたゲームメイクが可能
- フォロワーが多く、コストカーブも比較的整っているため、パスが起こりづらい
短所
- 《マシンブックソーサラー》着地の有無によるパフォーマンスの差が著しい
- 《機械生命体》や《機械魔導のゴーレム》など、キーカードの役割が大きく、引けていない状況下ではリソース等に大きな制限がかかる
機械ウィッチの特徴はこのようなものになります。
もともとカード能力調整前から注目を集めていたデッキですが、キーカードの種類が多いためにドローの要求値が高く、早い展開のゲームについていけない弱点がありました。
カード能力調整によって、全体的にゆっくりとしたゲームの運びになったことで、必要なカードを引くまでの制限時間が伸び、隙の少ないオールラウンダーデッキとしての側面が明らかになってきたデッキだと言えるかもしれません。
Day1のフィーチャーマッチを戦った主要デッキは以上となります。
こうしてみると、基本的には手札事故などさえ回避すれば大半のデッキに対して遅れをとらずに済むような、総合力の高いデッキが好んで採用されていた様子がうかがえます。
カード能力調整から間もないことから予想された、多様なデッキが混在する大会環境に合わせたデッキ選択だと言うことができます。
ただ一方で、エイラビショップをターゲットとする復讐ヴァンパイアや、《堕落の漆黒・アザゼル》を採用しているヴァンパイア全般をターゲットとするバーンウィッチなど、明確な仮想敵を持ったデッキが散見されたことからも分かるとおり、多数派デッキを冷静に見定めてきたプレイヤーも少なからず存在していたようです。
こうしたそれぞれのデッキ選択がどのような大会結果に結びついたのかについては、Day2のレポートで詳しく見ていきたいと思います。
【文:まる】