2024 Summer

【予選大会Day2レポート】RAGE Shadowverse 2019 Autumn

RAGE Shadowverse 2019 Autumn予選大会レポート、今回はDay2を中心にお届けします。

Day1では、ウィッチ・ヴァンパイア・ビショップの3クラスが人気でしたが、Day2ではどのようになったのでしょうか。早速、クラスごとのDay2進出率と、シード選手を含めたDay2のクラス分布を見てみましょう。

Day2のクラス・デッキ分布

クラス別Day2進出率

Day2クラス分布

クラス別のDay2進出率は、やはりウィッチ・ヴァンパイア・ビショップの人気3クラスが特に高く、残念ながら他のクラスはなかなか振るわなかったようです。

Day2から参加となったシード選手も上位3クラス以外を持ち込むことはほとんどなく、結果としてDay2の環境はDay1を踏襲しつつ、より上位3クラスのシェアが拡大した状態だったと言えます。
ちなみに、フィーチャーマッチに登場したクラスとデッキタイプの集計は次のようになります。
比較用に、Day1レポートに掲載した「Day1フィーチャーマッチのデッキ分布」を再掲します。

 

Day2フィーチャーマッチのクラス分布

Day2フィーチャーマッチのデッキ分布

Day1フィーチャーマッチのデッキ分布

 

こちらもやはり上位3クラスが近い割合での登場となっています。
デッキタイプごとの分布についても見てみましょう。

主要なデッキタイプの中では、Day1と比較した時、エイラビショップとバーンウィッチの減少に対して、機械復讐ヴァンパイア・ソロモンウィッチ・機械ウィッチのシェア拡大が目に留まります。

もちろんフィーチャーマッチをお届けできた試合は全体から見ればごく一部で、大会におけるすべての試合を合わせると、また違った集計結果が出る可能性もあります。

とはいえ、フィーチャーマッチでの分布を基準に考えるなら、やはりDay1レポートで触れた「手札事故などさえ回避すれば大半のデッキに対して遅れをとらずに済むような、総合力の高いデッキ」が多くDay2進出を決めたものと考えられます。

特にウィッチについてはDay2進出率トップのクラスでありながら、フィーチャーマッチへの登場率を見る限りではソロモン・機械とバーンとの間で明暗が分かれていたため、ソロモンウィッチ・機械ウィッチが今大会で頭一つ抜けた勝率をマークしていたことも予想されます。

さて、こうして朧気ながら、デッキタイプ毎の今大会での活躍ぶりは掴めてきました。
とはいえ競技的な思考のもとでより高い勝率を目指す場合、デッキタイプの決定以外にもやることは山積みです。

プレイの洗練や手札交換の精査、デッキリストの細かい調整など様々なテーマがありますが、今回のレポートではデッキリストの調整について、少し触れてみたいと思います。

一口にデッキ調整と言っても、これまた採用カードの検討から枚数の微調整、代用カードの模索など多くのポイントがあり、そのアプローチもプレイヤーによって千差万別です。

Day1レポートでは各デッキの大まかな長所・短所について触れましたので、せっかくということで、ここではフィーチャーマッチやファイナリストのデッキで見かけた少し珍しいカードや、採用枚数に個人差が出やすいカードの採用目的について、デッキの長所・短所にどのような影響が出るのかという視点から考えてみましょう。

なお、いち解説目線からの推測になりますので、実際に使用されたプレイヤーのかたの意図と少しずれていたら申し訳ありません。

闇の翼・オリヴィエ(エイラビショップ)

今大会のファイナリスト、Ma選手のエイラビショップ

闇の翼・オリヴィエ(エイラビショップ)

EPが無くなってからもフォロワーに進化を切ることができるようになる能力が、「EPの温存がシビア」というエイラビショップの欠点を緩和してくれるとして、一定の採用が見られたカードです。

特に《清純なる祈り・エイラ》の能力調整以降、エイラビショップのロングゲーム化が進んだことで活躍の機会を増やし、注目を集めつつあったと言えるでしょう。
また、《闇の翼・オリヴィエ》に関連するカードとして、《蒼の少女・ルリア》もエイラビショップにおける珍しい採用カードです。

予選大会では、AXIZに所属するRUMOI選手がDay1のフィーチャーマッチを戦った際、使用する機会こそなかったものの、手札に見えたことで脚光を浴びました。

エイラビショップにおけるこのカードの主な役割はエンハンスによる《闇の翼・オリヴィエ》の確定サーチとなりますが、盤面への貢献も無視出来ません。
エンハンスでのプレイ時は1/1/1相当のサイズであり、《エイラの祈祷》による全体バフを考慮すれば、1PPで盤面の並びをひとつ増やすことが出来る点は侮れません。
加えて、ファンファーレの「ダメージを1回無効化する」能力も、場残りの可能性を高めて《エイラの祈祷》の恩恵を受けやすくなるため、デッキに噛み合っていると言えるでしょう。

このように《闇の翼・オリヴィエ》を採用する場合も、2枚以上の採用を考えるときには、《蒼の少女・ルリア》に枚数を割くことで、「盤面の戦いに強い」というエイラビショップの長所を伸ばす選択もあり、繊細な調整ポイントだったと考えられます。

デビルアイドル・トリル(復讐ヴァンパイア)

今大会のファイナリスト、pazuu選手の復讐ヴァンパイア

デビルアイドル・トリル(復讐ヴァンパイア)

能力調整以前から、復讐ヴァンパイアで少なくない採用が見られたこのカードですが、今大会では対機械復讐ヴァンパイアにおける役割がとりわけ大きかったように思います。

復讐ヴァンパイアでの採用は主に、《デビルソング》をチョイスして相手の横展開に対処または牽制することで、《堕落の漆黒・アザゼル》進化時効果のリスクを緩和することや、ミラーマッチの先攻時に《トリルメイド・アズ&イズ》との組み合わせで6ターン目の行動を埋めながら、7ターン目で相手よりも先に《破滅のサキュバス》をプレイ出来る状況を作り出すことを目的としていました。

今大会では純粋な復讐ヴァンパイア同士のミラーマッチよりも、むしろ小型フォロワーの横並べが発生しやすい機械復讐ヴァンパイアとのマッチアップで、上記の役割がより強くなっていたことが予想されます。

マジックミサイル(機械ウィッチ)

今大会のファイナリスト、アイン選手の機械ウィッチ

マジックミサイル(機械ウィッチ)

《マジックミサイル》は多くのウィッチデッキで使用されてきたカードですが、機械ウィッチにおいては採用の分かれるカードではないでしょうか。

機械ウィッチにおけるこのカードの役割はいたってシンプルで、概ねドローと除去の2点に尽きます。
ドロー効果がこのデッキの中核をなす《マシンブックソーサラー》などを引き込むために重要であることは言うに及ばず、除去に関しては、《ジェットウィッチ》や《フロートボードマーセナリー》といった攻撃力1のフォロワーで相手の体力2のフォロワーに対応できるようにすることで、序盤戦で盤面のリードを広げられにくくする意図があります。

それぞれ「キーカードへの依存度が高い」「序盤で大きくリードされると《マシンブックソーサラー》のプレイが困難になる」というこのデッキの弱点をカバーする働きとなっており、1枚のカードで両方の課題に回答できている点が、《知恵の光》など他のドロー特化のカードと比較して評価されたものと思われます。

オリハルコンゴーレム(ソロモンウィッチ)

オリハルコンゴーレム(ソロモンウィッチ)

バーンウィッチのキーカードである《オリハルコンゴーレム》ですが、今大会ではソロモンウィッチでの採用も見ることができました。

Day2のフィーチャーマッチではGxGに所属するちゃみ選手のドローで注目を浴びたカードですが、その役割は「スペルブーストの調整」と「ダメージソース」、「除去スペルの選択肢拡大」など多岐に渡ります。

ソロモンウィッチで2~3ターン目に《魔術の王・ソロモン》をプレイできた場合、7ターン目に《真実の絶傑・ライオ》をサーチするためには3~6ターン目までの合計15~18PPで7, 8回のスペルブーストをほぼ過不足なく行う必要があります。

大雑把に言えば、2コストにつき平均1回のスペルブーストを目指す形となるわけです。
このデッキではスペルブーストによってカードのコストが変わるため、手札の偏りによってはこのペースの達成が困難になるのですが、スペルブーストが不足していればアクセラレートでスペルとして使用し、逆に既にスペルブーストが既に7付近まで進んでいればフォロワーとしてプレイすることができる《オリハルコンゴーレム》はこのペース調整に大きく貢献してくれます。
スペルブーストが滞っていれば軽いスペルが求められ、逆に状況次第でスペルブーストを控えたくなるタイミングが5~6ターン目であることを考えると、1コストスペルと5コストフォロワーという《オリハルコンゴーレム》の2つの顔は狙ったかのようにこのニーズを満たしてきます。

ダメージソースとしての役割はバーンウィッチでの運用に近いため、細かい言及は省きますが、1コスト2点、または3コスト3点という形で、固定された低コストでダメージを期待できるため、《真実の狂信者》・《双刃の魔剣士》といった初期コストの高い打点カードの枚数を抑えるデッキ調整も可能となり、「手札事故が起こりやすい」というこのデッキの弱点をカバーすることができます。

また、《土の印》の消化ができるようになることで、《魔術の一撃》が除去スペルの採用候補として優先度を上げることにも繋がります。
同じ2コストの除去スペルとして比較対象にあがる《ウィンドブラスト》ですが、スペルブーストによりゲームが進むにつれパフォーマンスを大きく向上させる反面、ゲーム序盤で除去性能が不足するケースもあるなど一長一短です。

ソロモンウィッチの短所には「フォロワーの横並べが苦手」というものもあるため、ゲーム序盤の盤面対応能力をサポートする意味合いで《魔術の一撃》が採用候補として検討できるようになるのは、このデッキが適応できる環境の幅が広がるという意味で、《オリハルコンゴーレム》起用のメリットの一つと言えるかもしれません。

光明齎す発明家(リーシェナネメシス)

今大会のファイナリスト、掴む選手のリーシェナネメシス

光明齎す発明家(リーシェナネメシス)

全体的な使用数こそ人気の3クラスに劣ったものの、リーシェナネメシスはファイナリストの使用デッキとして今大会でも存在感を放ちました。

そんなリーシェナネメシスで、おそらく《光明齎す発明家》は人によって採否や枚数が分かれるカードではないでしょうか。
これまでは多くの場合で、「《素敵な発明品》による時間稼ぎ」「《破壊の~~》系統のカードの効果対象を確保する」あたりがその役割として意識されていましたが、今環境ではもう一つ大きな役割が増えていました。それは「2ターン目の選択肢の拡大」です。

今環境のリーシェナネメシスの一般的なデッキリストですが、《フロートボードマーセナリー》や《マシンエンジェル》、《歯車の廻し手・リヒト》といったカードの採用により、序盤戦で攻撃力1のフォロワーが場に現れやすくなっています。
そのため「2ターン目の行動がやや心細くなりがち」という短所を抱えているのですが、1ターン目に《光明齎す発明家》をプレイすることでそうした攻撃力1のフォロワーが仕事をできる場にすることができ、2ターン目の行動をより柔軟に選択できるようになります。

新カードパック実装以前では攻撃力1のフォロワーがそこまで多くなかったため、今環境になって新しい役割を帯びたカードと言えるでしょう。

また、珍しいケースではありますが、Day1のフィーチャーマッチではコストの軽さを活かして複数の《光明を齎す発明家》を展開し、復讐ヴァンパイア相手にライフ展開を仕掛けていく場面も見られました。
チョイス先のカードもそれぞれライフに影響するもので、お互いのライフ管理が重要となってくる対復讐ヴァンパイアにおいても、役割を持っていたカードだと言えそうです。

 

 

さて、今回は各デッキの特定のカードに焦点を絞って紹介していきましたが、いかがでしたでしょうか。
ほとんどのカードについて、デッキとの噛み合い方やメリットを中心にお話しましたが、当然どのカードにしても、デメリットも存在します。

そもそも40枚という限られた枠をやりくりする以上、今回見たようなカードを採用するにあたって、代わりに抜けるカードの強みはデッキから失われてしまうことが大前提にあります。

しっかりと各カードの長所と短所を理解して、天秤にかけながら採用カードを選んでいくことが大事だと言えるでしょう。

前回のレポートと合わせて、主に次のようなことをまとめてきました。

  • RAGE 2019 Autumn 予選大会の環境はどのようなものだったか
  • 大会で見られた主要デッキの特徴
  • 各デッキのカード選択による影響

今大会はカード能力調整からの期間が短く、多くのプレイヤーにとって、調整が困難だったかと思われます。

そのような中、競技的に考えるのであれば必要になってくるであろう、デッキ選択における「各デッキの特徴把握」や採用カードの選択による「デッキの長所・短所の調整」というポイントについて、大まかにではありますが自分なりに振り返ってみたつもりです。

これらのポイントは、いつでもプレイヤーにとっては頭痛の種であると同時に、「試行錯誤の末に納得のいくデッキを作り上げる」というカードゲームの醍醐味の一つでもあります。

これからも、一人でも多くのプレイヤーが楽しく頭を悩ませてRAGEに挑んでくれることを、個人的には楽しみにしています。また次の大会で、刺激的なデッキやプレイの数々が見られるのを心待ちにしています!

【文:まる】

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