解説の”まるさん”執筆レポート「暗黒のウェルサ」環境まとめ【RAGE Shadowverse 2021 Summer エントリー4月25日(日)まで】
新カードパック「暗黒のウェルサ」実装からはや3週間が経とうとしています。いつもであれば、これだけ時間があればある程度デッキが絞られていくことが多い印象ですが、今環境ではまだまだ多様なデッキが活躍を見せています。
RAGE Shadowverse 2021 Summerのエントリー締切も間もなくというこのタイミングですが、こうした理由からデッキ探しに難航しているかたもいるのではないでしょうか。ここで現在人気のデッキタイプを改めて確認してみましょう。情報を整理して環境や自分のプレイスタイルに合うデッキを探すとともに、RAGEに向けて意識すべきポイントの発掘に繋がれば幸いです。
新デッキ・復刻デッキ
まずは「暗黒のウェルサ」環境から新たに登場したデッキから見ていきましょう。かつて存在していたデッキタイプも、直近の環境で目にする機会がなかったものについては装いも新たになった復刻デッキとしてこちらでご紹介します。
多くのデッキが誕生した今環境ですが、ここでは特に人気の高いものとして、セッカエルフ・進化ヴァンパイア・アーティファクトネメシスを挙げます。
セッカエルフ
《瘴気の妖精姫・アリア》や《閃光のエルフ・アルバータ》による削りと盤面除去で中盤を立ち回り、《宿命の狐火・セッカ》にバウンスカードを活用したバーストダメージで相手の体力を奪い去るデッキ。
JCG Shadowverse Open 17th Season Vol.10優勝 メンニー選手のセッカエルフ
強み
- 盤面制圧と相手リーダーへの攻撃を同時に行うことができる
- 守護を自力で突破可能なフィニッシャーの存在
- 軽量デッキならではの選択肢の広さ
課題
- キーカードのサーチができない
- 守護・回復といった防御面がやや心許ない
ストーリー「暗黒世界編」からの登場となった《宿命の狐火・セッカ》擁する新デッキがセッカエルフです。
除去とダメージを同時にこなす能力が強力ということは《原初の竜使い》や《波濤のプレシオサウルス》といった先人達を見れば明らかで、ひとたび《瘴気の妖精姫・アリア》に進化を切ることができれば、驚異的な盤面制圧力を発揮してくれます。盤面に軸足をおいて戦うデッキに対して容易くはリードを許さず、一方的に相手の体力を詰めていける展開もしばしばです。
ただし、《瘴気の妖精姫・アリア》を狙って引きにいけるカードは現在のカードプールには存在しません。必ずしも「最速で効果を発動しなければ……」ということはありませんが、基本的にあえて発動しないメリットのない効果である以上、発動タイミングによってパフォーマンスが大きく左右されかねないという懸念は拭えません。引けていない間の繋ぎ方の練習はもちろん、マッチアップやゲーム展開ごとに《瘴気の妖精姫・アリア》進化が間に合うターンをある程度整理しておき、許容範囲を超えそうなら多少強引にでもドローソースを使っていくなど、プレイ指針を明確にできているかどうかも肝となるのではないでしょうか。
進化ヴァンパイア
除去・回復・ドローの防御的能力を軸に相手の攻め手を捌きながら進化回数を稼ぎ、《虚無ノ哭風・グリームニル》や《神狼・シス》によるバーストダメージを狙うデッキ。
JCG Shadowverse Open 17th Season Vol.10準優勝 CBST選手の進化ヴァンパイア
強み
- 単体・全体ともに幅広い除去手段を持つ
- 回復カードの数・質ともに比較的高水準
- 相手の盤面状況に応じて使い分けられる2種類のフィニッシャー
課題
- 一部の強力なカードは仕込みに時間がかかる
- コストカーブはやや重ため
- 十分なバーストダメージを狙うにはハードルが高い
クラス能力である渇望を活かし、コントロール色の強いゲーム展開を目指すのが進化ヴァンパイアです。
採用カードの大半が相手のフォロワー単体または全体にダメージを与える能力を持っており、目の前の盤面に応じた無駄のない除去を実現しやすいため、ゲーム終盤まで息を切らすことなく相手の攻撃を受け止めることができます。特に新カードの《クリムゾンウォー・ラウラ》は強力で、全体除去・回復・疾走の全能力を直撃させれば、それだけで攻守がひっくり返りかねないカードパワーの持ち主です。それだけに、逆に進化ヴァンパイアを相手取る際には《クリムゾンウォー・ラウラ》を素通りさせない盤面形成や復讐ケアなどが重要になってくると言えるでしょう。
ただし、上記の《クリムゾンウォー・ラウラ》に加え、《虚無ノ哭風・グリームニル》や《神狼・シス》等のフィニッシャーは引いてすぐに使えるカードというわけではありません。もとより中~高コストの厚みがあるコストカーブなため小回りもききづらく、一時的に手札と状況が噛み合わない展開も十分に起こりえます。「息切れはしていないけど目の前の盤面に有効打がない」。そんなシチュエーションを嫌って事前にキーカードの温存を図るのか、あるいは甘受して後続のターンでの逆転を狙うべく長い目で展開を読むのか。こうした繊細な判断にはプレイヤーの性格も現れやすく、使い手によってさまざまなドラマが生まれるかもしれません。
アーティファクトネメシス
序盤の小型フォロワー群の攻勢と、中盤以降の柔軟な《パラダイムシフト》活用によって、アグロからコントロールまで幅広いレンジで戦いに臨めるデッキ。
JCG Shadowverse Open 17th Season Vol.8優勝 レバンガ☆SAPPORO所属 Tatsuno選手のアーティファクトネメシス
強み
- 豊富なドローとチョイスにより実現される膨大な選択肢
- マッチアップごとに防御的な立ち回りからバーストダメージ狙いまで、戦略の切り替えが可能
課題
- 能力による除去手段を決定的に欠いている
- 相手の攻勢タイミングを読み違えると、対処が間に合わない
ここにきて再び舞台に現れた復刻デッキがアーティファクトネメシスです。その手数の多さと、柔軟なプレイスタイルに惹きつけられるプレイヤーは少なくないのではないでしょうか。
今環境では《パラダイムシフト》を入手できるカードが新たに3種類も加わり、スペルウィッチもかくやという勢いでコストの踏み倒しを実現しています。《ギガスファクトリー》の結晶下でのリソース・コストはまさしく無尽蔵、かつ新カードの《反逆の命・ミリアム》や《終末の番人・スピネ》などもアクセラレートでの使用と本体プレイの分岐を有するため、「何ターン目にどういう盤面・体力・手札状況を作り出したいか」という明確なビジョンを描く力が問われます。選択肢の奔流を捌く意味では自分との戦いという側面も強く、アドリブ力ももちろんですが、《パラダイムシフト》と《始原の竜・バハムート》を使ったバーストパターンや《反逆の命・ミリアム》を絡めたバーストパターン、《ギガスファクトリー》を結晶置きしたターンにそのまま削りきるために必要な残りコストと《パラダイムシフト》の枚数など、事前に整理して引き出しを増やしておくとデッキのポテンシャルを引き出しやすいでしょう。
こうして以前にもまして様々な動きが可能となったアーティファクトネメシスですが、やはりアーティファクト・カードの破壊がエンジンとなっているのは変わりません。そのため盤面ロックの可能性は常に頭に入れつつプレイする必要があります。また、自発的にアーティファクト・カードを破壊する最も簡単な手段は当然相手フォロワーとの交戦であるため、「攻撃されない」能力は天敵となります。《狭間の生成》等で「攻撃されない」相手フォロワーに干渉していくのか、あるいは序盤から積極的に盤面で攻勢をしかけて容易くアーティファクト・カードを放置できない状況を作り出すのか。こうした相手との駆け引きに至るまで選択肢の豊富なデッキであり、RAGEでも名勝負を演じてくれることが期待されます。
新カードによる変化があったデッキ
今環境では既存のデッキタイプの中にもローテーション落ちと新カードの採用によって、性質を大きく変えたものがあります。
ここではその例として、ランプドラゴン・アグロネクロマンサー・清浄の領域ビショップについて、特に前環境との違いという観点から見ていきましょう。
ランプドラゴン
多様なPPブーストカードを主軸にPP最大値を伸ばし、高コスト帯のカードで積極的に攻撃を仕掛けるデッキ。
JCG Shadowverse Open 17th Season Vol.7優勝 ケイトン選手のランプドラゴン
変更点
- 各種攻撃的なカードのローテーション落ち
- さらなるPPブースト要員の登場
- 《ドラゴニックコール》の立ち位置の変化
以前は “疾走” ランプドラゴンと呼ばれることの多かったこのデッキですが、《ダークジェイルドラゴン》《氷上の竜戦士》等小回りのきく疾走フォロワーに加えて、攻撃の起点にもなっていた《頂きの闘技場》を失ったことで、攻め手は鈍重にならざるをえませんでした。
ただ、かつてほどの苛烈な攻撃こそ目にする機会は減りましたが、PPブーストとフィニッシャーを一手に担う《殺竜騎士・ロイ》や、強力な盤面勝負を仕掛けていける《覇道の君臨者・フォルテ》などの新カード投入によって、より “ランプ” の性格を色濃くした豪快なデッキとなっています。
注意しておきたいポイントとして、高コスト帯の《殺竜騎士・ロイ》や《覇道の君臨者・フォルテ》採用を受けて、旧来4コスト帯へのアクセスを期待されていた《ドラゴニックコール》の扱いが変化してきたことが挙がります。その採否によってデッキの性質や構築の観点が異なってくるため、あらためて整理しておきましょう。
採用型
- 最大コストのドラゴン・フォロワーに何を据えるか
… 《覇道の君臨者・フォルテ》・《古今独歩の大拳豪・ガンダゴウザ》の2択に留まらず、《ドラゴンイクシード・ギルヴァ》再評価の流れも - アクセスが大幅に落ちる4コスト帯をどう捉えるか
… 従来の4コスト帯は守護や全体除去 + ダメージという両面的な役割を担っており、攻守が切り替わるポイントだったため、アクセスが落ちたことで他の4コストカードの採用が視野に入ったほか、手札交換の基準にも影響
非採用型
- コストで競合するパワーカードを同時に採用しやすい
… サーチを前提としないことで高コスト帯のコーディネートの幅が広がるとともに、よりスムーズな攻撃が可能に。デッキの重心がかなり高コストに傾きやすいため、PPブーストの重要性が一層増す - 息切れと向き合う
… 以前よりバーストダメージの達成が難しくなっている中、《ドラゴニックコール》がないことによる手札の心許なさをいかにカバーするか。『《世界》・ゼルガネイア』等他のドローソースを投入するのか、よりシビアな手札管理を意識するのか
フィニッシャー格のカードが入れ替わったこと、サーチカードの役割が変化したことなどデッキ全体に影響する変更点が多く、プレイ指針等もいちから組み立てなおす必要性を感じるデッキとなっています。
アグロネクロマンサー
小型フォロワーによる序盤の攻勢と、多様なフォロワーの能力によるバーンダメージの積み重ねによって、素早く相手の体力を削り切りにいくデッキ。
JCG Shadowverse Open 17th Season Vol.8 3位 Shiro/FoF選手のアグロネクロマンサー
変更点
- フォロワー主体のアグロプランの弱体化
- バーン・疾走ダメージと体力回復からなるダメージレースの強化
《プリンゴースト・ミヤコ》を失ったアグロネクロマンサーはゲーム序盤の盤面強度が落ちており、フォロワーの横並べで相手を圧倒する展開は減少しています。しかし一方で新カードの《常闇の花嫁・セレス》《ノーブルファントム》はいずれも素早くダメージを出しながら、自リーダーの回復を同時に見込めるカードとなっており、従来の同デッキより空中戦に比重が傾いたと言えます。
裏を返せば、ゲーム中盤以降の盤面で主導権を握り続けることは以前にも増して容易ではないため、回復の豊富なこの環境にあって、割り切る裏目のラインをどこに設定するかというバランス感覚を問うてくる、見た目以上に奥の深いデッキとなっています。
清浄の領域ビショップ
《清浄の領域》の効果を活用し、自らの体力と盤面をコントロールしながら、《光輝の顕現・ラー》をはじめとするバーンダメージでの勝利を目指すデッキ。
JCG Shadowverse Open 17th Season Vol.8準優勝 ふぃる選手の清浄の領域ビショップ
変更点
- ダメージカットの不在
- ダメージディーラーの追加
清浄の領域ビショップはローテーション落ちの影響を強く受けたデッキです。使用できなくなったカードは《聖なる守り手・ユカリ》のみですが、優秀なダメージカットを失ったことで、『《世界》・ゼルガネイア』直接召喚と組み合わせた盤面制圧ならびにダメージレースが困難になっています。
終盤の決定力を欠くことになったため、《ルナールプリースト》を活かしたゲーム中盤の盤面強化や、新カード《絶望の聖女・ジャンヌ》《セイントスローイング》によるダメージ調整の重要度も高く、受け一辺倒に限らない柔軟なプレイを求められます。
一方で、セッカエルフや進化ヴァンパイアなど環境のバーストダメージが20点前後に留まり、長時間安定して攻め手を継続できるデッキが存在しないことから、体力を21以上に保つ価値が高くなっており、《招来の大天使》に進化を切りやすいゲーム設計が出来ると、防御的な立ち回りも一層手堅くなると言えるでしょう。
新カード不採用のデッキ
中には新カードを採用せず、ほとんど以前の姿のまま活躍を見せるデッキもあります。ここではロキサスエルフ・庭園ドラゴンについて、環境内での立ち位置の変化を切り口として見ていきます。
ロキサスエルフ
《開拓のロデオガイ・ロキサス》のコンボによって、盤面形成・除去・ダメージ捻出のいずれも高水準で実現するデッキ。豊富な疾走カードで強引な押し切りを狙える点も魅力です。
JCG Shadowverse Open 17th Season Vol.5優勝 あゆむ選手のロキサスエルフ
変更点
- 《導きの巫女・コッコロ》のローテーション落ち
長らくエルフクラスを下支えきてきた《導きの巫女・コッコロ》がカードプールから姿を消したことで、ロキサスエルフはコンボパーツの回収力を落としました。ただ《開拓のロデオガイ・ロキサス》はもちろんのこと、多様なコンボパーツは今環境でも使用可能なため、条件が整った際の爆発力は健在です。コンボの動きこそ非常に派手ですが、その実盤面展開を起点とする戦い方でもあるため、スペルウィッチやグレモリーネクロマンサーといった他の盤面中心のデッキタイプがその数を減らしたことで、厚みのある仕掛けが可能なデッキとして独自性の高い立ち位置につけています。
多くの場合新カードの採用は見送られており、《導きの巫女・コッコロ》不在により空いた3枚の枠には《ラミエル》や《閃光のエルフ・アルバータ》などの火力支援カード、または《森を彩る者・エルフクイーン》や《未来への飛翔》といったリソースカードがあてがわれる傾向にあります。プレイヤーの目指すゲームレンジによって枚数配分に違いが現れるポイントと言えるでしょう。
庭園ドラゴン
《鳳凰の庭園》設置から大量ドローによって強力なカードのコストを大幅に踏み倒し、手札の質の差で相手を圧倒するデッキ。
JCG Shadowverse Open 17th Season Vol.2優勝 AXIZ所属 Gemo選手の庭園ドラゴン
変更点
- なし
主要カードがローテーション落ちしなかった(しいて言えば《アイギスシールド・アテナ》が使用不可に)庭園ドラゴンは環境との噛み合いもあり、現在少なくないプレイヤーが使用しています。おなじみの《鳳凰の庭園》は相手にも恩恵をもたらす諸刃の剣ですが、今環境ではセッカエルフのような軽量デッキに対して踏み倒すコスト量の差でリードを取れるほか、《殺竜騎士・ロイ》や《覇道の君臨者・フォルテ》、《ギガスファクトリー》など一部のエンハンス・結晶能力持ちのカードの有効活用を阻害できる側面を持ち合わせます。《竜喰らう禁忌》の大規模消滅も相まって、人気デッキの強力な動きを幅広く封じ込めていけるデッキタイプとしての立ち位置にあります。
エントリーをお忘れなく
ここまで計8個のデッキタイプを見てきました。あくまで比較的人気が高いと感じるデッキに絞ってご紹介したため、まだまだ沢山のデッキが存在します。今環境は特に新しいデッキタイプが多く、意欲的に研究しているプレイヤーも多いため、RAGE予選までに頭角を現すデッキもあるかもしれません。皆さんも是非、心に決めた80枚とともに、つわもの揃いの予選大会に挑んでください。
予選大会のエントリー締切は 2021年 4月 25日(日)23:59 です。既にご登録いただいている方も、今一度登録情報にお間違いないかご確認ください。まずは来たる5月2日からの3日間、磨き抜かれたデッキとプレイが織りなす熱いバトルを皆さんと楽しめることを心待ちにしています。
【文:まる】
RAGE Shadowverse 2021 Summer
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※エントリー締切:4月25日(日)23時59分
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