解説の”まるさん”執筆レポート「十禍闘争」環境まとめ【RAGE Shadowverse 2022 Spring エントリー1月9日(日)まで】
大きな盛り上がりを見せた昨年のWorld Grand Prix。
あれからまだひと月と経たない中、早くも2022年のRAGEが幕を開けようとしています。
今大会からは賞金も大幅に増額しており、今年最初の栄誉と優勝賞金1,000万円を賭け、ますます熱い戦いが繰り広げられることとなりそうです。
まず最初の関門となるオンライン1次予選ですが、先日の能力変更から間もないこともあり、環境が定まりきらない中での難しいスイスドローとなることが予想されます。
今一度、能力変更の内容と影響、そして直近のデッキ選択の傾向を確認していきましょう。
1月6日メンテナンス後より能力変更となったカード群
進化ネクロマンサー
RAGE Shadowverse Pro League 21-22 第5節にてNTT-WESTリバレント所属のきょうま選手が使用した進化ネクロマンサー
昨年の世界大会で大活躍を見せた進化ネクロマンサーは、新カードの追加を受けて「十禍闘争」環境でも、その初期から猛威を振るいました。上記の能力変更の引き金を引いたデッキだと考えられます。
能力変更の影響
- リーサルターンの後退
《虚無ノ哭風・グリームニル》のコストが上昇したことにより、《虚無ノ哭風・グリームニル》2枚使用での20点捻出ができなくなったのはもちろんとして、《スケルトンレイダー》とのセットで15点前後のバーストダメージを叩き出せるタイミングも以前より1~2ターン遅くなりました。
主にゲーム中盤の攻撃性が和らいだ形で、以前に比べれば回復や守護を強引に突破していくゲーム運びは難しくなったと言えます。 - ドロー力の低下
《忌まわしき再誕》がニュートラルフォロワーを場に出さなくなったことで、《導く鐘・ベルエンジェル》を繰り返し使用して、ドローを稼ぐ戦法が実現できなくなりました。代わりのドローソースとして《ソウルガイド》や《ボーンドミネーター》が再度デッキに投入される傾向にありますが、《導く鐘・ベルエンジェル》+《忌まわしき再誕》ほどのコストパフォーマンスは発揮しづらくなっています。
上記2点の影響により、以前ほどは安定した火力を出せなくなりましたが、高い盤面制圧力は据え置きとなっているため、オンライン1次予選の持込デッキとして引き続き候補に挙がる可能性があります。
《虚無ノ哭風・グリームニル》を有効に使えるシーンは限られるようになったため、《スケルトンレイダー》の早期引き込みがより重要になっており、手札交換の基準を含め、プレイ指針は再検討が必要かもしれません。使用デッキとして選択する際には、以前の定石に引きずられすぎないよう注意しましょう。
アーティファクトネメシス
RAGE Shadowverse Pro League 21-22 第5節にてauデトネーション所属のミル選手が使用したアーティファクトネメシス
能力変更の実施前からひとつの勢力を築いていたのがアーティファクトネメシスです。
アーティファクト軸のカードの追加に加え、コスト消費なく手札のスペースを空けられるカードも増えて《キャノンアーティファクト》などの打点カードを取りこぼしにくくなっています。
長所
- 6ターン目からバーストダメージの捻出が可能
アーティファクトフォロワー6種類破壊のハードルが以前より低くなり、早期にギアを上げることができるようになっています。新カード《アストロウィング・ララミア》が盤面制圧と打点の両面を担ってくれるアーティファクトカードとして、《キャノンアーティファクト》ときわめて相性がいいこともあり、早期にバーストダメージを出せる手筋が増えたと言えます。進化ネクロマンサーのリーサルターンが遅くなった今、首尾よくいけば6ターン目に20点というのは環境を規定しうるスピードだと考えられます。
- 《ギガスファクトリー》依存度の低下
アーティファクトカードの総数が増えたことで《パラダイムシフト》のコスト減少はある程度安定して狙っていけるようになりました。
アーティファクトフォロワー6種類破壊の達成後は1枚1枚のカードパワーも十分に高くなるため、《ギガスファクトリー》がない状況下でもバーストダメージを叩き出すことができます。
もちろん、手札の回転という意味も含め《ギガスファクトリー》の役割は依然大きいですが、5ターン目のプレイに幅を持たせやすくなっており、戦況に合わせた柔軟な動きが可能になったと言えるでしょう。
短所
- 《ギガスファクトリー》への対処方法の増加
《ギガスファクトリー》への対抗策となる新カード《荒天の雷神》は取り回しのいいニュートラルカードということもあり、多くのデッキで採用される傾向にあります。
また、守護ビショップの《アブディエル》にも引き続き耐性がないため、手拍子で《ギガスファクトリー》を置く動きはそのまま相手のアドバンテージに繋がる恐れがあります。
前述の通り《ギガスファクトリー》への依存度そのものは下がっているので、設置ターンを後ろにずらして《パラダイムシフト》等と併用するような機転を要するシーンも多いと考えられます。
一方で、割り切って5ターン目に置かないと勝ち筋が見出せないような展開も起こりえますので、総じて互いの手札読みを踏まえた設置ターンの駆け引きがいつにも増して大事になってくると言えそうです。 - 盤面ロック耐性の低さ
アーティファクトネメシスの宿命ですが、アーティファクトフォロワーの破壊を大前提としているため、空の盤面を渡されると交戦先のないアーティファクトネメシスの歩みは途端に鈍ります。
除去を行いながら自分の盤面を空にできるエルフやウィッチ、ミラーマッチなどでは、安易に盤面ロックをしかけにくいよう、アーティファクト6種類破壊の達成が急務と言えます。
盤面ロックを貰った場合に《反逆の命・ミリアム》で盤面を整理しつつ、アーティファクトの破壊数を稼ぐ対応は現実的な策の一つとなるため、《記憶の軌跡》や《機構の発見》等、盤面がいっぱいでもPPを消費できるカードは《反逆の命・ミリアム》アクセラレートのコスト調整用に温存しておくなど、細かいケアも意識しておきたいところです。
環境そのものは変わったものの、能力変更前から一定のシェアを占めていたアーティファクトネメシスはその器用さとリーサルターンの早さから、オンライン1次予選でも多くの使用が見込まれるデッキです。
「アーティファクトの破壊数を稼ぐ」「必要なら適切なタイミングで《ギガスファクトリー》を置く」という、対戦相手の動きに影響されやすい2つの課題達成を前提として全力を発揮するデッキのため、自身が使う際にマッチアップごとの具体的な立ち回りを整理することはもちろん、持ち込まない場合であっても実際に使ってみてデッキの得手不得手を体感しておくことは重要だと考えられます。
セッカエルフ
RAGE Shadowverse Pro League 21-22 第5節にてAXIZが登録したセッカエルフ
前環境から引き続き第一線での活躍を見せているのがセッカエルフです。
《フォレストレンジャー・ウェルダー》や《エレメントスラッシュ》といった攻撃的なカードを多く搭載したアグロ型と、《幻惑のラクーン》や《万緑の回帰・ラティカ》などリソース・除去に意識を向けたコンボ型とに大別されるのが直近の傾向でしょうか。
長所
- 6~8ターン目を目安とした幅広いリーサルパターン
場を離れたエルフフォロワーの数20を達成して《宿命の狐火・セッカ》でバーストダメージを狙うオーソドックスなリーサルに加え、
序盤から小型のフォロワーの横展開と疾走・バウンスを組み合わせてアグロ気味に組み立てるゲームプランや、
《フェアリーウィスプ》の温存から《万緑の回帰・ラティカ》でのバーストダメージを狙うプランなど、多彩なリーサル手段を持ちあわせています。
狙うプランにもよりますが、おおよそ6~8ターン目という現実的な時間帯に集中するため、対戦相手に同時多発的なケアを要求できる点は強みと言えるでしょう。
また、デッキ非公開制のオンライン1次予選では、《エレメントスラッシュ》や《万緑の回帰・ラティカ》などリーサルに直結するカードの採用枚数が不透明なため、かかるケアの負担も一層大きいものとなります。 - マッチアップに応じた盤面管理が可能
豊富なバウンスカードと《瘴気の妖精姫・アリア》のリーダー付与効果により、盤面にくぎ付けになるフォロワーはほとんどいません。
相手の盤面にしっかりと対処しつつも、ターンを終える際に自分の盤面を展開するか空にするか選択できるため、マッチアップに応じて盤面をコントロールできます。
現環境で言えば対アーティファクトネメシスや対狂乱ヴァンパイア、加えて対守護ビショップの《ミラクルラフター・カルミア》が絡みそうなターン、《スケルトンレイダー》ケアを要する対進化ネクロマンサー後半戦等では、盤面を空けてターンを終える恩恵が大きいと考えられます。
逆に横展開したフォロワーが生存した際には攻撃+《妖花の捕食者》から動き出せたり、《リバースブレイダー・アマツ》のバウンス対象が増えて《宿命の狐火・セッカ》のカウントを稼げたりとこちらもリーサルに絡みうるアドバンテージが発生するため、しっかりとターン終了時の盤面の姿をイメージすることが勝率アップには欠かせません。
短所
- キーカード欠損時の勝ち筋の減衰
主に《瘴気の妖精姫・アリア》が引けない場合のゲームメイクについて、難易度が大幅に上昇しています。
《優美な猫姉妹・シャム&シャマ》のローテーション落ちを受け、以前よりデッキの瞬間火力は衰えてしまっている現状、《瘴気の妖精姫・アリア》が引けていないからといってただ疾走フォロワーで駆け込んでいくだけでは、打点不足に陥りやすいです。リカバー方法は大きく3つ。
「《リバースブレイダー・アマツ》を複数回進化し、早期に《宿命の狐火・セッカ》をアクティブにする」
「《エレメントスラッシュ》を絡めた打点捻出」
「《万緑の回帰・ラティカ》によるバーストダメージ」
と、一見すると代替策が豊富にも思えますが、いずれも要求されるカードの枚数が多いうえ、相手の盤面に十分な対処がきくものではありません。
基本的にはシビアな手札交換で《瘴気の妖精姫・アリア》を探しつつ、中盤に間に合っていなければ、どの代替策を採るか素早く判断してパーツ確保に努める展開になりやすいでしょう。
セッカエルフも能力変更前から少なくないプレイヤーの間で研究が進んでいたデッキです。新カード《リバースブレイダー・アマツ》の性能は折り紙付きで、進化を有効活用できれば《宿命の狐火・セッカ》の7ターン目での疾走が十分現実的となります。大筋では前環境までの経験を活かせるデッキのため、以前からセッカエルフを愛用していたプレイヤーにとっては今環境における「差分」を整理さえすれば安心して使うことができる頼もしいデッキ候補となるかもしれません。
狂乱ヴァンパイア
RAGE Shadowverse Pro League 21-22 第5節にて横浜F・マリノスが登録した狂乱ヴァンパイア
こちらも前環境から継続して勢力を誇る狂乱ヴァンパイアです。
能力変更前、自傷効果で削れた体力を回復しきれていない中盤に攻め立ててくる進化ネクロマンサーとは難解なマッチアップにありましたが、中盤の攻勢が和らいだことで持ち前の展開力や回復力を活かしやすくなりました。
長所
- 序盤戦の盤面優位
多くのデッキが序盤の盤面展開を重視しない、あるいは2/2/2のような標準サイズよりひと回り小さいフォロワーで展開する今環境、初動で豊富な突進フォロワーや標準以上のサイズのフォロワーをプレイできるため、最初の盤面形成で大きくアドバンテージを得ることができます。
スムーズに狂乱状態に移行できれば、《煉獄のダークナイト》直接召喚で一気に盤面の趨勢を決定づけられることもあるため、初動の1コスト自傷カードはより重要度を上げています。
後半戦に入ると相手盤面への対処はともかく、盤面から打点を出すことは難しくなるため、序盤戦で稼いだダメージから、早期決着を目指すべきか、《終幕の吸血鬼・ユリアス》を絡めたロングレンジのゲームを睨むべきか冷静に判断していきましょう。 - 豊富なダメージソース
《ブラッディネイル》を初めとして、バーンダメージを繰り出すカードの多彩さで随一のデッキです。
後半戦盤面からダメージの捻出ができずとも、継続してバーンダメージを与え続けることで押し切りを狙っていくことができます。
数少ない盤面からの打点になりうる新カード《姦淫の隠者》はタイムラグこそあるものの、ローテーション落ちした《闘志の人狼》を打点効率で上回ります。
潜伏能力のおかげで仕掛けるタイミングのコントロールができるため、余裕があれば《煉獄のダークナイト》直接召喚とタイミングを合わせて攻撃し、強烈な盤面を押し付けるプランも狙っていきたい1枚です。
短所
- バースト力の低さ
以前と同様、バーストダメージは容易には出せません。
条件が揃えば《ゼノ・ディアボロス》を絡めた20点も達成可能ですが、再現性が低いため、基本的には1ターンあたり10点未満のダメージを継続して刻んでいく戦いになりやすいと言えます。
したがって、細かく回復を行うデッキに対しては火力不足に陥る不安が拭えません。
《姦淫の隠者》を盤面に伏せておくことで1枚あたり最大6点を予約できることから、前環境までに比べると擬似的なバーストダメージは狙いやすくなっているため、各デッキが潜伏フォロワーを処理できる条件を整理しておくことも大切なポイントです。
狂乱ヴァンパイアは《虚無ノ哭風・グリームニル》のコストアップの恩恵を顕著に受けており、鬼門だった中盤戦を比較的安全に切り抜けられるようになったことで、ほぼ前環境と同じ取り回しができるデッキとなりました。
調整期間の短い今回の予選において、これまでの貯金をもっとも活かしやすい点は大きな強みです。素のパフォーマンスの高さも相まって、多くのプレイヤーの検討候補となることが予想されます。
守護ビショップ
RAGE Shadowverse Pro League 21-22 第5節にてレバンガ☆SAPPORO所属のRyu選手が使用した守護ビショップ
能力変更の影響を受けなかった「進化軸」とも言える守護ビショップは、中盤に進化ネクロマンサーに盤面をボロボロにされてしまい8ターン目を待たず押し切られてしまうケースが多くありました。進化ネクロマンサーの攻撃性が落ちたことで、強気な盤面展開や8ターン目以降の手堅い守りが機能するようになり、環境に躍り出てきたデッキの一つです。
長所
- 疾走・バーンダメージ双方への耐性
多数の守護フォロワーが相手の疾走フォロワーを阻むのはもちろん、8ターン目の《ホーリーセイバー》までたどり着ければ、能力によるダメージの一切を跳ねのける強固な守りを誇ります。
守護フォロワーの質そのものも、ダメージ無効化能力を備えた《導く鐘・ベルエンジェル》や《背理盾・ゼノン》から現れる選択不可の《聖騎兵》など場持ちに長けており、こうした小型守護を並べることで擬似的な盤面ロックを仕掛けることが可能です。
機械ネメシスのような盤面で圧倒するデッキが数を減らしたことで、疾走・バーンダメージをカバーしながら長いゲームを戦う展開も見込みやすくなっており、相手の攻め手とリソースを考慮しながら仕掛けどころを調整出来るようになりました。 - 高い盤面形成力
上述した場持ちの良さに加え、《背理盾・ゼノン》や《熟達の翼戦士》など多面展開に長けたカードが複数追加されており、前環境までと比べて《ミラクルラフター・カルミア》の自動進化から繰り出される盤面強化の再現性が大きく向上しています。
《スケルトンレイダー》の脅威が薄れて全体除去に乏しい今環境において、一度強固な盤面を形成してしまえば、8ターン目まで余力を残して時間を稼ぐことも、あるいは状況によってそのまま相手の体力を詰め切ることも可能となります。
戦力を小出しにするのではなく、きっちりと盤面を制圧できるタイミングを見計らうことも大事な戦術となりそうです。
短所
- 後攻時のパフォーマンス低下
多くのカードが自分の場の守護フォロワーとシナジーして効果を発揮するため、逐次フォロワーを処理されてしまう後攻では、このデッキの序盤の出力が明確に低下します。加えて、初動で体力を削られてしまうため《神威のユニコーン》のリーダー付与効果を活かしづらい点や、《ホーリーセイバー》到達までに時間がかかる点など、総じて後攻の立ち回りに多くの課題を抱えるデッキと言えるでしょう。言い換えれば、慢性的に受けに回ってしまうと綻びが見えてくるということなので、《呪われた翼・シロ》をはじめとする除去カードを効果的に使い、盤面を逆転するタイミングを意識的に作っていくことが重要となります。
序盤で差を開かせないために、進化ターン前に《導く鐘・ベルエンジェル》等交戦能力の乏しいフォロワーをプレイする余裕があるのかも、入念な検討が必要と言えるでしょう。
- 終盤までは低い回復力
《ホーリーセイバー》までたどり着けば豊富な回復が約束されている守護ビショップですが、8ターン目までに回復できるカードは《ユピテル》しか存在しません。
その《ユピテル》にしても、6ターン目までに5回の進化を達成することも容易ではなく、多くの場合7, 8ターン目になってようやく回復ができるという性質のデッキになります。
守護フォロワー自体は序盤から展開できる反面、能力によるダメージは8ターン目まで防げないということも加味すると、「早期にバーンダメージで畳み掛ける」ような相手には苦しい対処を迫られます。
守護ビショップは高いシェアを占めるアーティファクトネメシスに対して《アブディエル》を擁することからも、研究が進められているデッキです。
以前課題としていた、能動的に相手の盤面に対処する手段については、低コスト全体除去の《呪われた翼・シロ》や単体確定除去の《ブライトパラディン・ウィルバート》を手に入れたことである程度の解決が見られており、一定の柔軟性を持って戦うことができるようになりました。
今環境では様々なデッキに対応できており、やはりオンライン1次予選におけるデッキ候補の1つに挙がってきそうです。8ターン目までは盤面で泥臭い地上戦をこなすため、フォロワー交戦の手筋を丁寧に検討する必要があります。
また、環境がやや低速化した中、進化させたいフォロワーも増えているこのデッキにとって《アブディエル》をエンハンスでプレイするかの判断も繊細で、総じて小さな分岐の積み重ねが大切となるでしょう。
エントリー締切迫る
ここまで、環境滑り出しの主要デッキをいくつかご紹介しましたが、この他にもバフドラゴンやバーンドラゴン、混沌の流儀ウィッチなど多彩なデッキが現在進行形で研究・洗練されていっています。
限られた時間ではありますが、多くのデッキ、その可能性の中から全国の頂点を目指す2つのパートナーを探し、是非今大会に挑んでください。
1月9日(日) 23:59のエントリー締切は間もなくです。
全国王者の栄光に向けた第一歩、皆様の挑戦をお待ちしています。